pol.isの
「合意形成の仕組み」

SNSを見ていると、ある話題について賛成と反対が真っ向からぶつかり合い、最後まで噛み合わないまま終わる場面をよく見かけます。 議論を追えば追うほど「これは意見交換というより衝突だな」と感じることが増えていました。

そんな中で知ったのが pol.is というオンラインツールです12

「議論しないのに、合意形成に役立つ」と紹介されており、本当にそんなことが可能なのか気になりました。

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1. pol.isとは何か

pol.isは、意見を投稿し、それに対して他の人が「賛成」「反対」「パス」で反応するツールです3

pol.isとは何か 賛成 反対 パス グループA グループB 似た反応をした人同士をグループ化

一見すると、アンケートに少し似ています。
ただし、決定的に違う点があります。
pol.isは「どちらが多いか」を出しません。

代わりに行うのは、 「どの意見に似た反応をする人たちがいるか」をまとめることです4

2. pol.isの流れ

実際の操作(3ステップ) 1 意見を書く 短い文章で投稿 2 他人に反応 賛成/反対/パス 3 結果を見る 立場の配置図 コメント不可 反論や議論はできない設計

2.1. ステップ1:意見を書く

最初に行うのは、短い意見を書くことです。
長い主張や説明は求められません。

2.2. ステップ2:他人の意見に反応する

次に、他の人の意見に「賛成」「反対」「パス」で反応します。
SNSとは異なり、コメントを書いたり、反論したりはできません。

「パス」が用意されているので、分からない、判断できない、という状態もそのまま残ります。

2.3. ステップ3:結果を見る

ある程度反応が集まると、結果が図で表示されます。
人が点として配置され、似た反応をした人同士が近くに集まります。

3. クラスタリングがやっていることを、噛み砕いて考える

pol.isでは、「反応パターンが似ている人」が近くに配置されます5
これは、数学的にはパターン分析やクラスタリングと呼ばれる手法です。

クラスタリングの仕組み 同じ意見に同じ反応をした人を近くに配置 A × B × 同じグループ 機械は整理役、判断は人間

難しく聞こえますが、やっていることは単純です。
「この人とあの人は、同じ意見に賛成し、同じ意見に反対しているか」を比べているだけです。

意見の意味を機械が理解しているわけではありません。
判断は常に人間が行い、機械は整理役に徹します。

3.1. なぜ「多数派」を出さないのか

ここが、一番考えさせられた点です。

なぜ「多数派」を出さないのか SNS 賛成 vs 反対 どちらが多いか pol.is 共通の賛成点 重なりを探す 対立する人たちでも 「この条件なら受け入れられる」 → 合意形成の本質

pol.isでは、多数派がどちらかは重要ではありません。
代わりに重視されるのは、「対立している人たちでも共通して賛成できる意見」です6

  • SNSでは、 「賛成か反対か」という二択が強調されます。
  • pol.isでは、 「この条件なら多くの人が受け入れられる」という重なりを探します。

これは、合意形成において本質的だと感じました。

pol.isは万能ではありません。

参加者が偏れば、見える構造も偏ります。
少人数では、十分な広がりが出ないこともあります。

また、最終的に決めるのは人です。
pol.isは結論を出しません。

それでも、 「何を無視すると必ず反発が起きるか」を示してくれる点は非常に強力です。

3.2. パブリックコメントとの違いを考える

日本のパブリックコメントも、広く意見を集めます。
この点だけ見ると、pol.isに近いようにも見えます。

しかし、決定的な違いがあります。
パブリックコメントでは、意見同士の関係が見えません7

件数は分かっても、立場の構造は分かりません。
pol.isは、その構造を最初から可視化する前提で作られています。

4. ファシリテーションの重要性

調べていくうちに、pol.isはツールだけでは成立しないことが分かりました8
意見を整理し、分析できる形に保つ役割が必要です。

ファシリテーションの重要性 ファシリテーター 意見を整理 構造として見える 誘導しない 中立的に保つ 継続的支援 プロセス全体 ツール単体では成立しない

これが「ファシリテーション」です。
ここを怠ると、 どんなに優れたアルゴリズムでも意味を持たなくなります。

誰かが結論を誘導するのではありません。
意見が壊れず、構造として見えるように整える作業です。

5. まとめ:衝突を減らすための設計

SNSは、人の感情を加速させる仕組みです。
pol.isは、人の判断を静かに並べる仕組みです。

両者は、目指しているものが違います。

合意形成に必要なのは、 声の大きさではなく、立場の配置を知ること。

  1. pol.isは台湾のデジタル民主主義プラットフォームvTaiwanの中核ツールとして2015年に初めて実装され、Uber規制問題などで実績を上げた。 – vTaiwan – Computational Democracy Project
  2. 2015年の台湾Uber規制問題では、4週間で4,000人以上が参加し、80%以上の合意が得られた7つの提言が政策に反映された。vTaiwanは2015年のローンチ以降、80%のケースで「決定的な政府の行動」につながっている。 – Lessons From Consensus Building in Taiwan
  3. pol.isでは、ある投稿について反応できるのは「賛成」「反対」「パス・不確定」の3つのみで、コメントや反論機能は持たない。これにより従来のSNSにありがちな相互攻撃を回避する設計になっている。 – Pol.isを大学自治で使ってみました
  4. pol.isはPCA(主成分分析)やUMAPなどの次元削減技術、K-Means法やLeidenアルゴリズムなどのクラスター分析を用いて、反応パターンが類似した参加者をグループ化する。 – Polis – 西尾泰和の外部脳
  5. AIがリアルタイムで作成するオピニオン・マップ上に、意見が近い者同士がグループとして可視化され、各参加者の位置付けが表示される。 – デジタル技術を活用して未来をひらくPLURALITY(プルラリティ)とは何か?
  6. pol.isは「橋渡しする意見(bridging statements)」、つまりどのグループでも同意を得られそうな意見を特定することで、二項対立ではない熟議を促す設計になっている。 – 合意のための議論が交わせるソーシャルメディア「Pol.is」とは
  7. 従来のパブリックコメント制度では意見の件数は集計されるが、意見間の構造や立場の配置は可視化されない。pol.isは最初から意見の構造を可視化する前提で設計されている。 – 民主的な合意形成を!デジタルで叶える民主主義
  8. 台湾のvTaiwanでは、各ケースに最低1人のファシリテーターが配置され、プロセス全体を通してケースを導く役割を担う。また、政府機関のスタッフは「参加オフィサー」として特別な訓練を受ける。 – vTaiwan – EverybodyWiki