最近のパソコンは本当に速い
Windows 11を搭載したパソコンの電源を入れると、ほんの十数秒でデスクトップ画面が表示されます。この快適さに慣れてしまうと、少し前のパソコンがどれだけ時間がかかっていたか忘れてしまいそうです。
この起動の速さには、主に2つの要素が関係しています。1つはSSD(ソリッドステートドライブ)というストレージの採用、もう1つは高速スタートアップという機能です。
「高速スタートアップ」という仕組み
「高速スタートアップ」は、Windows 8から導入されたパソコンをシャットダウンする際に工夫を加える機能です1。完全に電源を切る前に、システムの基本的な情報を「休止状態ファイル(hiberfil.sys)」として保存します2。
次回起動する際、ゼロから読み込むのではなく、保存しておいた情報を使います。
この機能はHDD時代に大きな効果を発揮しました。ディスクの回転や磁気ヘッドの移動といった物理的な動作を一部省略できるためです。
SSD時代における高速スタートアップの効果
ここで重要な疑問が浮かびます。もともと高速なSSDでも、高速スタートアップは効果があるのでしょうか。
従来のHDD(ハードディスクドライブ)は、磁気ディスクを回転させてデータを読み書きします。一方、SSDはフラッシュメモリを使用します。USBメモリと同じ仕組みで、物理的に動く部品がありません。データにアクセスする時間がほぼゼロなのです。
機種や条件で違いが出てきますが、具体的な数字で概要を掴むと、
- HDDで高速スタートアップをオンにした場合、起動時間は30秒から50秒です。
オフにすると40秒から120秒になります3
古いパソコンでは2分以上かかることも珍しくありません4。。 - SSDで高速スタートアップをオンにした場合は10秒から20秒、
オフにすると20秒から40秒です5。
つまり、起動速度に最も大きな貢献をしているのは、SSDです。ただし、高速スタートアップも重要な役割を果たしていることがわかります。SSDでも高速スタートアップをオフにするとやや遅くなり、電源を入れても少し待つ必要が出てきます。すぐに作業を始めらなくなるため、体感ではかなり遅くなった印象があります。
高速スタートアップの注意点
パソコンの起動速度を最大限に高めたいなら、SSDと高速スタートアップの両方を有効にするのが理想的です。特に毎日電源を入れる使い方をする人には、この組み合わせが最適です。
しかし、高速スタートアップには、注意すべき点があります。
それは、完全なシャットダウンではなく部分的な休止状態であるため、周辺機器が正しく認識されないことがあります6。たとえば、プリンターやUSB機器を接続したのに動作しない場合、高速スタートアップが原因かもしれません。
また、Windows Updateの後にトラブルが発生するケースも報告されています。Windowsのアップデートの中には前回シャットダウン時の状態の保持など含まない完全なシャットダウンが必要なものがあり、高速スタートアップを有効にしている場合そういったアップデートが完了しないことがあります7。
「再起動」では高速スタートアップは一時的に無効
こうした問題を避けるためには、システムが不安定なときは「再起動」することが有効です。
再起動の場合は、高速スタートアップが無効な状態でパソコンが起動します8。
もしかして、Windows Updateで「更新してシャットダウン」のあとに、なぜか再起動している問題は、この「高速スタートアップを回避するための再起動」が原因だったのかな。
- 高速スタートアップ機能はWindows 8で初めて導入され、Windows 8.1、Windows 10、Windows 11でも引き続き標準機能として搭載されています。 – 第17回 素早い起動を可能にする「高速スタートアップ」:Windows 8レボリューション – Windows 8.1ミニTips(107) 高速スタートアップを有効にする
- 高速スタートアップはhiberfil.sysという休止状態ファイルにカーネルやドライバの状態を保存し、次回起動時にそれを読み込むことで起動を高速化します。 – 第17回 素早い起動を可能にする「高速スタートアップ」 – スタートアップとシャットダウンの優れたエクスペリエンスを提供する | Microsoft Learn
- 実測データによると、HDD環境での起動時間は新品で30-45秒、使用年数が経過すると90-120秒以上かかることもあります。 – SSD交換ドクター「Windowsの起動が遅すぎる!」 – 価格.com「パソコンの起動時間ってどれくらいですか?」
- 実際の修理事例では、7年使用したノートPCで起動時間が2分10秒かかったケースが報告されています。 – Rufix「起動に2分10秒かかっていたPCがSSDに交換で〇〇秒で起動」 – 起動時間が1/4に!「動作が遅くて仕事にならないパソコンのHDDをSSDに変えて高速化する!」
- 複数の実測データによると、SSDでの起動時間は環境により異なりますが、一般的に10-25秒程度とされています。高速スタートアップ有効時で10秒前後、無効時で20-40秒程度です。 – 価格.com「パソコンの起動時間ってどれくらいですか?」 – Windows の”高速スタートアップ”は本当に速いのか?
- 高速スタートアップは休止状態ファイルにデバイス情報を保存するため、シャットダウン後にハードウェア構成が変更されると、起動時に情報の不整合が発生します。 – 高速スタートアップを無効にする方法は? – トラブルの元、Windows8/10 の高速スタートアップは無効にしよう
- 高速スタートアップが有効な状態では、完全なシャットダウンが行われないため、一部のWindowsアップデートが正しく完了しない可能性があります。 – 高速スタートアップを無効にする方法は? – Windows 11で高速スタートアップを無効にする方法
- 再起動を実行した場合、高速スタートアップは適用されず、完全なシャットダウンと通常起動が行われます。これは「困った時の再起動」が効果的な理由の一つです。 – 高速スタートアップとは?メリットとデメリットなど – 【どこよりも詳しく解説】Windows10高速スタートアップ機能メリットとデメリット