「インターネットラジオ」はひとつではない
(radiko・ポッドキャスト・音声配信の見
取り図)

radikoに、ラジオ局ではない番組が並んでいる

インターネットでラジオを聴くというと、radikoが思い浮かびます。
でも実際にアプリを開いてみると、そこにはラジオ局の放送だけでなく、ポッドキャストという項目がある。
ポッドキャストはYouTubeにもSpotifyにもあり、専門のアプリはむしろ減っているのに、いろんな音声配信アプリの中で共有される存在になっています。
これはどういうことなのか、というところから書いてみます。

  • radikoには、今の放送を聞くライブ配信、聞き逃しを補うタイムフリー、時間に縛られないポッドキャストという三つの層があります
  • radikoの音声は電波の受信ではなく、放送局が管理するインターネット配信です
  • ポッドキャストという言葉は、もともとiPodと放送を組み合わせたもので、専用アプリに閉じない設計として広まりました
  • 今は専門アプリが減り、YouTubeやSpotifyのような大きなプラットフォームの中でどう見つけてもらうかが問われる時代になっています

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1. radikoに、ラジオ局ではない番組が並んでいる

radikoは、放送局のラジオをスマホで聞くためのアプリという印象が強いです。
実際、多くの人はそのイメージで使っています。
ところがアプリを開くと、ライブ放送のほかに「ポッドキャスト」というアイコンがあり、ジャンル別の一覧や番組フォローができるようになっている1
放送局の番組とは別に、時間に縛られない音声番組が同じアプリの中に並んでいるわけです。

では、この二つは何が違うのか。
ラジオ局の番組をあとから聞く仕組みと、最初から保存を前提に作られた番組とでは、そもそもの成り立ちが違います。
同じ「音声を選んで聞く」という体験に見えて、裏側の設計思想はまったく別物なのです。

1.1. 聞き逃しと、はじめから残す前提の違い

radikoのタイムフリーは、放送された番組を過去一週間ほど、あとから聞ける機能です2
あくまで主役は放送そのもので、タイムフリーはその補助として存在しています。
放送時間に間に合わなかった人のための、聞き逃しの受け皿という位置づけです。

一方のポッドキャストは、放送時間という前提そのものを持ちません。
ラジオ局が過去の番組を編集して配信しているものもあれば、著名人や専門家が企画した番組、個人が気軽に発信している番組もあります。
放送のアーカイブではなく、最初から「残して配る」ことを目的に作られた音声コンテンツです3

たとえるなら、テレビ番組の見逃し配信と、NetflixやYouTubeのオリジナル番組ぐらいの違いがある。
前者はあくまで放送の延長ですが、後者は放送という枠組みを最初から必要としていません。
radikoの中に両方が同居しているのは、この二つの成り立ちの違いをそのまま反映した結果と言えそうです。

2. インターネットラジオは、電波を受信しているわけではない

ここで一つ、意外と誤解されている点があります。
radikoで聞いている音声は、スマホがラジオの電波を直接受信しているわけではありません。
インターネット経由のストリーミング配信です4
Wi-Fiやモバイル通信が届かない場所では、そもそも音が出ません。

普通のラジオ受信機であれば、電波さえ届いていれば通信環境がなくても聞けます。
でもradikoは違う。
通信が必要という制約は、電波受信とは根本的に別の仕組みで動いていることの証拠でもあります。

2.1. IPサイマル配信という仕組み

この仕組みは、専門的にはIPサイマルラジオと呼ばれています。
IPはインターネット通信の仕組みを指す言葉で、サイマルは同時のという意味です。
つまり、地上波で流れているラジオ番組を、ほぼ同じ時間にインターネットでも配信する仕組みということになります5

インターネットラジオという括り自体は、もっと古くからありました。
最初期には音声ファイルをダウンロードして聞く形もあったようですが、1995年ごろにRealAudioのような技術が登場し、受信しながら聞くストリーミングが現実的になっていきます6
radikoも、2010年ごろにこの流れの中で始まったサービスです7
放送局の電波をそのままインターネットに乗せる、という発想自体は、当時からすでに存在していたわけです。

2.2. 番組を作るのは放送局、届けるのはradiko

もう一つ、誤解されがちな点があります。
radikoが放送中のラジオ電波を勝手に拾って変換し、配信しているわけではないということです。
番組を作っているのはあくまで各放送局で、radikoはそれをインターネットで届けるための共通の窓口という立場にあります8

配信するかどうかを決めているのも放送局側です。
音楽の著作権や出演者との契約、スポーツ中継の放映権、地域制限といった事情によって、通常のラジオ放送とradiko配信の内容が完全には一致しないことがあります。
radikoは番組の作り手ではなく、届け方を担うプラットフォームなのです。

3. ポッドキャストは、専用アプリの外に広がっていった

ポッドキャストという言葉は、もともとiPodとbroadcastを組み合わせた造語です。
2004年ごろ、iPodや音声ソフト、ブログによって広がりつつあった新しい音声配信のあり方を説明するために使われ始めたとされています9
当時のイメージは、インターネットで配信された音声番組をパソコンに取り込み、iPodに入れて聞くというものでした。

3.1. iPodに取り込んで聞く時代があった

この仕組みを支えていたのがRSSという配信の仕組みです。
ブログの新着記事が自動的に届くのと同じ考え方で、番組の新着回が自動的に配信される10
ここが重要で、ポッドキャストは最初から、特定のアプリに閉じない設計として生まれていました。
番組そのものはRSSという開かれた形式で公開され、どのアプリで受け取るかは利用者の自由だったわけです。

だからこそ、当時は専用のポッドキャストアプリがいくつも存在していました。
番組を購読して、新着回を自動で受け取り、好きな端末に同期する。
この体験のために作られた場所が、たしかにありました。

3.2. iTunesにあった、もうひとつのインターネットラジオ

紛らわしいのですが、昔のiTunesには「Internet Radio」という別の項目もありました。
こちらはポッドキャストとは違い、番組を購読して回ごとに聞くものではなく、世界中のラジオ局やネット専業局が流している音声ストリームを、ジャンル別に選んで聞くという機能です11
radikoよりも、世界中のネットラジオ局を集めたディレクトリに近い性格でした。

似た名前のサービスに、2013年ごろに始まった「iTunes Radio」というものもありますが、これは音楽推薦型の別のサービスで12、Internet Radioの一覧とはまた別物です。
名前が似ている割に中身がまったく違うので、当時混同していた人も多かったのではないかと思います。

4. 自由に配れることと、見つけてもらえることは別の話

ポッドキャスト専用アプリは、今ではかなり数を減らしました。
Google Podcastsのようなサービスも終了し、利用はYouTube Musicのような大きなプラットフォームへ移っています13
RSSという開かれた仕組みは今も生きていますが、それだけでは見つけてもらいにくい時代になった。

昔は、どのアプリでも聞けることが自由さの証でした。
今は、どこで見つけてもらえるかのほうが重要になっています。
自由に配れることと、人に見つけてもらいやすいことは、じつは別の話なのです。

4.1. YouTubeは見るもの、ポッドキャストは聞くもの

ポッドキャストとYouTubeの違いを聞かれることもあります。
YouTubeは基本的に見るメディアで、ポッドキャストは基本的に聞くメディア。
YouTubeは映像や字幕、コメント、おすすめ動画まで含めて楽しむ設計になっていますが、ポッドキャストは音声だけで成り立つので、家事をしながら、歩きながらでも聞きやすい。

画面に張りつかなくてよいというのは、地味なようでいて大きな違いです。
YouTubeより直接興味のない話題にも、気軽に触れられる余地があります。
最近はYouTubeにもポッドキャスト風の番組があり、Spotifyにも動画付きのポッドキャストがあるので、境界は少しずつ曖昧にはなっていますが、基本の性格としてはこの対比がまだ有効だと思います。

4.2. stand.fmのような、個人が閉じた場所で配信する形

もう一つ、stand.fmやVoicyのような音声配信プラットフォームもあります。
ポッドキャストとの大きな違いは、コンテンツがそのアプリの中に閉じていることです。
RSSで自由に配られるわけではなく、発信者をフォローして聞く、音声版のブログに近い性格を持っています14

放送局のアーカイブから、企画されたポッドキャスト、そして個人が手軽に発信する音声配信まで。
ちょうどテレビからYouTubeライブまでのグラデーションのように、音声にも作り込まれたものから手作り感のあるものまで幅があります。
どれが上ということではなく、自分に合う距離感の番組を選べることが、今のインターネットラジオの姿なのだと思います。

radikoを開いてポッドキャストのアイコンを見つけたときの小さな戸惑いが、こんなに広い話につながっているとは思いませんでした。
ラジオという言葉ひとつの中に、電波の歴史とインターネットの歴史が両方畳み込まれている。
次にアプリを開くとき、その層の厚みを少し意識してみたくなります。

  1. radiko公式サイトでは、スマートフォンやパソコン、スマートスピーカーでラジオやポッドキャストが聴ける無料のサービスと説明されています。 – ラジコとは | radiko(ラジコ)
  2. radikoの公式ガイドでは、タイムフリーは過去1週間以内に放送された番組を聴ける無料の機能と説明されています。 – 聴き逃したラジオ番組を聴ける「タイムフリー」【radiko使い方ガイド】
  3. radikoのポッドキャスト機能は2024年2月14日から段階的に公開され、従来のタイムフリーにあった聴取期限や配信期限がない点が特徴とされています。 – radiko、ポッドキャスト機能をリリース。聴取期限や配信期限なし/無料で全国から利用可能 – PHILE WEB
  4. Wikipediaのradiko項目では、都道府県域や広域で放送するラジオ局の番組をインターネット経由でほぼ同時にサイマル配信するインターネットラジオの一種と説明されています。 – radiko – Wikipedia
  5. IPサイマルラジオ協議会の2010年のプレスリリースでは、地上波ラジオ放送を同時に放送エリアに準じた地域へインターネットストリーミング配信するサイマルキャストサービスと定義されています。 – 「IPサイマルラジオ」実用化試験配信開始について
  6. RealNetworksの記録によると、RealAudioは1995年4月に登場し、ABCニュースやNPRなどが早い段階から採用したストリーミング配信技術とされています。 – 25 years of streaming – RealNetworks
  7. Wikipediaのradiko項目によると、radikoは2010年3月にサービスを開始した日本のIPサイマルラジオサービスです。 – radiko – Wikipedia
  8. 2010年11月のプレスリリースでは、IPサイマルラジオ協議会の会員各社が2010年12月1日に株式会社radikoを設立し、既存のサービスを引き継いで運営すると発表されています。 – 12月1日、株式会社radikoを設立
  9. Wikipediaのpodcast項目では、この語は2004年2月にThe Guardian紙のBen Hammersleyが記事の中で初めて使ったとされています。 – Podcast – Wikipedia
  10. 同項目では、Adam CurryとDave Winerが開発したiPodderというソフトが、RSSフィードから音声ファイルを自動でダウンロードしてiPodに転送する仕組みを実現したと説明されています。 – Podcast – Wikipedia
  11. Appleのサポートページでは、iTunesの「Internet Radio」からジャンルの三角マークを開いてラジオ局を選び、ダブルクリックで再生する操作方法が案内されています。 – Listen to internet radio in iTunes on PC – Apple Support
  12. 2013年の報道では、iTunes RadioはPandoraとほぼ同様の機能を持つ音楽ステーション型サービスとして、その年の秋から提供が始まったと伝えられています。 – Apple、無料の音楽ストリーミング「iTunes Radio」を発表、今秋から開始 – All Digital Music
  13. ITmedia NEWSの報道によると、YouTubeは2015年から提供してきたGoogle Podcastsアプリを2024年後半に終了し、YouTube MusicのPodcastタブへ機能を統合すると発表しました。 – Google Podcasts、2024年に終了へ YouTube Musicに統合 – ITmedia NEWS
  14. Google Playのアプリ説明では、stand.fmは誰でもどこにいてもスマホひとつで気軽に音声配信ができる音声配信プラットフォームアプリと紹介されています。 – stand.fm スタンドエフエム 音声配信プラットフォーム – Google Play のアプリ