先日、タイムラインに興味深い記事が流れてきました。
「Claude Codeを完全無料・プライベートでローカル実行する方法」という内容です。

Claude Codeといえば、Anthropic社が提供するAIコーディングエージェント1で、通常は有料のAPIを使ってクラウド経由で動作します。
それが無料で動く?
しかも完全プライベート?
ただし、元の記事を読むと、すぐに違和感に気づきます。
この方法、確かに「Claude Code」を使っているけれど、動いているのはClaudeではないのです。
「AIモデルとAIエージェントツールは区別しないといけない」という話です。
1. 導入の手順
実は、元の記事の導入を読むと、一般ユーザー向けの情報ではなく、「ローカルのオープンソースモデル」を使うことがはっきり書いてあります。
このチュートリアルでは、ローカルのオープンソースモデルを使用して、Claude Codeを自分のマシンで完全に実行する方法を学びます。
対象となる読者
XユーザーのAlvaro Cintasさん: 「How to Run Claude Code Locally (100% Free & Fully Private)」 / X
- プライベートなオフラインAIコーディングエージェントを求める開発者
- Claude Codeの機能を必要とするパワーユーザー
- オープンソースファンがローカルLLMを実験中
- 実際にファイルを編集したり、ターミナルコマンドを実行したりできるAIを求める人
主な手順はこういうことです。
- ステップ1:Ollamaのインストール
- ステップ2:Claude Code CLIのインストール
- ステップ3:接続先の切り替え
最初の手順は、Ollamaというツールのインストールです。
Ollamaは、オープンソースの言語モデルをローカル環境で動かすためのツールです2。
ここで指定されているのは「qwen2.5-coder」や「gemma」といったモデル。
どれもClaudeではなく、別の組織が開発した無料のオープンソースモデルです3。
このツールで自前のAIモデルを動作させるには、基本的にはかなりの高性能のパソコンが必要です(「無料」の背景にはこのような前提があります)。
Claude Code CLIには、3つの環境変数を設定します。
export ANTHROPIC_BASE_URL="http://localhost:11434"
export ANTHROPIC_AUTH_TOKEN="ollama"
export CLAUDE_CODE_DISABLE_NONESSENTIAL_TRAFFIC=1
Code language: JavaScript (javascript)
ANTHROPIC_BASE_URLをlocalhost:11434、つまりローカルのOllamaサーバーに向けています4。
通常、Claude CodeはAnthropicのクラウドサーバーと通信しますが、この設定でその接続先を強制的にローカルに変更しているのです5。
2行目のAPIトークンも、本物ではなく「ollama」という文字列をダミーとして設定しています。
最後に、プロジェクトフォルダでAIコーディングエージェントが起動します。
<code>claude --model qwen2.5-coder:7b</code>Code language: HTML, XML (xml)
1.1. CLIの枠組みとAIエンジンの分離
ここまでの手順を整理すると、この方法の仕組みが見えてきます。
ファイルを読み、コードを編集し、コマンドを実行する。
確かにClaude Codeのような動作をしますが、その「頭脳」はClaudeではありません。
Claude Codeは、大きく2つの部分に分かれています。
1つは「ファイル操作やコマンド実行を行うCLIツール」、
もう1つは「思考と判断を担当する言語モデル」です。
通常、このCLIツールはAnthropicのサーバー上で動くClaude(Sonnet 4.5など)と通信します。
しかし、この記事で紹介されている方法は、CLIツールはそのまま使いつつ、接続先を別のモデルに差し替えています。
つまり、Claude Codeの「外枠」は使うけれど、中身の「脳」は別物に取り替えているのです。
1.2. エージェント機能の転用
もちろん、この方法自体には価値があります。
Claude Codeの強みは、ファイルシステムへのアクセス、コマンド実行、エラー処理といった「エージェント機能」にもあります。
これらの機能をオープンソースモデルでも使えるなら、コストをかけずにある程度のコーディング支援が得られます。
ただし、トレードオフは明確です。
qwen2.5-coderやgemmaといったモデルは優秀ですが、Claude Sonnet 4.5と同等の性能は期待できない面があります6。
複雑な問題解決や、文脈の深い理解が必要な場面では、差が出るかもしれません。
2. 「Claude Code」という言葉が指すもの
ここで考えたいのは、「Claude Code」という言葉が何を指しているか、です。
多くの人が「Claude Code」と聞いてイメージするのは、Anthropic社が開発したClaudeという高性能な言語モデルが、コーディング作業を支援してくれるツール、ではないでしょうか。
Claude特有の思考の深さ、コード理解の正確さ、そういった特性を期待します。
しかし、この記事のタイトル「How to Run Claude Code Locally」が指しているのは、あくまで「Claude CodeというCLIツールをローカルで動かす」ことです。
動かすAIモデルがClaudeである必要はありません。
同じ「Claude Code」という言葉なのに、受け手が想定するものと実際の内容にはズレがあります。
2.1. 「ものは言いよう」の技術
このタイトルは、嘘をついているわけではありません。
確かにClaude CodeのCLIツールをローカルで、無料で、プライベートに動かしています。
でも、一見して期待する「Claudeの知能をローカルで使える」という意味では、正確ではありません。
技術的には正しいけれど、言葉の選び方によって受け手の期待をコントロールしている。
マーケティングや広告でよく使われる手法が、技術記事のタイトルにも応用されています。
もし同じ内容を別の言い方で表現するなら、
「Ollamaのオープンソースモデルを、Claude Code CLIの枠組みで動かす方法」となるでしょう。
これなら誤解は少ないはずですが、おそらくクリック数は減ります。
2.2. 情報を読み解く力の必要性
今回、この記事タイトルを読んで感じたのは、技術情報を読み解く際の注意深さの重要性です。
タイトルや見出しは、書き手が最も伝えたいメッセージを凝縮したものです。
でも同時に、読み手の注意を引くための「フック」でもあります。
その二つの役割が、時に情報の正確性とトレードオフになることがあります。
「Claude Codeをローカルで動かす」という表現は、確かに技術的には間違っていません。でも、手順の中身を見ると、実際には「Claude CodeのCLIを、別のAIモデルと組み合わせて使う」という話でした。
この違いに気づくには、各ステップの意味を理解し、何が起きているかを自分の頭で考える必要があります。特に、環境変数で接続先を変更している部分が理解のカギでした。
3. まとめ:言葉と実態のギャップを見抜く
「Claude Codeを無料実行」という言葉は、魅力的でした。
でも、その実態は「Claude CodeのCLIツールを使って、Ollamaで動くオープンソースモデルを操作する」方法でした。
これは技術的には正しい情報です。
ただ、「Claude Code」という言葉が持つイメージと、実際の仕組みの間には、意図的かどうかは別として、ギャップがあります。
私たちが技術情報に接するとき、タイトルや要約だけで判断せず、手順の一つ一つを理解しようとする姿勢が大切です。
特に、「完全無料」といった魅力的な言葉が並んでいるときこそ、立ち止まって内容を確認する価値があります。
- Claude CodeはAnthropicが開発したコマンドラインベースのコーディングエージェントで、ターミナルから直接Claudeモデルにアクセスできます。Claude ProまたはMax購読、もしくはAPI keyが必要です。 – Claude Code 公式ドキュメント
- OllamaはローカルでLLMを実行するためのツールで、Mac、Linux、Windowsで利用可能です。 – Ollama公式サイト
- Qwen2.5-Coderはアリババクラウドが開発したコード特化型LLMで、0.5Bから32Bまで6つのサイズがあります。32Bモデルは複数のベンチマークでGPT-4oと同等の性能を示しています。 – Qwen2.5-Coder – Ollama
- Claude CodeはANTHROPIC_BASE_URL環境変数を通じて接続先をカスタマイズできます。この機能は本来、LLMゲートウェイや企業プロキシを経由する用途を想定していますが、Ollamaなどのローカルモデルサーバーへの接続にも応用可能です。 – Enterprise deployment overview – Claude Code Docs
- 複数のサードパーティプロバイダ(OpenRouter、Z.AI、LiteLLMなど)が、ANTHROPIC_BASE_URLを使用してClaude Codeと接続する方法を公式にドキュメント化しています。 – Use custom LLM providers in Claude Code
- Simon Willison氏のベンチマークによると、Qwen2.5-Coder 32BはAiderのコード編集ベンチマークで74%のスコアを記録し、GPT-4oの71%を上回りましたが、Claude 3.5 Sonnetの84%には及びませんでした。 – Qwen2.5-Coder-32B is an LLM that can code well that runs on my Mac