Claude には Web 版があり、ブラウザで使えます。
Windows デスクトップアプリをインストールしてみると「どうせ同じ画面をアプリにしただけ」と思っていましたが、UAC・開発者モード・sudo のダイアログが次々と出てきました。

1. インストールで起きたこと
claude.com/ja/download からインストーラーを実行すると、最初に出たのは UAC(ユーザーアカウント制御)のダイアログです。
発行元は「Anthropic, PBC」と確認済みで、インストーラーがデバイスに変更を加えることへの同意を求めています。

続いて「開発者モードをオンにしますか?」というプロンプトと、C:\WINDOWS\system32\sudo.exe config --enable forceNewWindow を実行する UAC ダイアログが 2 枚出ました。
その後「Claude がカメラにアクセスすることを許可しますか?」と聞かれ、ダウンロードが始まりました。
サイズは 222 MB です1。
ログイン体験も特徴的です。
Google OAuth でブラウザが開き、認証が完了するとブラウザが「claude.ai がこのアプリケーションを開く許可を求めています」と表示してデスクトップアプリに戻ります。
Web 版のログインをアプリへのハンドオフで完結させる仕組みです。
1.1. Web 版との違い

通常のチャット、文章作成、ファイルを手動アップロードして使う範囲なら、Web 版と機能的な差はほとんどありません。
デスクトップ版が意味を持つのは次の用途です。
- ローカルファイルを直接扱いたい
- MCP や Desktop Extensions を使いたい
- Cowork で長時間タスクを自律実行させたい
- Claude Code を GUI で使いたい
- 画面やアプリ操作まで任せたい
UI は Electron(HTML や CSS、JavaScript でデスクトップアプリを作るフレームワーク)ベースとみられ2、Web 版と共通のコードベースを持ちます。
見た目がほぼ同じなのはそのためです。
しかし内部では、VM・ローカル権限・MCP・画面取得を扱う実行基盤が動いています。
「Webラッパーにすぎない」という評価は 2024 年時点の検証から広まったもので、Chat タブだけを見れば当時は近かった評価です。
Cowork や Code が加わった現在のデスクトップ版に同じ評価を当てはめるのは実態と合いません。
インストール時に UAC・開発者モード・sudo が求められるのは、その実行基盤を Windows の深い部分に置くためで、Web 版とは設計の次元が違います。
2. 開発者モードが必要な理由

Windows の開発者モードとは、Microsoft Store 以外のソースからアプリを直接インストールできるようにする設定です。
Claude の配布形式は MSIX(Microsoft が定めた Windows のアプリ配布パッケージ形式)ですが3、ストア外配布の MSIX にはこの設定が必要になる場合があります。
Cowork を含むフル機能インストーラーで開発者モードが要求されたという報告が Reddit にあり4、今回の体験とも一致しています。
Chat のみのシンプル版では不要という事例もあることから、Cowork の実行環境セットアップが原因でしょう。
2.1. sudo が出てきた理由

sudo はもともと Linux や macOS のコマンドで、Windows では 11 のビルド 26052 以降に実験的に組み込まれた機能です5。
インストーラーが sudo.exe config --enable forceNewWindow を実行しようとしていました。
これは「昇格コマンドを新しいコンソールウィンドウで実行する」という動作モードの有効化です6。
Cowork は Hyper-V(Microsoft の仮想化基盤)上の Linux VM(仮想マシン)を実行環境として使います7。
そのセットアップ処理が Windows の仮想化機能と連携するためにこの変更が必要になったと考えられます。
公式には「Cowork の完全な利用には管理者権限と Virtual Machine Platform の有効化が必要」とあります8。
3. アプリを開くと 3 つのタブがある
ログイン後の画面は Web 版と見た目が近いですが、画面上部に Chat・Cowork・Code の 3 タブが並ぶ点が異なります。
Web 版にはこのタブ構造がありません。

Chat タブは Web 版と完全に同期しており、会話・プロジェクト・メモリはアカウントに紐づきます。
Cowork と Code はデスクトップ版にしかない機能です。
3.1. Code とは

Code タブは Claude Code(AI によるコーディング支援ツール)の GUI 版です。
プロジェクトフォルダの管理、コード差分の表示、埋め込みブラウザでのプレビュー、ターミナル、ファイルエディタ、GitHub や Slack、Linear との連携を扱えます。
Windows でローカルセッションを使うには Git for Windows が別途必要になります9。
3.2. Cowork とは

Cowork は有料プラン向けのデスクトップ専用機能で、ローカルフォルダへの直接アクセス、長時間タスクの自律実行、Excel や PowerPoint の生成、スケジュールされたタスク、コードやシェルの実行ができます10。
Claude が複数ステップの作業を自分で進める設計で、操作を都度確認しながら進む通常チャットとは発想が違います。
4. 実行環境の構造
Cowork の処理はひとつの環境で動いているわけではなく、2 層に分かれています。

会話処理、ローカルフォルダの読み書き、Web 取得、ローカル MCP(Model Context Protocol:AI アプリと外部ツールをつなぐ標準プロトコル)サーバーとの通信は PC 上でネイティブに動きます11。
コードやシェルコマンドの実行は Hyper-V 上の隔離 Linux VM で行われ、ファイルシステムとネットワークが分離された状態になります。
インストール時に開発者モードと sudo が必要だったのは、後者の VM 環境を Windows 上に置くためです。
4.1. 「サンドボックス」の範囲
コード実行が VM 内に閉じるのに対し、Claude の全動作が VM に収まるわけではありません。

接続したローカルフォルダに対して Claude は読み書きや削除ができます。
公式は専用の作業フォルダを用意することを推奨しており、ホームフォルダや .ssh・.env・ブラウザプロファイルなどを丸ごと渡さないことが前提の設計です。
Computer use(コンピュータユース:Claude が画面を見てクリックや入力、アプリ操作をする機能)はサンドボックスの外で実行されます12。
公式も「Claude とアプリケーションの間にサンドボックスはない」と明記しています。
Desktop Extensions(デスクトップ拡張機能:ローカル MCP サーバーをワンクリックで追加できる仕組み)は、通常のローカルプログラムとしてユーザー権限で動きます。
- インストーラーのサイズはバージョンによって変動する。公式ダウンロードページは claude.com/download から参照できる。 – Install Claude Desktop
- Electron 公式ドキュメントには「AI アプリケーションとして OpenAI の ChatGPT と Anthropic の Claude が Electron を採用している」と明記されている。また、Claude Code チームの Felix Rieseberg 氏は Electron のコアメンテナであり、Cowork の開発に携わっていることが公式インタビューで確認されている。 – Why Electron
- Anthropic は MSIX パッケージを x64 および arm64 向けに提供しており、Intune・SCCM・Group Policy・PowerShell での企業展開に対応している。 – Deploy Claude Desktop for Windows
- Windows 11 上で Claude の Cowork 機能を含むインストーラーを実行したところ Developer Mode の有効化が求められたというユーザー報告がある。Chat のみの軽量版では不要という報告も同スレッドにある。 – Claude Windows 11 app requires developer mode to install? : r/ClaudeAI
- Sudo for Windows は 2024年2月8日に Windows 11 Insider Preview Build 26052 で初めて公開された。Microsoft は「ターミナルを管理者として開かずに昇格コマンドを実行できる手段」と説明しており、実装は Rust で書かれている。Windows 11 24H2 から正式版として提供されている。 – Introducing Sudo for Windows!
- sudo for Windows には3つの動作モードがある。forceNewWindow(新規ウィンドウ)のほか、disableInput(同ウィンドウでstdinを閉じて実行)と normal/inline(Linux・macOS と同様に同ウィンドウでインタラクティブに実行)がある。 – How to enable Sudo for Windows
- 公式アーキテクチャ概要では「コードとシェルコマンドの実行は、macOS では Apple Virtualization.framework、Windows では Hyper-V によるハイパーバイザーで隔離された専用の Linux VM 内で行われる」と説明されている。VM はネットワーク通信フィルタリング、syscall 制限、セッションごとのユーザー分離を持つ。 – Claude Cowork desktop architecture overview
- 公式ドキュメントには Virtual Machine Platform を有効化する PowerShell コマンドとして
Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName VirtualMachinePlatform -All -NoRestartが記載されている。管理者権限のないユーザーでも Claude はインストールできるが、Cowork は使えない。 – Deploy Claude Desktop for Windows - 公式ドキュメントには「Windows で初めて Code タブを開く際に Git for Windows が必要。インストール後にアプリを再起動すること」と記載されている。Git が未インストールの場合、Code タブのローカルセッションは開始できない。 – Desktop application – Claude Code
- 公式ページでは「スプレッドシートやフォーマット済みプレゼンテーションなどのプロフェッショナルなアウトプットを提供できる」と説明されており、並列ワークストリームの調整も可能。Pro・Max・Team・Enterprise の全有料プランで利用できる。 – Install Claude Desktop
- 公式アーキテクチャ概要では「エージェントループはデバイス上でネイティブに動作し、会話処理、接続フォルダの読み書き、Web 取得、ローカル MCP サーバーが含まれる。アクセスはアプリケーション層の権限システムで制御される」と説明されている。 – Claude Cowork desktop architecture overview
- 公式ドキュメントには「computer use has no sandbox between Claude and your applications. Claude interacts directly with your desktop, apps, and browser」と明記されている。アプリごとの許可制と、銀行・医療・個人情報を含むアプリへの不使用を推奨している。Pro・Max プランのみ利用可能で、Team・Enterprise プランでは現在利用できない。 – Let Claude use your computer in Cowork