ECサイトやオンラインサービスで高額商品を販売する際、お客さんの購入ハードルを下げる重要な選択肢が「分割払い」です。特にStripe決済を使用する場合、分割払いの実装方法には主に二つの選択肢があります。それぞれのメリットとデメリットを整理しながら、実際のビジネスにどう活かせるか考えてみました。
分割払いの2つの方法
Stripe決済で分割払いを実現する方法は、大きく分けて以下の2つです。
- ショップ側で分割払いを設定する方法
- お客さん側(クレジットカード会社)で分割払いを選択する方法
どちらを選ぶかによって、実装の手間や顧客体験が大きく変わります。
ショップ側で分割払いを設定する場合
ショップ側で分割払いを設定する場合、Stripeが提供する「Payment Intents API」と「Payment Method API」を使って実装します。このAPIは専門的なプログラミング用語で、簡単に言えば「開発者がStripeの機能を自分のウェブサイトに組み込むための命令書」のようなものです。
実装すると、お店側であらかじめ「3回払い」「6回払い」などの選択肢を用意しておくことができます。お客さんは商品を購入する際に、これらの選択肢から支払い方法を選べるようになります。
この方法のメリットは、「当店では分割払いが可能です」と明確に打ち出せることです。高額商品を扱うショップでは、このような明確な訴求ポイントが売上向上につながることもあります。
技術的には少し複雑で、開発リソースが必要になりますが、顧客体験を自分でコントロールできる点が大きなメリットです。
お客さん側で分割払いを選択する場合
お客さん側で分割払いを選択する方法は、特別な実装をしなくても自然に利用できる方法です。
クレジットカードで支払いをする際、決済画面でカード会社が提供する「一括払い」「分割払い」などの選択肢が表示されます。お客さんは購入するたびに、自分の好みや経済状況に合わせて支払い方法を選べます。お店側が特別な設定をしなくても、多くのカード会社がこの機能を提供しています。
例えるなら、お客さんが自分の財布から好きな支払い方法を選ぶようなもので、お店側は特に気にする必要がありません。
この方法のメリットは、実装の手間がほとんどかからない点です。通常のクレジットカード決済を導入するだけで、お客さんは自分のカード会社が提供する分割払いオプションを利用できます。
分割払いの対応状況と制限
カード会社によって分割払いの対応状況は異なります。Stripeの公式ドキュメントによると、以下のような状況です。
- Visa/Mastercardは最大60回の分割払いに対応
- JCBは最大24回の分割払いに対応
- アメリカン・エキスプレスは2022年12月に分割払いのサポートを終了
また、デビットカードやプリペイドカードでは分割払いを利用できません。日本で発行されたクレジットカードのみが対象となります。
「分割払いできます」と明言できるか?
お客さん側の選択に委ねる場合、「分割払いできます」と明確に言えるかどうかが気になるポイントです。
実際には、分割払いの可否はカード会社とお客さんの契約内容によって決まります。同じカード会社でも、契約内容によって分割払いができない場合もあります。そのため、ショップ側が「すべてのお客さんが必ず分割払いできる」と保証することは難しいのです。
多くのショップでは、以下のような表現を使っていることが多いです。
- 「各種クレジットカードがご利用いただけます」
- 「お支払い方法はカード会社の規約に準じます」
- 「分割払いなどはカード会社によって異なります」
明確に「分割払いできます」と言いたい場合は、ショップ側で分割払いの仕組みを導入する必要があります。
実際の運用で気をつけるべきポイント
分割払いを導入する際、特に気をつけたいのがお客さんの支払い能力に関する問題です。
高額商品を分割払いで販売すると、支払い能力に不安があるお客さんが購入するケースも増えます。実際の事例として、「分割払いを選択したお客さんのうち、一定数の方は、2ヶ月以降のどこかのタイミングでカード決済が失敗するケースがある」という報告もあります。
これにより、支払い督促の手間やコストが発生し、最悪の場合、未回収のリスクも生じます。売上拡大と安定した収益のバランスを考慮する必要があります。
分割払いとサブスクリプションの違い
分割払いとよく混同されるのが「サブスクリプション(継続課金)」です。これらは似ているようで異なる概念です。
- 分割払い:商品を一度に提供し、その代金を複数回に分けて支払う方法
- サブスクリプション:サービスを継続的に提供し、定期的に料金を支払い続ける方法
例えば、10万円の商品を3回に分けて支払う場合は「分割払い」、月額3,000円のサービスを毎月支払い続ける場合は「サブスクリプション」です。
Stripeでは両方に対応していますが、実装方法や目的が異なるため、ビジネスモデルに合わせて選択する必要があります。
分割払いの実装例
Stripeで分割払いを実装するための簡単な例を紹介します。
// Payment Intents APIを使用した分割払いの例
const stripe = require('stripe')('sk_test_your_key');
async function createPaymentWithInstallments() {
const paymentIntent = await stripe.paymentIntents.create({
amount: 10000, // 金額(単位:円)
currency: 'jpy',
payment_method_types: ['card'],
payment_method_options: {
card: {
installments: {
enabled: true,
// 利用可能な分割払いプランを指定
plan: {
type: 'fixed_count',
count: 3, // 3回払い
}
}
}
}
});
return paymentIntent;
}
Code language: JavaScript (javascript)
このコードは、3回払いのオプションを提供する例です。実際の実装ではより多くの設定やエラーハンドリングが必要になります。
まとめ
Stripe決済で分割払いを導入する方法は主に2つあります。ショップ側で設定する方法とお客さん側で選ぶ方法です。それぞれにメリット・デメリットがあり、ビジネスの規模や顧客層に合わせて選択するとよいでしょう。
高額商品の販売では分割払いオプションの提供が売上向上につながることもありますが、未回収リスクも考慮する必要があります。Stripeの技術的な実装方法を理解し、自社のビジネスモデルに最適な方法を選択することが重要です。
- 日本での分割払いによるカード支払いの受け付け | Stripe のドキュメント – Stripeの公式ドキュメントで、日本アカウントでの分割払い実装方法を解説
- 分割払いの仕組み | Stripe – 分割払いの基本概念やビジネスへの導入メリットを説明したガイド
- Mastercard 分割払い | Stripe のドキュメント – Mastercardでの分割払い対応に関する詳細情報
- 世界GDPの1%を担うStripe、日本の「分割払い」に対応 – Impress Watch – Stripeの日本市場向け分割払い対応に関するニュース記事
- Stripe決済で分割払いをすることはできますか? – Stripe決済での分割払い実装の実用的なガイド
- オンライン決済Stripe(ストライプ)とは?導入するメリットや注意点を徹底解説 – Stripe決済の基本から分割払いを含む機能や注意点の解説
- 料金体系と手数料 | Stripe – Stripe決済の手数料体系に関する公式情報
- Stripe | インターネット向け金融インフラ – Stripeの公式サイトで提供される最新の機能やサービス情報
- Stripe 決済にてカード分割払いで高額商品を売る際の注意点とは? – 実務経験から見た分割払いの運用リスクと注意点