- AIに記事を書かせると、自分では使わない言い回しに違和感が残ります。
Claude Fable 5ではそれが驚くほど減りましたが、普段使いのモデルでも再現したいと考えました。 - 前回、Fable自身に文体のスキルを作らせたら、「主張が強すぎる」ものになってしまいました。
- 今回は方法を変えて、公開済みの記事を見本として読ませ、AI生成のままの記事との差分を抽出させました。
- 出来上がったプロンプトの半分は、書き方の指示ではなく禁止リストでした。
- https://app.chiilabo.jp/data-files/chiilabo-article-prompt.md
- https://app.chiilabo.jp/data-files/chiilabo-article.skill


1. 前回のスキルは「主張が強すぎた」

AIに文章をまとめさせると、内容は合っているのに、自分では使わない言葉遣いが混ざります。
ある程度はしょうがないと思っていました。
ところが先日、Claude Fable 5に記事を書かせたら、かなり読みやすくなっていてびっくりしました1。
この感覚を、Claude Sonnetのような普段使いのモデルでも再現できないか2。
以前、Claude OpusをプロンプトでFableに近づけられるか試したことがあります3。
Fable自身に、自分とOpusの回答を読み比べさせて、差分をスキルとして書かせる方法でした4。
そのスキルは、たしかに回答の踏み込みを増やしました。
ただ、読み返すと意図とズレている。
どの回答も断定が増え、主張が強すぎる印象になったのです。
Fableの良さは、言うべきときに言い切る力点の置き方にありました。
それをルールにすると「常に言い切れ」に変換されてしまう。
判断ごと渡したつもりが、判断の結果だけが増幅された形です。
2. 今回は、ゴールの記事そのものを読ませた

文体でも同じ失敗をしそうだと思いました。
「私らしく書いて」とモデルの解釈に任せるのではなく、完成形を見せる。
そこから逆算させることにしました。
2.1. 理想の記事と、手つかずのAI記事を並べる

用意したのは二種類の記事です。
ひとつは、自分で書いたか、納得いくまで手を入れた記事を5本。
もうひとつは、AIに書かせたまま手が回っていない記事です。
Claudeに両方を読ませて、トーン・リズム・言葉選びの差分を抽出させました。
記事の構成よりも文体の再現を優先する、というゴールも先に明示しています。
面白いのは、自分では説明できない癖が、差分としては具体的に出てくることです。
ですます調の中に体言止めの短文が挟まる。
段落の頭に疑問文を置いて、自分で答える。
「怒られます」のような口語がたまに混ざる。
言われてみればたしかにそう書いている、という指摘が並びました。
2.2. 差分は「こう書け」より「これを書くな」に出た

一方、AI生成のままの記事側から抽出されたのは、禁止リストでした。
「まず基本の確認から」というメタ宣言。
「象徴的なのが」「〜という光景です」という評論調の決め文句。
段落ごとに主張、根拠、まとめがきれいに完結する均質なリズム5。
そして、一人称の体験がどこにもないこと。
結果として、プロンプトの半分近くが「使わない表現」の列挙になりました。
自分の文体を定義するより、AIらしさを消す方が、記述としてずっと具体的になるわけです。
あわせて、実際の記事からの短い抜粋を錨として埋め込みました6。
リズムのような言語化しにくい部分は、ルールで書くより引用を見せる方が伝わります。
3. それでも一発では安定しなかった

このプロンプトで書かせると、文体はかなり近づきました。
ただ、回すたびに別の問題が見えてきます。
ここからは、修正のたびにルールを足していく地道な工程でした。
3.1. 見出し構成は、条件付きの指示では揺れる

最初のプロンプトには「分量が必要なら小見出しで分ける」と書いていました。
この指示は、ほぼ機能しません。
必要かどうかの判断がモデル任せになるからです。
生成された記事は、大見出しが5つ並んで小見出しがゼロ。
各節が2〜3段落で終わってしまい、渡した資料に対して薄い記事になりました。
資料にある経緯や比較を、短くまとめて捨ててしまうのです。
そこで基準を機械的にしました。
大見出しは記事全体で3〜4個。
中身が4段落を超えたら小見出しで分割。
さらに、本文を書く前に見出し案と各節の予定段落数を出させて、そこで一度確認を挟む工程に変えました7。
構成のズレは、書き上がった本文を直すより、書き始める前に直す方が速い。
3.2. 冗長さの正体は、段落末尾の再掲文だった

構成が安定すると、今度は文章の冗長さが気になりました。
読み返してみると、原因は特定のパターンに絞れます。
段落や節の最後に、「つまり〜なのです」「〜というわけです」と、直前の内容を抽象的に言い換える文が付くのです。
同じ主張が、本文で一度、締めでもう一度、ときには見出しでも繰り返される。
記事全体の構成からAIっぽさは消えたのに、段落のレベルには「主張、根拠、まとめ」の癖が残っていた形です。
対策の判定基準は、「段落の最終文が新しい情報を含むか」にしました。
「〜わけです」という語尾そのものは自分も使うので、語尾を禁止すると文体が硬くなります。
禁じるのは、同じ内容の再掲だけ。
4. ゴールを見せることが、なぜ効いたのか

前回と今回の違いは、モデルに渡した素材にあります。
前回はモデル自身の判断を言語化させ、今回は完成品との差分を抽出させました。
判断をルール化すると、加減が失われます。
「必要なときに言い切る」が「言い切る」になる。
見本との差分なら、最初から具体的な表現のレベルで出てきます。
この決め文句を使わない、段落末尾で繰り返さない。
加減の問題が、消すか残すかの問題に置き換わります。
もちろん、これで文体が完全に再現できたわけではありません。
生成のたびに気になる箇所を見つけてはルールを足す作業が続いていて、正直、キリがない面もあります8。
ただ、手直しの量は確実に減りました。
自分の文体は、自分では定義できない。
でも、見本と違うものを見せられれば、違いは指摘できる。
教える側が言葉にできないことを、比較から引き出させる。
プロンプトを書いているというより、添削の目を作っている感覚に近いのかもしれません。
- Claude Fable 5は2026年6月に公開された、Mythosクラスの能力を持つ初の一般提供モデルです。米政府の輸出規制による一時停止を経て、7月1日から提供が再開されています。 – Redeploying Claude Fable 5 – Anthropic
- Claude Sonnetは、最上位のFableやOpusに対して軽量・高速な位置づけのモデルです。2026年7月2日には新版のClaude Sonnet 5がリリースされました。 – Claude Fable 5とは?使い方や性能・料金・Mythos 5との違い | JAPAN AI ラボ
- このときの経緯は、以前の記事にまとめています。 – Claude OpusをプロンプトでCllaude Fableのようにできるか?(埋まる差と埋まらない差)
- スキル(Agent Skills)は、SKILL.mdという指示書を中心にしたフォルダをAIが必要に応じて読み込む仕組みです。Anthropicが提唱し、オープン標準として公開されています。 – Equipping agents for the real world with Agent Skills – Anthropic
- 指針を与えないとAIモデルが汎用的な定型パターンに収束する傾向は、Anthropicのプロンプトエンジニアリング文書でも「AI slop」という通称とともに言及されています。 – Prompting best practices – Claude API Docs
- 少数の例を見せて出力の形式やトーンを誘導する手法はfew-shotまたはmultishotプロンプティングと呼ばれます。Anthropicの公式ドキュメントでは、最も確実な手法の一つとして3〜5例の提示が推奨されています。 – Prompting best practices – Claude API Docs
- 複雑なタスクを段階に分けて途中で確認を挟む進め方は、プロンプトチェーンと呼ばれる定番の手法です。Anthropicのドキュメントにも各手法の一つとして整理されています。 – Prompt engineering overview – Claude Platform Docs
- Anthropicのコンテキストエンジニアリング解説でも、エッジケースのルールを羅列するより、望ましい振る舞いを示す規範的な例のセットを厳選することが推奨されています。 – Effective context engineering for AI agents – Anthropic