YouTubeが1,
000万回で線を引いた理由を、
ショート収益の分け方から読む

  • 2027年2月1日からYouTubeパートナープログラムが変わります。既存の参加者も1月31日までにYouTube Studioで新しい利用規約に同意しないと、収益化機能が止まります。
  • 話題になっている参入基準の倍増は新規申請者だけの話です。既存チャンネルに効くのは、ショート収益の1,000万回下限とアクティブ判定の作り直しのほう。
  • ショートの収益は動画ごとではなく国ごとのプールを視聴シェアで割る仕組みです。下限を設けると、同じ金額が少ない人数に回ることになります。
  • 下限に届かないチャンネル向けには、ショッピングのタグ付けやブランド案件に対する特典プログラムが用意されます。

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1. 数セントの話から、1,000万回の線が引かれるまで

YouTube Studioを開いたら赤い帯が出ていました。 2027年1月31日までに更新された利用規約に同意してください、という案内です。 動画再生ページ、ショートフィード、課金型製品の3つのモジュールを順番に読んで、チェックを入れて、完了。

押す以外の選択肢は実質ありません。 気になったのは、なぜこのタイミングで、何を変えたいのかということでした。

発表は2026年8月10日です1。 同じ日に公開されたインタビュー動画で、クリエイター製品担当のVPがこう説明しています。 数千回しか視聴がない場合、その月の収益が数セントにしかならないケースがあった。 だから、視聴とエンゲージメントを生んでいるクリエイターに報いる設計にしたい2

言いたいことはわかります。 ただ、実際に引かれた線は過去90日間で1,000万回でした。 数千回と1,000万回のあいだには数千倍の開きがあります。 その中間、つまりバズらないけれど毎月それなりの金額を受け取っていた層について、説明はありません。

2. ショートの収益は「プール」を分け合っている

2.1. 国ごとに集めて、視聴シェアで割る

ここを理解しないと、下限の意味が見えてきません。

長尺動画の広告は、その動画に付いた広告の収入が、その動画のものになります。 ショートは違う。 ショートフィードに流れる広告の収入をいったん全部まとめて、国ごとにプールを作ります3

そのプールのうち、自分のショートの視聴回数が全体に占める割合の分だけが自分の取り分になります。 その45%がクリエイターに支払われる、という計算です4。 音楽コンテンツを含むショートの場合は、視聴回数が権利者との間で按分されてからカウントされます。

YouTube Premiumの分も同じ考え方です。 サブスクリプションの純収入からショートに帰属する分をプールにして、視聴シェアで割る。 今回拡大されるPremium Liteは、そのプールの割合が通常のPremiumより大きく設定されています5。 音楽が含まれないぶん、動画クリエイターに回る比率が高いわけです。

2.2. 下限を設けると、同じ金額が少ない人数に回る

プールを分け合う仕組みなので、参加者を減らせば一人あたりの取り分は増えます。 1,000万回の下限は、この分母をいじる操作です。

しかも、この下限だけは既存の参加者にも適用されます6。 判定は過去90日間の対象視聴回数で、規約の条文では「収益計算の対象となる月の前月15日を末日とする90日間」と定められていました。 月ごとにローリングで判定されるので、一度切れても回復すれば自動的に再開します。 再申請は要りません7

下回ってもパートナープログラムからは外れませんし、長尺動画の広告収入もメンバーシップもSuper Chatも影響を受けません。 止まるのはショートの分配だけ。

YouTubeは2027年に2026年より多くの金額をクリエイターに支払う予定だと言っています。 これは総額の話です。 総額が増えることと、受け取る人数が減ることは両立します8

3. 減らした分は、広告以外に振り替えられる

1,000万回に届かないチャンネルは切り捨て、ではないというのがYouTubeの説明です。 代わりに特典プログラムを導入する、と。

挙げられているのは3つです。 YouTubeショッピングのボーナス、ブランド案件に対するインセンティブ、トレンドを作ったり広げたりしたことへの上乗せ9。 インタビューでは、90日間投稿を続けたらボーナス、商品をいくつかタグ付けしたらさらにタグ付けを促すボーナス、といった例が語られていました。

どれも視聴回数ではなく、クリエイターが取った行動に対する支払いです。 そして3つのうち2つは、YouTubeがここ数年整備してきた商流につながっています。 ショッピングのタグ付けはStudioの中にありますし、ブランド案件はクリエイターパートナーシップという窓口に統合されました。

広告収入の分配を絞って、商品を売る側・ブランドと組む側に誘導する。 そう読める形になっています。

このインタビューでは、こうした特典の枠が約1年前から公表せずにテストされていたことも明かされました。 金額も参加条件も開始時期も、まだ出ていません。

4. 既存チャンネルに実際に効くのは、別の条項

4.1. 参入基準の倍増は、既存には及ばない

ニュースの見出しになっているのは、新規参加のハードルです。 過去365日で総再生時間8,000時間、またはショートの視聴回数が過去90日で2,000万回。 どちらもこれまでの倍です10

これは新しく申請するチャンネルだけに適用されます。 すでに参加しているチャンネルのステータスは変わりません。 チャンネル登録者500人から使える視聴者ファンディングやショッピングの条件も、据え置きです11

つまり、既存チャンネルにとって倍増の話は無関係で、全員に効くのはショートの1,000万回のほう。 この非対称が、報道を読んでいるとわかりにくくなっています。

4.2. アクティブ判定と、1月31日の期限

もう一つ、既存チャンネルに効く変更があります。 プログラムに残り続けるためのアクティブ判定です。

2027年2月1日以降は、過去365日の総再生時間1,000時間、過去90日のショート視聴回数100万回、または90日ごとに長尺2本かショート5本のアップロード。 このいずれかを満たしていればアクティブと見なされます12。 再生数が伸びなくても、投稿を続けていれば資格は維持できる。

基準を下回った場合も、90日の猶予期間が与えられるようになりました。 以前より緩くなった部分です。

そして、同意の期限。 期限までにモジュールに同意しないと、長尺動画の広告とPremium、ショートの広告とPremium、視聴者ファンディングが止まります13。 止まったあとで同意すれば再開しますが、その間の収益は戻ってきません。

課金型製品モジュールについては、少し性質が違います。 2023年より前にメンバーシップやSuper Chatを有効にした人が古い版の規約のままになっていたので、最新版に揃える手続きです。 参加要件も機能も分配率も変わりません。

5. 建前と、線の引かれ方

YouTubeは今回の更新を、エコシステムの成長に合わせた調整だと説明しています。 ショートの視聴が1日2,000億回を超え、参加クリエイターが300万人を超えた。 だから基準を引き上げる、と14

一方で、2025年12月の調査では、新規ユーザーのショートフィードの3分の1が中身の薄い量産コンテンツ、2割がAI生成のスロップに分類されたという報告もありました15。 質を上げたいという建前と、2,000万回・1,000万回という線が効く方向は、必ずしも一致しません。 数を稼ぐことに最適化された運用ほど、こういう閾値は超えやすい16

自分のチャンネルでできることは、同意を済ませて、90日ごとの投稿ペースを切らさないこと。 それだけ、と言ってしまえばそれだけです。 仕組みを知っておくと、来年また何か変わったときに慌てずに読めます。

  1. YouTube公式ブログの告知記事。Premium Liteの拡大、ショートでの収益機会の拡充、広告とPremiumの参加要件更新という3点が示されています。 – New opportunities to earn and changes to the YouTube Partner Program
  2. Creator Insiderチャンネルで公開された4分33秒のインタビュー。Amjad Hanif氏が今回の改定を「クリエイターエコシステムの成長に合わせた調整」と説明しています。 – YouTube VP cites ‘a few cents’ to justify 10 million Shorts view floor
  3. ショート動画収益化モジュールに同意したパートナーは、国ごとの対象視聴回数のシェアに応じて配分を受け取る、と規約に定められています。 – YouTube Adds New Shorts Payout Rules To Partner Program Terms
  4. ショートの45%という分配率は2023年2月の収益分配開始時から変わっていません。長尺動画は55%です。 – YouTube rolls out new Partner Program terms as Shorts revenue sharing begins on February 1
  5. ヘルプセンターによると、Premium Liteはサブスクリプション純収入の60%、通常のPremiumは30%が収益プールとして分配されます。アナリティクス上ではPremium Liteの収益は通常のPremiumに合算表示されます。 – YouTube パートナー プログラムに関する変更
  6. 参入基準の引き上げは新規申請者のみですが、ショートの1,000万回基準は既存メンバーを含む全員に適用されると整理されています。 – YouTube’s Partner Program Just Got Harder to Join
  7. 基準を下回ってもYPPからは除外されず、長尺動画の収益は継続します。再び1,000万回を満たせばショートの分配も自動的に再開されます。 – YouTube、来年2月から広告収益化プログラムの条件を大幅に引き上げ
  8. 支払総額の見通しは示されたものの、分布についてのデータは公表されていない、と指摘されています。プールは国ごとの視聴シェアで配分されるため、対象者が減れば残った側への再分配になります。 – YouTube VP cites ‘a few cents’ to justify 10 million Shorts view floor
  9. 具体的な基準とオプトインの方法は「近日中に知らせる」とされたまま、開始時期は示されていません。 – YouTube パートナー プログラムに関する変更
  10. 従来は総再生時間4,000時間またはショート1,000万回でした。チャンネル登録者1,000人以上という条件はそのまま残ります。 – 収益化のハードルが上がる?YouTube、収益化プログラム変更へ 2027年2月から
  11. 登録者500人に加えて過去1年で3,000時間または過去90日で300万回、という下位ティアの要件は変更されません。 – YouTube パートナー プログラムに関する変更
  12. 投稿本数による維持は今回の改定で追加された条件です。再生数が伸びなくても投稿を続けていれば資格は保てます。 – YouTubeクリエイター収益化ハードル引き上げへ。新規参加は過去1年で8000時間再生など
  13. 同意しないまま2027年2月1日を迎えると該当する収益化機能が停止し、再開するには改めて同意が必要になります。 – YouTube パートナー プログラムに関する変更
  14. テレビ画面でのYouTube視聴が1日10億時間を超えたことも、要件更新の理由として挙げられています。 – New opportunities to earn and changes to the YouTube Partner Program
  15. Kapwingが新規アカウントのフィード最初の500本を調べたところ、165本がbrainrot、104本がAI生成でした。最初の16本には含まれていなかったとのことです。 – AI Slop Report: The Global Rise of Low-Quality AI Videos
  16. 対象となる視聴回数の数え方についても、広告として再生されたショートは含まれないなど、発表後に補足が出ています。 – Shorts watched as ads do not count toward YouTube’s 20 million view bar