はじめに(2分)
皆さん、こんにちは。
- 「ChatGPTって使ったことあるけど、なんか嘘ばっかり言うよね」
- 「検索の方が正確なんじゃない?」
- 「何に使えばいいかわからない」
こんな声、よく聞きます。実はこれ、AIを「答えをくれる先生」だと思って使うと、起こりがちな誤解なんです。
今日は、ChatGPTなどの生成AIを「検索ツール」ではなく「対話パートナー」として活用する考え方と、そのためのちょっとした技術的なコツをお伝えします。この視点を持つだけで、AIとの付き合い方が劇的に変わります。
1. なぜ「検索より嘘が多い」と感じるのか(5分)
まず、GoogleとChatGPTの根本的な違いを理解しましょう。
- Googleは既存の情報を探して表示する検索エンジンです。インターネット上の情報にリンクを張っているだけなので、「正しい情報」へのリンクを表示してくれます。
- 一方、ChatGPTは言葉を予測して生成するAIです。簡単に言うと「次に来そうな言葉は何だろう?」と予測し続けているんです。
ここに根本的な違いがあります:
- Googleは「事実を知っている」わけではなく、事実が書かれたページを見つけるのが得意
- ChatGPTは「事実を知っている」わけではなく、人間らしい文章を作るのが得意
つまり、「京都の人気観光スポットは?」とChatGPTに聞くのは検索的な使い方です。一般的な名所は答えられますが、営業時間や最新情報は古い可能性があります。
代わりに以下のように聞くと、ChatGPTの真価が発揮されます:
- 「京都の観光名所を初心者、リピーター、マニア向けに分けるとどうなる?」
- 「京都で撮影する写真に物語性を持たせるテーマやアングルのアイデアは?」
- 「京都旅行の思い出を長く楽しむための、旅行中にできる工夫やアイデアは?」
「京都の人気観光スポットは?」という質問の背後には、いろいろな意図や目的があるはずです。
観光をより楽しみたいという目的に沿って「新しい視点」が得られれば、ChatGPTを活用したことになりますね。
最新情報や事実を調べたいときはGoogle、情報の整理やアイデア出し、体験の質を高める工夫を考えたいときはChatGPT。それぞれの特性を理解して使い分けることで、両方のツールをより効果的に活用できるでしょう。
2. トランスフォーマー型AIの基本構造(6分)
ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIは「トランスフォーマー」という技術で動いています。難しい名前ですが、考え方はシンプルです。
トランスフォーマーが行う「変形」とは、単語や文章を数学的な表現(ベクトル)に変換し、それを処理しながら別の形に変えていくことです。例えるなら、日本語を英語に翻訳するとき、頭の中で日本語の意味を理解し、それを英語の形に「変形」させるようなものです。
- 文章を分解して「意味」表現に変換する
- 「トークン」に分解し、たくさんの数値の組(ベクトル)で「意味」に対応させます
- 人間がベクトル表現を見ても解釈できません。
- 膨大な文章からパターンを学習している
- インターネット上の大量のテキストを読み込んでいるため、様々な知識が断片的に入っています
- でも「暗記」ではなく「言葉の並び方」を学んでいるので、時々事実と異なることを自信満々に言います
- コンテクスト(文脈)を理解できる
- 一連の会話を覚えていて、文脈を踏まえて返答できます
- これが「検索」ではなく「対話」が可能な理由です
トランスフォーマーは入力された情報を受け取り、内部で様々な計算をして「変形」させ、新しい形で出力します。まさに「情報の変形者(トランスフォーマー)」なのです。
3. 対話の質を高めるコンテクスト管理術(7分)
AIとの対話を充実させるポイントは「コンテクスト(文脈)」の管理です。
コンテクストウィンドウを味方につける
コンテクストウィンドウとは、AIが「覚えている」会話の量です。このウィンドウを効果的に使うコツを3つご紹介します:
コツ1:要約と再構成 チャットが長くなったら、途中で「ここまでの内容をまとめると…」と要約して、新しいチャットで要約を最初に伝えましょう。
例えば:
「前回のチャットでは、新しい広告キャンペーンについて以下の点で合意しました:
1. ターゲット層は30代〜40代の働く女性
2. SNSを中心に展開
3. ストーリー性を重視
これを踏まえて、具体的なキャッチコピーのアイデアを考えていきましょう」
コツ2:適切なタイミングでチャットを切り上げる 長すぎるチャットは混乱のもと。次のサインが出たら、新しいチャットを始めましょう:
- AIの回答が繰り返しになってきた
- 以前の話題を忘れている様子がある
- 明らかに質が下がった回答が返ってきた
コツ3:トークン制限を意識する 1回の会話には「トークン」という単位で制限があります。日本語なら約1.3文字で1トークンです。GPT-4は最大約8,000語(約12,000〜16,000トークン)までしか一度に処理できません。
長文を送るより、ポイントを絞った質問の方が効果的です。
4. AIに考えさせるのではなく、AIと考える(8分)
多くの人はAIを「答えを出してくれる道具」として使おうとしがちですが、AIの真の価値は「一緒に考えるパートナー」としての活用にあります。
私たちの頭の中は複雑な考えでいっぱいです。それを言葉にして外に出すことで、より明確に考えられることがあります。心理学では「思考の外部化」と呼ばれるこの過程に、AIは優れたパートナーとなれます。
AIに考えを伝え、その反応を見ると、自分の考えをより論理的に整理できたり、思い込みに気づいて新しい関連性を発見できたりします。
単語ではなく文章で伝える
- Before: 「京都 観光 おすすめ」(キーワードの羅列)
- After: 「京都旅行を計画しています。歴史的な雰囲気を味わえる場所を中心に回りたいのですが、おすすめのコースはありますか?」(文脈と目的を含む文章)
指示から対話へのシフト
- Before: 「京都の観光スポットについて教えて」(一方的な命令)
- After: 「祖父と一緒に京都旅行の計画しているけど、地元の人だけが知る穴場スポットってあるかな?」(対話の誘い)
フィードバックループを作る
AIの回答をそのまま受け取るのではなく、その回答についてさらに質問したり、自分の意見を伝えたりすることで対話を深めていきます。
- 考えを「見える化」する:
「京都旅行で、予算と時間が限られていることが課題だと思うんだけど、どうやって優先順位をつければいいと思う?」 - 思考のキャッチボール:
「まず京都の北部エリアのプランだけ出して」→「その中で嵐山について詳しく知りたい」
(完全な回答を求めず、一部分ずつ対話を進める) - 異なる視点の獲得:
「雨が降った場合の代替プランも考えておきたいけど、どうすればいい?」
こうしたキャッチボールが、単なる「検索」では得られない創造的なアイデアを生み出します。
つまり、「AIに考えさせる」のではなく「AIと考える」という発想転換が、創造性と問題解決能力を高める鍵なのです。
この例では、最初は漠然とした質問から始まり、徐々に対話を通じて具体的なアイデアに発展させていく過程を見ることができます。大事なのは、AIを「答えをくれる先生」ではなく「一緒に考えるパートナー」と捉える視点です。
まとめ:AIとの新しい関係性(2分)
今日お伝えしたポイントをまとめます:
- 生成AIは「検索エンジン」ではなく「言葉を予測する対話システム」
- トランスフォーマー型AIは文脈を理解できるが記憶に限界がある
- コンテクスト管理が対話の質を決める
- 一方的な命令ではなく、共創的な対話を心がける
- 単語ではなく文章で伝え、フィードバックループを作る
これからAIは私たちの仕事や生活にますます入り込んでくると思います。よく「人間の仕事がAIが置き換えられる」と言われます。でも、怖がることも過信することもありません。AIの特性を理解し、「共に考えるパートナー」として付き合っていくことで、私たち人間の仕事はもっと創造的に拡張できるからです。
この後は、より実践的・創造的なAI活用法についてお話しいただきます。私のパートで技術的な基礎を理解いただいたことで、より深く活用法を吸収していただけると思います。