1. 「子ども向け」とは?
YouTubeに動画を上げるとき、公開設定の途中で「この動画は子ども向けですか」と聞かれました1。

地域文化の紹介する動画で、子どもが見ても問題ない。
そう思うと「はい」を選びたくなります。
ところが一般向けの動画でこれを選ぶと、本来受けられたはずの機能をいくつも自分から手放すことになります。

理由は一つです。
「子ども向け」は、健全さや安全性を示すフラグではありません。
1.1. 「子ども向けではない」と「成人向け」は別の軸
混乱が起きるのは、別々の二つの軸が一つに見えてしまうからです。

一つ目の軸は、「一般向け」と「成人向け」の対比です。
性的表現、強い暴力、危険行為など、18歳未満に見せるべきでない内容かどうかを分けます。
これに該当する動画には、年齢制限がかかり、ログアウト中や18歳未満のユーザーには表示されなくなります2。
二つ目の軸は、「一般向け」と「子ども向け」の対比です。
こちらは、子ども本人を主な視聴者として作ったかどうかを分けます。
この二つは独立しています。
YouTubeのヘルプにも、子ども向けの設定が動画の年齢制限に影響することはない、と明記されています3。
つまり、「いいえ、子ども向けではありません」は「成人向け」という意味ではありません。
「子ども専用として作った動画ではありません」という意味です。
1.2. 「子ども向け」は視聴層が未就学児向け
YouTubeの動画設定で「子ども向け」にするかどうかの判断の物差しは、「子ども本人を主な視聴者として作ったか」です。

「子どもに見せても大丈夫か」ではありません。
たとえば、郷土玩具や地域文化の紹介は、主な視聴者は工芸や文化に関心のある一般の大人や観光客です。
子どもが見ても問題ない内容ですが、「いいえ、子ども向けではありません」が自然な選択になります。
一方、ひらがなのうた、ぬいぐるみを使った幼児向けの言葉遊び、未就学児向けの教育動画は、子ども本人が視聴することを目的にしています4。
このような場合が「はい、子ども向けです」の想定する動画です。

迷ったときは、誰のために作ったかが基準です。
一般向けの動画を「子ども向け」にして交流と収益の手段を手放す、という事故は避けられます。
2. 「子ども向け」にすると機能制限がある
「子ども向け」かどうかを選ぶ必要があるのは、米国の「COPPA(Children’s Online Privacy Protection Act:児童オンラインプライバシー保護法)」などの法規制があるからです5。
これは、子ども向けの動画では、ユーザーの視聴履歴などの個人情報の収集が制限されます。
また、子ども向けの動画では、「連続視聴を促すような機能」も制限されます。
そのため、YouTubeでは、投稿者は自分の所在地に関係なく、動画が子ども向けかどうかを申告する義務があります。
2.1. 連続視聴を促す機能と制限
動画投稿者にとっては、「連続視聴を促す機能」が利用できないのは、デメリットにもなります。
一般向けの動画を「子ども向け」に設定すると、視聴を続けさせるか、もう一度開かせる働きを持つ機能がまとめて無効になります6。
- コメント・ライブチャット:動画への反応・交流
- 再生リスト・後で見る:後で再生できる
- ミニプレーヤー:視聴しながら次の動画を探せる
- 通知:おすすめ動画を呼びかける
パーソナライズド広告も無効になり、収益面に響きます。
チャンネルメンバーシップやSuper Chat、Super Stickersといった投げ銭系の機能も使えなくなります。
つまり、一般向けの動画では認められる収益方法を「子ども向け」では無効にすることになります。
これらの制限は「中毒性の抑制」という意味合いもありますが、主な理由は、子ども向けコンテンツでのデータ収集と利用を法律に沿って制限する、ということです。
というのも、コメント・通知・パーソナライズド広告などの機能が、視聴者データの利用を前提にしているからで、結果として、連続視聴を促す機能が無効になるわけです。
ちなみに、「子ども向け」に設定したからといって、YouTubeの姉妹アプリである「YouTube Kids」に自動で掲載される、というわけでもありません7。
3. 「選ばないと規制された」は何を指すのか
たまに「子ども向けを選ばないと規制がかかる?」という相談があります。
一つは、向きの取り違えです。
「子ども向け」に設定したことで生じた制限を、「子ども向けにしないと制限される」と逆に記憶していたパターンです。
コメントや通知が消えるのは、子ども向けに設定したからこそ起きます。
もう一つは、自分で「子ども向けではない」を選んだのに、YouTube側が動画内容を分析し自動で「子ども向け」と判定したケースです。
それにより、コメントなどの機能を制限されるケースがあります8。
また、年齢制限との違いも紛らわしいです。
「年齢制限」は内容の不適切さに対する別の仕組みで、視聴者層の設定とは独立して判断されます。
- 視聴者層の申告は動画ごとに必須で、YouTube Studioからチャンネル全体に一括設定することもできる。 – チャンネルまたは動画の視聴者層を設定する – YouTube ヘルプ
- 年齢制限は投稿者が設定しなくても、AIがタイトルや説明文などから内容を検出して自動的に付与する場合がある。 – 子どもにYouTubeを見せるなら「制限付きモード」をオン推奨 – ASCII.jp
- 公式ヘルプは「『子ども向け』の設定が動画の年齢制限に影響することはありません」と明記している。 – 年齢制限のあるコンテンツ – YouTube ヘルプ
- YouTubeは子ども向けか否かの判定で、動画のテーマ、子ども向けのキャラクターやおもちゃ、子ども向けの歌・物語・詩、子どもが理解しやすい言葉づかいといった要素を考慮するとしている。 – コンテンツが「子ども向け」かどうかを判断する – YouTube ヘルプ
- COPPAは13歳未満を「子ども」と定義する法律で、2019年にFTCとニューヨーク州はGoogleとYouTubeに対し、子ども向けチャンネルの視聴者から無断で個人情報を集めたとして総額1億7000万ドルの和解金を科した。視聴者層の申告義務はこの和解を受けて整備された。 – $170 million FTC-NY YouTube settlement offers COPPA compliance tips – Federal Trade Commission
- 無効化される機能はコメントと通知のほか、カード、終了画面、ミニプレーヤー再生、再生リストや「後で見る」への保存、パーソナライズド広告、ライブチャット、Super Chat・Super Stickers、チャンネルメンバーシップなど広範に及ぶ。 – 「子ども向けに制作された」コンテンツの視聴 – YouTube ヘルプ
- YouTube Kidsへ表示されるかどうかは別のポリシーと審査で決まり、「子ども向け」に設定しただけで自動的に掲載されるわけではない。 – 「子ども向け」に関するよくある質問 – YouTube ヘルプ
- 自動判定で子ども向けに変更されると動画に「『子ども向け』に設定されました」と表示され、投稿者は自分で元に戻せず、誤りと思われる場合は再審査を請求する必要がある。 – チャンネルまたは動画の視聴者層を設定する – YouTube ヘルプ