はじめに
突然パソコンが起動しなくなった時、多くの人が頭に浮かべるのは「故障」という言葉です。今回は、リファービッシュパソコンで発生した起動問題について、実際の修理過程を通して学んだことを共有します。結論から言うと、原因は意外にも単純な接続不良でした。
この記事では、パソコンが「Boot Device Not Found」エラーを表示して起動しない状況から、問題の特定と解決まで一連の流れを詳しく解説します。
起動デバイスが見つからない?
ある日、「普通に使用していたHPのノートパソコンが突然起動しなくなった」という相談がありました。電源は入るものの、起動時に以下のエラーメッセージが表示されます。

Boot Device Not Found
Please install an operating system on your hard disk.
Hard Disk - (3F0)
F2 System Diagnostics
Boot Deviceとは起動装置のことで、OSが保存されている記憶装置を指します。つまり、このエラーは、Windowsのインストールされたストレージ(ハードディスクやSSD)につながらない時に表示されます1 。
BIOS設定の確認と起動オプション
BIOS(Basic Input/Output System)の設定を確認しました。BIOSとは、パソコンの基本的な動作を制御するプログラムです。起動順序やハードウェアの認識状況を確認できます。
まず、様々な起動オプションを試そうとしました。
- セーフモードでの起動
- 前回正常起動時の構成での起動
- システム復元の実行
これらの方法でも問題は解決しませんでした。
F2キーを押してBIOS画面に入り、以下の項目をチェックしました。
- ストレージデバイスの認識状況
- 起動優先順位の設定
- SATA接続の設定
USBメモリの回復ドライブからは起動したけれど
そこで、回復ドライブを作成したUSBメモリを接続してみました。

すると、これは正常に認識されました。しかし、diskpartで確認すると、ディスクが1つしか認識されていません。どうもパソコン本体の基本機能は正常で、内蔵ストレージに問題があることが判明しました。
改めてBIOSの設定をよく確認してみると、内蔵ストレージの情報がありません。システムから一切認識されていませんでした。
SSDが故障している?
当初は、SSDの完全な故障を疑いました。パソコンの製造年が古かったからです。
しかし、このパソコンはリファービッシュパソコン(再整備パソコン)でした。リファービッシュパソコンとは、一度使用されたパソコンを整備し直して再販売されるものです。Windows 7からWindows 11にアップグレードされた製品で、メモリやSSDなどの主要部品は新品に交換済みのはずです。
もちろん、新しい部品でも初期不良や製造上の問題で故障する可能性があります。しかし、交換したばかりのSSDが短期間で故障するのは少し違和感がありました。
物理的な確認の決断
ソフトウェア的な対処法で解決しないため、ハードウェアを直接確認することにしました。



ノートパソコンの裏蓋を開けて、内部の状況を調べます。パソコンの電源を完全に切り、バッテリーを取り外してから作業を開始しました。幸い、このHPのパソコンはちょっと止めるスイッチを押すだけで裏蓋を外せました。内部の構造を見ると、メモリスロット、Wi-Fiカード、そしてSSDが配置されていました。
接続不良の原因
SSDの取り付け部分を確認したところ、予想外の事実が判明しました。SSDがネジで固定されていなったのです。



通常、M.2 SSDは、基板に差し込んだ後、反対側の端をネジで固定します。これは、接続の安定性を保つために必要な作業です。しかし、このパソコンではSSDがコネクターに差し込まれているだけで、固定用のネジが取り付けられていなかったのです。
SSDを差し込み直してパソコンを閉じ、電源を入れると、今度は正常にWindowsの起動画面が表示されました。「ようこそ」の文字が表示され、ユーザーログイン画面まで正常に進みました。

再整備の手抜きなのか?
この状況からは、リファービッシュ作業に問題があったと言わざるを得ません大量のパソコンを効率的に整備する過程で、細かな作業が省略されてしまったのかもしれません。特に、見た目では分からない内部の固定作業は、見逃されやすそうです。
ネジで固定されていないSSDは、パソコンを移動させたり振動を与えたりすると、コネクターから外れやすくなります。今回の場合、パソコンを持ち運んだ際の振動で、SSDがコネクターから部分的に外れたと考えられます。
M.2 SSDのコネクターは、USBのような差し込み式とは異なります。基板に対して斜めに差し込み、平らになるように倒してからネジで固定する構造です。ネジによる固定がないと、接続が不安定になります。
必要な部品の購入
このままでは、また同じトラブルになってしまうので、ネジでSSDを固定する必要があります。パソコン用のネジは特殊なサイズですが、インターネット通販でかんたんに購入できます。約1000円ほどで、パソコン修理用の様々な種類のネジが含まれていました。M.2 SSD用のネジも含まれていたので、SSDの端部を基板に固定します。
物理的な接続不良も確認する
ソフトウェアの問題と思われる症状でも、実際には物理的な接続不良が原因の場合があります。特に、パソコンの内部部品は精密で、わずかな接触不良でも大きな問題を引き起こします。
リファービッシュパソコンは「中古パソコン」。その品質は、整備を行う業者によって大きく異なります。価格の安さだけでなく、整備の丁寧さも重要な要素です。購入後は、このような問題が出てくることがあることは認識しておく必要がありそうです。今回は、約1000円のネジセットで問題が解決しましたが、もし、分解して確認しなければ、「安物買いの銭失い」と諦めて、新しい製品購入していた可能性があります。
リファービッシュパソコンを購入する際は、以下の点に注意します。
- 整備業者の信頼性
- 保証期間と内容
- 返品・交換の条件
まとめ
今回の問題は、SSDの固定ネジ不足による接続不良が原因でした。一見すると重大な故障に見える症状も、実際には単純な物理的問題の場合があります。
リファービッシュパソコンは価格面でのメリットがある一方、整備品質にばらつきがある点に注意が必要です。問題が発生した場合は、段階的な診断により適切な原因特定を行うことが重要です。
- 3F0エラーコードは、HPパソコンでブートデバイスが見つからない場合に表示される一般的なエラーです。HPの公式ドキュメントでは、このエラーが発生する原因として、ハードディスクの接続不良、BIOS設定の問題、ハードウェア故障などが挙げられています- Boot Device Not Found Hard Disk 3F0 Error on HP [FIXED]