ノートツールは「ウィキ型」と
「ブログ型」でアプローチが違う
(EvernoteとObsidianの違い)

「第2の脳」という言葉でObsidianが語られます。

同じ言葉で、Evernoteのキャッチコピーはずっと “Remember everything” でした1

名前は似ているのに、この2つで求められる作業はまったく違います。

ノートツールを変えるたびに「しっくりこない」と感じる場合、ツールの使い方より先に考えておくことがあります。
ナレッジベースには、根本的に異なる2つの方向性があります。

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1. ウィキ型とブログ型

1. ウィキ型とブログ型

ウィキ型(構造化重視)は、ノート同士の関係を管理します。
新しいノートを作るとき、既存のノートとの重複や位置づけを考えます。
リンクを張り、関連するノートを束ね、古い情報を更新する。
Wikipediaで項目同士が参照し合っているあのイメージです2

1. ウィキ型とブログ型

ブログ型(蓄積重視)は、情報を時系列で積み上げます。
どんどん追加していき、必要なときにキーワードで探す。
過去の記録を常に更新するより、その時点の考えとして保存する。
価値は「大量の記録が一箇所にある」ことと「検索できる」ことにあります。

この2つは作業の性質がかなり違います。

1. ウィキ型とブログ型

ウィキ型は庭を手入れする作業で、ブログ型は地層を積み重ねる作業です。
ウィキ型では情報は「現在の理解」に近づけて更新されます。
ブログ型では情報は「その時点の理解」として残ります。

1. ウィキ型とブログ型

どちらが正しいということはなく、どちらに快感を感じるかの違いです。
関係性を整えることが楽しい人はウィキ型が合います。
考えたことを次々に残すことが自然な人はブログ型が合います。

1.1. ツールをこの軸でプロットすると

主要なノートツールをこの2軸で見ると、ツールの得意・不得意がはっきりします。

1.1. ツールをこの軸でプロットすると
ツール傾向向いている使い方
Evernote / Google Keepブログ型寄り大量保存・あとで検索
Apple Notes / OneNoteブログ型寄り素早いメモ・フォルダ整理
Joplin / Readwiseブログ型寄りMarkdown保存・読書メモ
Notion中間(データベース型)構造化・チーム共有
Reflect / Logseqウィキ型寄りDaily Notes+リンク
Obsidian / Roam Researchウィキ型寄りリンクで育てる思考のネットワーク
1.1. ツールをこの軸でプロットすると

Evernoteは当時から “Remember everything” を前面に出していました。
Web Clipperで記事をどんどん保存し、あとで検索する設計です3

1.1. ツールをこの軸でプロットすると

Obsidianは公式に「自分だけのWikipediaを作る」と説明しています4

[[ノート名]] で内部リンクを書き、ノート同士が線でつながるグラフ(Graph view)を表示します。
つなぐ作業に対して快感を感じる人向けの道具です5

1.1. ツールをこの軸でプロットすると

Notionはどちらでもあるように見えますが、実態はデータベース型に近いです。
ページをリンクではなくデータベースの行として扱い、テーブル・ボード・カレンダーなど複数の見方を持ちます。
ウィキ型でもブログ型でもなく、3つ目の方向といえます6

1.1. ツールをこの軸でプロットすると

Google Keepは、メモツールです。

2. 「第2の脳」という言葉が紛らわしい理由

2. 「第2の脳」という言葉が紛らわしい理由

「第2の脳」には、少なくとも2種類の意味があります7

ひとつは「全部覚えておくための脳」です。
領収書、Webクリップ、PDF、メモを全部入れておく。
これはEvernote的な発想です。

もうひとつは「よく使う考えをつなぎ直すための脳」です。
少数のノートを選び、関係づけ、見直し、配置し直す。
これはObsidian的な発想です。

どちらも「第2の脳」と呼ばれているため、Obsidianを使い始めたときにEvernoteの発想で全記録をノード化しようとして、リンク作業に疲れてやめてしまうことがあります。
ウィキ型の道具をブログ型の感覚で使っているので、合わないのは当然です。

2.1. AIエージェントが補う部分

2.1. AIエージェントが補う部分

Obsidian的なウィキ型に対してよく聞く悩みは「新しいノートを追加するとき、既存のノートとの関係を全件確認すると億劫になる」という問題です。
ノートが増えるほど確認コストが上がります。

ここでAIエージェント(Claude CoworkやCodexのようなローカルファイルに作用できるAI)を組み合わせると、両方の弱点を部分的に補えます8

2.1. AIエージェントが補う部分

ブログ型の人は書く勢いを保ちながら、AIに「この新規ノートと関係しそうな既存ノートを挙げて」「重複している部分を指摘して」をあとから任せられます。

ウィキ型の人は情報収集をAIに任せ、AIが整理したものから自分が取捨選択だけをする、という分担ができます。

ただし、AIに本リンクを全自動で作らせると過剰に結びつけたり、古い理解と新しい理解を混ぜたりします。
AIが出すのは候補で、採用するかを人間が判断する、という役割分担が実用的です。

2.1. AIエージェントが補う部分

3. ツールより先に自分の型を知る

3. ツールより先に自分の型を知る

ノートツールを選ぶときに、機能の多さより先に確認しておきたいことがあります。

自分はノートを「増やす」ほうに快感を感じるか、「育てる」ほうに快感を感じるか。
その答えに合ったツールを選べば、乗り換えの回数は減ります。

ブログ型の人が「育てること」を強制するツールを使うと、作業が億劫になります。
ウィキ型の人が「入れるだけ」のツールを使うと、整理できないストレスが残ります。

両方のニーズがある場合は、分担するのが現実的です。
ブログは蓄積と検索の場所として使い、Obsidian的なものはそこから抽出した「現在の判断軸」「よく参照する概念」だけを置く小さな補助として使う、という組み合わせです。
ツールを1つに統一しようとしないほうが、続きやすいです。

  1. Evernoteの現在の公式サイトには “Remember everything and tackle any project with your notes, tasks, and schedule all in one place.” とある。2007年のサービス開始以来続くタグラインで、2023年のBending Spoons社による買収後も継続している。v11では “level up your second brain” という表現も加えられた – Best Note Taking App – Organize Your Notes with Evernote
  2. Obsidianにはバックリンク(Backlinks)という機能があり、あるノートを参照しているほかのノートを逆引きで表示できる。さらに「未リンクの言及(Unlinked mentions)」では、リンクになっていなくても同じ名前が本文中に現れる箇所を検出できる。どちらもウィキ型でノート同士のつながりを後から補強する補助機能として公式ヘルプで説明されている – Backlinks – Obsidian Help
  3. Evernote Web Clipperはブラウザから記事全文・スクリーンショット・簡易記事・ブックマークの4形式でノートに保存できるブラウザ拡張機能。「インターネット上のあらゆるものをキャプチャできる」という設計が、ブログ型的な使われ方の広がりを支えた – Web Clipper – Evernote
  4. Obsidianの公式サイトには “Invent your own personal Wikipedia” という表現がある。アイデア・人・場所・書籍などを何でもリンクしてネットワークを構築する、という使い方が想定されている – Obsidian – Sharpen your thinking
  5. [[ノート名]]形式(Wikilink)はObsidian独自の内部リンク記法。Markdown形式 [表示名](ファイル名.md) に切り替えることもできる。Graph viewでは参照されるノートほど円が大きく表示され、ノード同士をゴムひものように引き合わせるForce設定で配置が決まる。同様に “A note-taking tool for networked thought(ネットワーク化された思考のためのノートツール)” を標榜するRoam Researchも類似のリンク構造を採用している – Internal links – Obsidian Help
  6. Notionの公式ヘルプでは「データベースの各アイテムはNotionページ」と説明されており、テーブル・ボード・カレンダー・ギャラリー・リストなど複数のビューで同じデータを切り替えて表示できる。2023年にはWiki機能が追加され、ページのOwner設定と更新期限(Verification)の管理もできるようになった – Intro to databases – Notion Help Center
  7. 「第2の脳(Second Brain)」という概念は生産性研究家のTiago Forteが提唱し、2022年出版の著書 “Building a Second Brain” で体系化された。「価値あるアイデアを指先に置いておけば、学んだことを思い出すために苦労する必要はなく、生物としての脳は想像・創造・現在に集中できる」と説明されている。EvernoteはForteが第2の脳として使っていたツールとして広く紹介されてきた – Building a Second Brain: The Definitive Introductory Guide
  8. Claude Coworkは2026年1月にAnthropicがリリースしたデスクトップエージェント。ユーザーが指定したフォルダ内のファイルを読み書きし、多段階のタスクを自律的に完了する。Claude Codeのエージェント技術をノンテクニカルなナレッジワーカー向けに展開したもので、”ゴールを定義すれば、あとはCoworkが達成方法を考える” という設計になっている – Claude Cowork | Anthropic