! ペイディの手軽さと「使いすぎリスク」

Amazonで買い物をするとき、「あと払い(ペイディ)」という選択肢を見たことがあるかもしれません。クレジットカードがなくても後払いできる、便利なサービスです。しかし、使いすぎには十分に気をつける必要があります。

ペイディとは何か

ペイディ」は2014年に日本で始まった、「後払い決済サービス」です1
このサービスの認知度が高まったのは、2019年11月にAmazonが支払い方法として採用したこと23。また、2021年6月には、「Apple専用プラン」も始まります4
その後、2021年9月にはアメリカの決済大手PayPalが約3000億円で買収しています5

ペイディ」は、利用者のその月の買い物を翌月にまとめて支払う仕組みです。

「Paidy (あと払いペイディ)-後払いアプリ」をApp Storeで

ペイディの「手軽さ」と「与信」

これだけなら、クレジットカードとほぼ同じです。しかし、ペイディの大きな特徴は、いわゆる「信用力」がなくても登録できること。クレジットカードの発行には事前に審査があり、時間がかかります。しかし、ペイディは、メールアドレスと携帯電話番号だけで登録でき、支払い方法には口座振替だけでなく、コンビニ払い、銀行振込、から選べます。

ペイディの創業者ラッセル・カマー氏は、シンガポール生まれのカナダ人です。東京のゴールドマン・サックス証券でクレジットトレーダーとして働いていた当時、クレジットカードの申請が却下されました。この経験が、クレジットカードに代わる決済手段を作るきっかけとなりました。日本では当時「フィンテック」という言葉すらない時代。彼は日本市場の特殊性に勝機を見出したのです。

ただし、ペイディは事前審査を減らした分、回収手数料がかかります。たとえば、コンビニ払いを選ぶと、毎月390円の手数料がかかることになります。

ペイディの「使いすぎリスク」

ペイディは「手軽さ」を売りにしていますが、計画的に使わないと支払いが膨らみます。

購入時に支払いが発生しないため、複数の商品を次々と購入してしまい、支払いが一度に発生するケースが少なくありません。

同じように簡易的な審査でクレジットカードを代替する仕組みとしては、プリペイド式のクレジットカードもあります。
こちらは、クレジットカードと同じように使えて、事前にチャージした金額しか使えないため、使いすぎの心配がありません。

BNPLビジネスの2つの収益源

ペイディのような「今買って、後で支払う(Buy Now,Pay Later)」サービスを、「BNPL」といいます。

手軽なのに、実はある程度の金銭管理能力が必要というのは、「消費者金融」に似ています。

両者のビジネスモデルは、利用者の今の支払いのためにお金を貸し、金利や手数料を収入とする、という点では似ています。ペイディでは支払いが遅れると、年率14.6%の遅延損害金が発生します。これは、金利に相当します。

実際、ペイディの杉江陸社長は、消費者金融「レイク」の再建を手がけ、新生フィナンシャルの社長を務めた人物です。2017年にペイディに参画しました6。消費者金融の専門家が運営に参画しているのは、支払われないリスクに備える体制が必要だからです。利用者に代わって商品代金を立て替えるため、大量の資金が必要です。ペイディの貸倒引当金は2022年時点で78億円、2年間で約4倍に増えました。

ただし、消費者金融では、借りた人からの利息が収入源ですが、ペイディにはもう一つの収入源があります。
それは、加盟店からの決済手数料です。
1回払いで3.5%、3回払いで4.5%、6回払いで5.5%、12回払いで6.5%です。

つまり、利用者と直接資金のやり取りをするだけでなく、決済を仲介することで店舗側からも手数料収入を得ることができます。

まとめ

ペイディは表面的には「便利な後払いサービス」ですが、本質は与信・貸付ビジネスです。消費者金融の拡張版として、加盟店と利用者の双方から手数料を得る仕組みを作りました。

しかし、手軽さを売りにしながら、実際には計画的な金銭管理能力を必要とする矛盾も抱えています。

一般的な消費者にとっては、プリペイド式のクレジットカードの方が、使いすぎを防げて手数料も少なく、健全な選択肢と言えるでしょう。

  1. ペイディのサービスは2014年7月に開始されました。 – ExCo、約3.3億円の資金調達の実施と、カードレスのオンラインペイメントサービス「Paidy」をローンチ
  2. Amazonは2019年11月からペイディを支払い方法として提供開始しました。 – Amazon Pay、ECサイトでのお買い物であと払い 「ペイディ」が利用可能に
  3. 2021年7月時点でアカウント数が600万を突破しました。 – ペイパルが3000億円で買収した「あと払い決済」ペイディとは何者なのか?
  4. 2021年6月にスタートした「ペイディあと払いプランApple専用」では、最大24回まで分割手数料無料での支払いができる。 – ペイパルが3000億円で買収した「あと払い決済」ペイディとは何者なのか? | Business Insider Japan
  5. PayPalは2021年9月に約27億ドル(約3000億円)でペイディを買収すると発表しました。 – 米決済ペイパル、後払い新興のペイディを買収 3000億円Press Release: ペイパル、Paidyを買収へ
  6. 杉江陸氏は2006年にGEコンシューマー・ファイナンスに入社し、レイクの再建に携わりました。2012年に新生フィナンシャルの代表取締役社長兼CEOに就任し、2017年11月にペイディの代表取締役社長兼CEOに就任しました。 – 3000億円買収のペイディCEOが語る「成功するスタートアップの条件」「起業家はかっこいい、という時代は終わった」Paidy杉江社長