- 中古PCでは、Windows初期化後もSPP(Software Protection Platform)にOfficeライセンス情報が残るケースがあります。
- そういうときは、OSPP.VBSの/unpkeyコマンドで不要なライセンスを削除することで、正規ライセンスで再認証できるようになります。
- これは、OfficeはClick-to-Run(配信・更新管理)とOSPP(ライセンス管理)の2系統で独立して動作するため。
- Click-to-Runには2024、OSPPには2021のライセンスが登録され、起動時にOSPPの判定が優先されて2021として動作する不整合が発生していました。
- 特に「個人用ファイルを保持する」オプションでの初期化や不完全なリカバリでは、MSDN・評価版(Grace)由来のライセンスが残りやすく、中古PC特有のトラブル原因となります。
1. Officeの表示とライセンス情報が一致しない
中古で購入した Windows PC にOfficeがなかったので、正規の Office を購入してインストールしました。


ところが Word を起動すると、製品情報に「Office Professional Plus 2021」と表示されました。


レジストリや Microsoft アカウントを確認すると、確かに「Office Home & Business 2024」です。 表示と中身が食い違っている。この違和感から、調査を始めました。
1.1. PC の状況と前提条件
今回の PC は、メルカリで購入した初期化済みの中古 PC です。
機種はもともとOffice 付きモデルではありませんでした。
自分で Windows 11 初期セットアップを行い、Microsoft アカウントに紐づいた Office をインストールしました。
1.2. Wordのアカウント画面
Word の「アカウント」画面を見ると、そこには「Microsoft Office Professional Plus 2021」と表示されていました。

一方で、Microsoft アカウントの「サービスとサブスクリプション」には、正規の「Office Home & Business 2024」が登録されています1。
不審に思って、Officeをアンインストールして、再度ダウンロード・インストールの手順をし直しました。
それでも、購入したOffice2024の表示にはなりませんでした。
1.3. Click-to-Run の構成を確認する
Microsoft Officeは、バージョンやライセンスがたくさんあるので、ややこしいことが多いです。
次に確認したのは、Click-to-Run の構成です。
これは「どの Office を配信・更新するか」を決める設定情報です2。
PowerShellのGet-ItemPropertyコマンドでレジストリの以下のキーを確認しました。
HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration
出力結果を見ると、
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun\Configuration
AudienceId REG_SZ <GUID-1>
ClientFolder REG_SZ C:\Program Files\Common Files\Microsoft Shared\ClickToRun
ClientVersionToReport REG_SZ 16.0.19426.20218
WatcherInterval REG_SZ 3600000
PipelineServerName REG_SZ ClickToRun_Pipeline16
PackageLockerPath REG_SZ C:\ProgramData\Microsoft\Office
VersionToReport REG_SZ 16.0.19426.20218
ScenarioCulture REG_SZ
InstallID REG_SZ <GUID-2>
Platform REG_SZ x64
InstallationPath REG_SZ C:\Program Files\Microsoft Office
ClientCulture REG_SZ ja-jp
CDNBaseUrl REG_SZ http://officecdn.microsoft.com/pr/<GUID-1>
AudienceData REG_SZ Production::CC
HomeBusiness2024Retail.MediaType REG_SZ CDN
HomeBusiness2024Retail.ExcludedApps REG_SZ groove
RSODReset REG_SZ False
ProductReleaseIds REG_SZ HomeBusiness2024Retail
HomeBusiness2024Retail.OSPPReady REG_SZ 1
UpdateChannel REG_SZ http://officecdn.microsoft.com/pr/<GUID-1>
UpdateChannelChanged REG_SZ False
OneDriveClientAddon REG_SZ INSTALLED
HomeBusiness2024Retail.TenantId REG_SZ <TENANT-ID>
Code language: HTML, XML (xml)

ここでは、ProductReleaseIds が「HomeBusiness2024Retail」になっていました。
1.4. OSPP.VBSで確認(/dstatus)
一方、Officeのライセンスは、OSPP.VBS というスクリプトで確認します。
OSPP.VBS は、Office が内部で保持しているライセンス情報を表示するスクリプトです。
バージョンなどによって保存場所が違います。
C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office16\OSPP.VBS
C:\Program Files\Microsoft Office\Office16\OSPP.VBS
C:\Program Files\Microsoft Office\root\Office16\OSPP.VBSCode language: CSS (css)
検索などで調べたパスでは、スクリプトを実行しようとしても見つからないことがあります。
cscript "C:\Program Files\Microsoft Office\Office16\OSPP.VBS" /dstatus
入力エラー: スクリプト ファイル "C:\Program Files\Microsoft Office\Office16\OSPP.VBS" が見つかりません。Code language: JavaScript (javascript)
そういうときは、WINWORD.EXE の実体を確認すると、OSPP.VBSを見つけられます。

コマンドプロンプトでcscript OSPP.VBS /dstatus を実行すると、見覚えのない2つのライセンス情報が表示されました。
- Office 21, Office21ProPlus2021MSDNR_Retail edition(LICENSED)3
- Office 21, Office21ProPlus2021R_Grace edition(期限切れ)

Word での表示はこの有効化した「Office21ProPlus2021MSDNR」のライセンスを示しているようです。
2. 不要なライセンスを削除する(/unpkey)
ここまでで分かったことは、
Office Home & Business 2024 は、Click-to-Run の構成として正しく存在していました。
一方で、OPSSには、Office Professional Plus 2021 のライセンス情報が有効な状態で残っていました。
Officeは、動いているのですが、この状態は健全ではありません。
「正規な 2024 環境」とは言えない状態で、将来的に再認証を求められたり、突然通知が出たりして動かなくなる可能性があるからです4。
そこで、不要なライセンスを削除しました。
OSPP.VBSは、/unpkeyオプションでプロダクトキーの末尾5桁で指定すると、ライセンスを削除できます5。

>cscript "C:\Program Files\Microsoft Office\root\Office16\OSPP.VBS" /unpkey:*****
Microsoft (R) Windows Script Host Version 10.0
Copyright (C) Microsoft Corporation. All rights reserved.
---Processing--------------------------
---------------------------------------
Uninstalling product key for: Office 21, Office21ProPlus2021MSDNR_Retail edition
<Product key uninstall successful>
---------------------------------------
---Exiting-----------------------------
>cscript "C:\Program Files\Microsoft Office\root\Office16\OSPP.VBS" /unpkey:*****
Microsoft (R) Windows Script Host Version 10.0
Copyright (C) Microsoft Corporation. All rights reserved.
---Processing--------------------------
---------------------------------------
Uninstalling product key for: Office 21, Office21ProPlus2021R_Grace edition
<Product key uninstall successful>
---------------------------------------
---Exiting-----------------------------
>cscript "C:\Program Files\Microsoft Office\root\Office16\OSPP.VBS" /dstatus
Microsoft (R) Windows Script Host Version 10.0
Copyright (C) Microsoft Corporation. All rights reserved.
---Processing--------------------------
---------------------------------------
<No installed product keys detected>
---------------------------------------
---------------------------------------
---Exiting-----------------------------Code language: JavaScript (javascript)
無事に、「Product key uninstall successful」と表示されました。
この状態で、OSPP.VBS /dstatusを確認すると「No installed product keys detected」と表示されます。

2.1. 改めて正しいライセンスに同意する
Wordを開くと、改めてライセンスの確認画面が表示されました。


Microsoftアカウントに紐づいているライセンスが候補にあり、同意画面に進みました。
これで、無事に正しいライセンスでMicrosoft Officeを利用開始できました。

3. 【補足】Click-to-RunとOSPP
ここで疑問が生まれます。
なぜ Home & Business 2024 を入れたのに、ProPlus 2021 が有効になっているのか。
ポイントは、Office が内部で「構成」と「ライセンス」を別々に管理している点です。
それが、Click-to-Run(C2R)とOSPP(Office Software Protection Platform)です。
- Click-to-Run は インストール/更新技術であり、レジストリにインストール中のSKUを保持する。
- OSPP (Office Software Protection Platform) は ライセンス認証のバックエンドであり、プロダクトキーやSKUのライセンス状態を管理する。
「Click-to-Run(C2R)」は、 「Office の中身」を決めるプログラムです。
どの Office を配信・更新するか、どのアプリ(Word / Excel など)を入れるかの情報で、レジストリ(HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Office\ClickToRun)で管理されます。
「OSPP(Office Software Protection Platform)」は、Microsoft Office が ライセンスの状態やプロダクトキー6を管理するための仕組みです。
WindowsのSPP(Software Protection Platform)と連携して動作し、ライセンス情報は%ProgramData%\Microsoft\Office\Licensingに保存され、レジストリにも記録されます7。
重要なのは、OSPPは、Officeのインストール構成とは別系統で動いているという点です。
3.1. OSPP.VBS の役割
OSPPを確認・操作するには、OSPP.VBS を使います。
これは、SPP に登録されている Office ライセンスを操作するための公式スクリプトです8。
- 登録されているライセンス一覧の表示
/dstatus - 特定キーの削除
/unpkey - ライセンス状態のリセット
/rearm
3.2. なぜ Click-to-Run と OSPP が食い違うのか
Click-to-Run と OSPP は、役割分担してOfficeを管理しています。
Windows の初期化によって、Click-to-Run は消えることが多いものの、SPP(ライセンスストア)は消えないことがあります9
WindowsのクリーンインストールでもこれらのデータがFAT領域や回復パーティションから復元されることがあり、中古PC特有のライセンストラブルの原因となります。
特に『個人用ファイルを保持する』オプションでの初期化や、不完全なリカバリではこの現象が起きやすくなります。
今回はまさにそのケースでした。
そのため、次のような状態が成立してしまいます。
- Click-to-Run
→ Home & Business 2024 - OSPP
→ Professional Plus 2021
Office アプリ(WINWORD.EXE など)は起動時に、次の順で確認します。
- SPP(OSPP)に有効なライセンスがあるか
- あれば、その SKU を自分の製品名として採用
- なければ、未ライセンスまたは再認証へ
この場合、インストールされている実体は 2024なのに、Word は 2021 ProPlus として動作しています。
OSPP の判定が最優先だからです。
4. 【補足】Office21ProPlus2021MSDNR_Retail とは?
今回、Officeには、ProPlusというライセンスが2つも入っていました。
これは、どのようなライセンスなのでしょうか?
「MSDNR_Retail」は、Visual Studio サブスクリプション(旧 MSDN)経由で提供されるOffice Professional Plus 2021 のライセンスです10。
Office ProPlusといえば、企業向けのいわゆるボリュームライセンス(KMS)が一般的ですが、この「Visual Studioサブスクリプション」版は、個人用 PC でも普通に有効化されます(Retail チャネル)。
今回のケースでは、このライセンスが LICENSED(有効) の状態で残っていました。
4.1. Office21ProPlus2021R_Grace とは
一方、R_Grace は、Grace(猶予)ライセンスと呼ばれるもので、Office をインストールした直後、まだ有効化が完了していない間だけ使われる仮の状態です11。
いわば、「正式な契約が完了するまでの仮入館証」のようなものです。
期限が切れると NOTIFICATIONS 状態になりますが、期限切れになっても自動では消えません。
そのため、OSPP の中に“残骸”として残り続けます12。
4.2. 今回の件から分かったこと
今回のトラブルは、
- Office をアンインストールした
- 正規ライセンスを購入した
だけでは解決しませんでした。
OSPP という、見えない場所に残る「ライセンスの記憶」が、Office の正体を決めていたからです。
中古 PC では、「Office は消えているのに、ライセンスだけが残っている」という状態が、思った以上に簡単に起こります。
- Microsoftアカウントに紐づいたOfficeライセンスは、https://account.microsoft.com/services/ から確認できます。サブスクリプション版(Microsoft 365)と永続版(Office 2024など)の両方がここに表示されます。 – Microsoft アカウントでのサービスとサブスクリプションの管理
- Click-to-Runは、Office 2013以降で採用されているインストール・更新技術です。従来のMSI形式と異なり、ストリーミング技術を使って高速インストールと自動更新を実現しています。 – Office 展開ツールの概要
- OSPP.VBSは主にボリュームライセンス版Officeの管理ツールですが、Retail版のライセンス情報も表示できます。ただし、Microsoft 365 Apps(サブスクリプション版)では正確に動作しない場合があり、その場合はvnextdiag.ps1の使用が推奨されます。 – Office のボリューム ライセンス認証を管理するためのツール
- 今回のケースでは前所有者のVisual Studioサブスクリプションライセンスが残存していました。このようなサブスクリプションライセンスは契約者本人のみが使用でき、PC本体と共に譲渡することはできません。中古PC購入時に他人のライセンスが残っている場合、そのまま使用を続けることはMicrosoftのライセンス規約違反となります。必ず不要なライセンスを削除し、正規に購入したライセンスで使用してください。 – Office 付きパソコンの譲渡とOfficeを再インストールする方法
- /unpkeyコマンドは管理者権限が必要です。また、複数のライセンスが登録されている場合、削除するライセンスのプロダクトキー末尾5桁を正確に指定する必要があります。間違ったライセンスを削除しないよう、事前に/dstatusで確認することが重要です。 – 情シスエンジニアの苦悩(Office認証が突然切れる編)
- ライセンスには、PRODUCT IDと、SKU IDが割り振られています。SKU(エス・ケー・ユー)とは、「製品を区別するための識別子(管理番号)」のことです。このSKU IDが、ライセンスの種類を示しています。
- Office 365のライセンストラブルにみまわれたら
- OSPP.VBSはOffice 2010以降で提供されており、Office16フォルダ(Office 2016/2019/2021/2024共通)内に配置されています。64ビット版の場合はC:\Program Files\Microsoft Office\Office16\、32ビット版の場合はC:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office16\にあります。 – osppコマンドとは?Officeライセンス管理を徹底解説
- Windowsを初期化しても、SPP(Software Protection Platform)に保存されたライセンス情報は完全には削除されないケースがあります。特に「個人用ファイルを保持する」オプションでの初期化では、ライセンス情報が残存しやすくなります。 – 中古PCを初期化したらoffice2019が再インストールできず使えなくなってしまいました
- Visual Studio Enterprise サブスクリプションに含まれるOffice Professional Plusは、1デバイス・1年間の運用環境での使用が認められています。ただし、サブスクリプションが失効すると使用権も失われます。 – Visual Studio ライセンス ホワイトペーパー
- Graceライセンスの猶予期間は通常30日間です。この期間内にプロダクトキーを入力して正式なライセンス認証を行わないと、Officeは機能制限モードに移行し、編集機能が使用できなくなります。 – Office のボリューム ライセンス認証のトラブルシューティング
- 今回、この Grace ライセンス自体が直接の原因だったわけではありません。ただし、OSPP の判定を複雑にし、状況を分かりにくくする要因にはなっていました。