電話番号の
「151,62」のカンマは何者か
(ポストダイヤル文字列)

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1. 発信電話番号にカンマがある?

「スマホからドコモに問い合わせようとアプリをたどったら、発信先に「151,62」と表示された。カンマ入りの電話番号なんて見たことがないし、変なところにかけてしまったのか心配」という相談を受けました。

この「151,62」という発信は、不審なものではありません。
これは、1つの電話番号ではなく、カンマは発信を区切る記号です。
151に電話したあと少し待ち、続けて6と2を自動で送るという動作を、一行にまとめた表記です1

この小さなカンマには、プッシュ式電話の仕組みと、日本の電話の歴史が詰まっています。

1.1. カンマは数字ではなく「待て」の指示

iPhoneでは、電話番号の中のカンマは「ポーズ(pause:発信後に約2秒待つこと)」を意味します。

番号入力中に「*」を長押しするとカンマが現れ、これで2秒の一時停止を挟めます2

ちなみに、カンマ2つなら待ち時間も倍になります。
「03-xxxx-xxxx,,4567」は、2秒と2秒でおよそ4秒待ってから4567を送る書き方です。

1.2. ガイダンス番号の導線

つまり「151,62」が表す動作はこうです。

  • まず151に発信します。
  • カンマのぶんだけ待ちます。
  • そのあと音声ガイダンス用に6、2の順で送信します。

音声案内の中で「6」を押し、続いて「2」を押す操作を、最初の発信にまとめて入れているだけなのです。

ドコモ公式の案内ページでも、この発信先は「151番(ガイダンス番号62)」と表記され、進む先は「お問い合わせカテゴリが見つからない場合」の総合窓口です。
発信時に短いプッシュ音が流れても、正常につながっているので待つよう書かれています3

つまり、これは怪しい番号への誤発信ではなく、ドコモの問い合わせ導線をそのまま一行にした発信でした。

1.3. 表記は機種によって違いがある

仕組みは共通でも、画面に出る記号は端末ごとに違います。

iPhoneは、ポーズをカンマ、確認してから送る「ウェイト(wait)」をセミコロンで扱います。
Androidも考え方は同じで、開発者向け資料では「PAUSE」が文字コード44すなわちカンマ、「WAIT」が59すなわちセミコロンと定義されています4
ウェイトは、画面で確認してから後続番号を手動で送る点がポーズと異なります。

2. プッシュ回線の数字を送る仕組み(DTMF)

発信したあと少し待って追加の番号を送るという動き自体は、プッシュホンの登場以来ずっと続いています。

ボタンを押すと流れる「ピポパ」という音は、「DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency:押した数字を低い音と高い音の組み合わせで送る方式)」です。
「プッシュ回線」は、ダイヤルした数字をこの音の信号で交換機へ伝えます5

この仕組みの土台は、1969年ごろにさかのぼります。

日本では同年に「プッシュホン600P」が量産を始めました6
ボタンで数字を音として送れる電話機で、通話だけでなくコンピュータとのやり取りにも使えました。

音声ガイダンスが「○○の方は1番」と案内し、こちらの「1」を音として受け取れるのは、このDTMF方式があるからです。

2.1. ポストダイヤル文字列

ポーズより後ろの番号列は「post-dial string(ポストダイヤル文字列:発信後に送る番号の並び)」と呼ばれます。

2000年代の携帯電話では、後続番号を送る操作はカンマではなくPやTで案内されていました。
つながった後に後続番号を送る「P(ポーズ)」と、一定時間後に送る「T(タイマー)」で同じことをしていました。

たとえば、ポーズのPは留守番電話の操作やチケット予約に使い、つながった後にP以降の番号を送ると説明されています7
タイマーのTは外線番号に続けて内線番号を送る用途でした。

ただし、その後、徐々に「自動ポーズ,」と「手動ポーズ;」という表記が一般的になります。
ソフトバンクの端末ではダイヤルメニューには「自動ポーズ,」と「手動ポーズ;」が並び、auの端末では番号のあとに自動ポーズのカンマを入れてプッシュ番号を送る操作が説明されています8

2.2. tel URIでのポーズ・ウェイト表記

スマートフォンの時代には、iPhoneのソフトポーズはカンマ、Androidのポーズもカンマという形で、各社の表記がカンマに寄っていきました。

「151,62」というカンマ表記はスマホ以降に広まったもので、昔の端末でいえば「151 P 62」や「151 T 62」に近い発想です。

電話番号の国際的な表記規約である「tel URI(RFC 3966で定義された電話番号の書き方)」にも、発信時に送る一連の操作という考え方が含まれています9

「151,62」のうち、151が相手先、62がpost-dial stringにあたります。

3. カンマの便利な使い方

便利なのは、代表番号にかけて内線や音声メニューを自動で選びたい場面です。

「03-1234-5678,123」は代表番号のあと内線123を自動入力する書き方で、「0120-xxx-xxx,2」はコールセンターで「2番」のメニューを自動選択する書き方になります。
連絡先にこの形で登録しておけば、毎回ガイダンスを聞いてボタンを押す手間が省けます。

ただし、カンマ以降は自動で送信されてしまいます。
ガイダンスで入力するとしても、ネットワーク暗証番号、ワンタイムパスワード、クレジットカード番号をカンマ付きで発信するのは避けたほうがよいです。
通話がつながった後に本人確認として案内されるもので、発信文字列に書き込むものではありません10
信頼できる問い合わせメニューや内線番号に限って使うのが安全です。

  1. ドコモの案内ページには、この発信先がQRコード付きで「151番(ガイダンス番号62)」と明記されており、進む先は「お問い合わせカテゴリが見つからない場合」の総合窓口になっている。 – お問い合せカテゴリが見つからない場合 | ドコモインフォメーションセンターへのお問い合わせ
  2. Appleの公式ヘルプでは、ダイヤル中に「*」を長押しするとカンマが現れ、2秒間の一時停止を入力できると説明されている。 – iPhoneで電話をかける – Apple サポート (日本)
  3. 同ページには「短いガイダンス音やプッシュ音が流れますが、正常にお繋ぎできております。そのままお待ちください」とあり、あわせて発信者番号通知のみの受付で非通知だと受け付けられないと案内されている。 – お問い合せカテゴリが見つからない場合 | NTTドコモ
  4. Androidの開発者資料PhoneNumberUtilsでは、PAUSEの文字コードが44すなわちカンマ、WAITが59すなわちセミコロンと定義され、これ以降はpost-dial文字列として扱われる。 – PhoneNumberUtils | API reference | Android Developers
  5. NTT西日本は、プッシュ回線を「ダイヤルした数字をピポパという音の信号で送る種類の電話回線」と説明している。 – プッシュ回線|その他オプションサービス|NTT西日本
  6. NTT技術史料館の展示記録に「コンピュータ通信もできるプッシュホン600P(1969年量産開始)」と記されており、ボタン操作で数字を音として送れる電話機だった。 – ユーザ機器の技術(宅内) | NTT技術史料館
  7. ドコモF706iの取扱説明書では、ポーズPはつながったあとにP以降の番号を送る用途で、留守番電話操作やチケット予約などに使うと説明されている。 – 取扱説明書 F706i(NTTドコモ)
  8. auのGRATINAの取扱説明書にも、電話番号のあとに自動ポーズのカンマを入れてプッシュ番号を送信する操作が記載されている。 – GRATINA 取扱説明書(au)
  9. RFC 3966は電話番号を表すtel URIを定義した規格で、発信後に送るポーズやウェイトを含む番号列を扱う仕組みが規定されている。 – RFC 3966: The tel URI for Telephone Numbers
  10. ドコモの問い合わせ窓口では、ネットワーク暗証番号などの重要情報は通話が接続したあとの本人確認で確認される流れになっている。 – その他 | お問い合わせ | お客さまサポート | NTTドコモ