- パソコンの画面右下に出る「システム警告」「トロイの木馬が検出されました」は、Windowsやウイルス対策ソフトの警告ではなく、Webサイトが Edge の通知機能を使って送ってきたメッセージ
- 本物なのは、通知の中の小さな2行だけ。送り主のドメインと「Microsoft Edge 経由」。上に大きく出ている警告画面やディフェンダーの窓は、通知に貼り付けられた画像
- 通知が届くのは、どこかのサイトで「許可」を押したから。許可は、ページを閉じたあとも残り続ける
- 止めるときは通知のボタンを押さず、Edge の設定から許可を消す。Edge 152 で入った自動解除は、通知を押したあとにしか働かない
1. 「Microsoft Edge 経由」の警告は、Webプッシュ通知で届いている

ノートパソコンの画面右下に、ウイルスの警告が何度も出てくる。
そんな相談を受けて写真を見せてもらうと、「お使いのPCは感染しています!」「トロイの木馬ウイルスが検出されました!」と、かなり強い言葉が並んでいました。



ボタンは「スキャンして修復」「今すぐウイルスを駆除する」。
ただ、これらの警告はよく見ると、「Microsoft Edge 経由」と書かれています。
1.1. 本物の部分は、ドメインと「Microsoft Edge 経由」の2行だけ
Windowsの「通知」は、アプリが出すメッセージです。
メールのアプリならメールのアプリの名前、Edge なら「Microsoft Edge」の名前で届きます。
そして Edge は、自分のことだけでなく、許可を受けた Webサイトの代わりに通知を出すことがあります。
これがWebプッシュ通知(Web push notification:Webサイトがブラウザを通して送る通知)です1。
通知の下半分を見ると、盾のマークの横に 「dahihtinaffc73fchmdg.mztw-adguar...」 という文字列があります。
これは、通知を送ってきたサイトのドメイン。
意味の読めない英数字が20文字ほど続いています。
つまり、この警告を出しているのはパソコンの中のウイルス対策ソフトではありません。
インターネットの向こうにある、このドメインのサイトです。
サイトからはパソコンの中身は見えないので、「感染しています」はまったく根拠のない文面です2。
1.2. 「システム警告」も「ディフェンダー」の窓も、通知に貼られた画像
もう一つ気づいたのが、通知の上半分の作りです。
黒い「システム警告!」の画面や、「Microsoft Windows ディフェンダー」と書かれた窓は、Windowsの画面部品ではありません。
実は、通知には、本文とは別に大きな画像を1枚載せられます3。
つまり、その画像の中に、警告画面の絵が描いてあるわけです。
窓の絵には「-」や「×」まで描かれていますが、これは絵なので押しても閉じません。
画像も通知の一部なので、押せば通知を押したのと同じ扱いになります。
ボタンも同じです。
「スキャンして修復」「無視」「Windows を更新」といったボタンの文字は、サイトが自由に決められます。
押したときにどのページを開くかも、サイトの側で決めています4。
「無視」と書いてあっても、安全な選択肢とは限りません。
1.3. スケアウェアの行き先は、偽のサポート窓口と正規ソフトのアフィリエイト
恐怖心をあおってお金を払わせたり、何かを入れさせたりする仕掛けを、スケアウェア(scareware:怖がらせるソフトや表示)と呼びます。
この通知もその一つです。
では、ボタンを押すと、どこへ連れて行かれるのか5。
たとえば、画面いっぱいに警告を出して警告音を鳴らし、「サポートセンター」の電話番号へかけさせるページです。
これがサポート詐欺で、電話の先で遠隔操作のソフトを入れさせ、有料のサポート契約を結ばせようとしてきます6。
あるいは、本物のセキュリティソフトの購入ページに行き着く流れもあります。
ディフェンダーの窓の絵が付いた通知には、「McAfee でスキャンして削除してください」とありました。
実際に報じられた例では、Chrome の通知で「重大なウイルス警告」を繰り返し出し、押すと Norton に似せたページで「18個のウイルスに感染」と表示して、最後は本物の Norton 公式サイトへ飛ばしていました。
そのURLには、アフィリエイト(affiliate:紹介した客が買うと、紹介した側に報酬が入る仕組み)の識別情報が付いていたそうです7。
ソフト自体が本物で、買えばちゃんと動くものもありますが、その売り上げの一部が、偽の警告を出した業者に紹介料として入る構造です。
ソフトの会社が仕組んでいるわけではなく、アフィリエイトの仕組みが悪用されている形です。
とはいえ、嘘の警告で買わされたことに変わりはありません。
2. 設定から通知をオフにする

止めるときに大事なのは、通知そのものには触らないことです。
「無視」も「×の絵」も押さずに、Edge の設定の側から許可を取り消します。
手早く止めたいなら、Windowsの「設定」から「システム」、「通知」と進み、アプリの一覧で Microsoft Edge をオフにする方法もあります8。
ただし、これは Edge から来るすべての通知を止めます。
2.1. ブラウザ通知を使う場合は、サイトのアクセス許可から削除する
もし必要な通知(メールサービスのブラウザ版を使ってるなど)がある場合には細かい設定が必要になります。
Edge のアドレスバーに edge://settings/content/notifications と入力すると、通知の設定が開きます。
メニューからたどる場合は、右上の「…」から「設定」、「Cookie とサイトのアクセス許可」、「通知」の順です。
「許可」の一覧に、見覚えのないドメインが並んでいるはずです。
今回なら mztw-adguar で始まる部分を含むものがそれに当たります。
右の「…」から「削除」か「ブロック」を選びます。
削除すれば通知は止まり、ブロックにしておけば同じサイトから再び許可を求められることもなくなります9。
同じページの上にある「通知要求を抑制する」をオンにしておくと、今後は許可のダイアログ自体が小さくしか出ません。
3. ページを閉じても通知は届き続ける(サービスワーカー)

では、このサイトはいつ、パソコンに通知を送る権利を手に入れたのか。
Webサイトが通知を出すには、利用者が一度「許可」を押す必要があります。
逆に言えば、どこかのタイミングで許可が押されているということです。
3.1. 「ロボットでなければ許可」は、通知の許可を取るためのCAPTCHAの偽装
よくあるのが、CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart:人間かどうかを確かめるテスト)に見せかける手口です。
「ロボットでない場合は『許可』をクリックしてください」「続けるには許可を押してください」と書いたページを出しておき、同時にブラウザの通知許可のダイアログを出します。
押した人は確認のつもりでも、実際に許可しているのは通知の送信です10。
こうしたページには、怪しい広告や検索結果、無料ソフトの配布サイトを装ったページから飛ばされることが多いです。
IPA(情報処理推進機構)も、偽のセキュリティ警告が出るきっかけの一つとして、この通知機能の悪用を挙げています11。
Edge の側も、手をこまねいているわけではありません。
通知の許可を求めるダイアログを、アドレスバーのベルのアイコンに小さくしまい込む「静かな通知要求」が、2020年から既定で有効になっています12。
それでも、許可を押させることにはまだ成功してしまうのが現状です。
3.2. プッシュサービスとサービスワーカーが、閉じたあとも通知を出す
厄介なのは、許可したページを閉じても通知が止まらないことです。
通知を許可すると、サイトはブラウザにサービスワーカー(Service Worker:ページとは別に、ブラウザの中で待機する小さなプログラム)を登録します。
サイトのサーバーは、ブラウザの提供元が運営するプッシュサービスへメッセージを送る。
プッシュサービスは、それを利用者のブラウザへ届ける。
ブラウザは、そのサイトのタブが開いていなくてもサービスワーカーを起こし、サービスワーカーが通知を表示します13。
表示のときは、showNotification() という命令にタイトル、本文、アイコン、画像、ボタンを渡します。
先ほどの黒い警告画面は画像の欄に、「スキャンして修復」はボタンの欄に入っているわけです。
ボタンが押されると、サービスワーカーに「どのボタンが押されたか」が伝わり、サイトが用意した処理が動きます。
Edge のウィンドウを全部閉じた場合も、Edge がバックグラウンドで動き続ける設定になっていれば、通知は届きます。
設定は edge://settings/system にある「Microsoft Edge が終了してもバックグラウンドの拡張機能およびアプリの実行を続行する」です14。
ページを見に行かなくても、パソコンを使っているあいだ、サイトが好きなときに話しかけてこられる状態。
これが、一度の「許可」で渡してしまっているものです。
4. 【補足】Edge 152の自動解除とスケアウェアブロックは、この通知には間に合わない
Edge には、このような詐欺への対策機能が入り始めていますが、まだ不十分です。

2026年8月の Edge 152 では、通知から開いた先のページを Microsoft Defender SmartScreen が詐欺サイトとして止めた場合、そのサイトからの通知を自動で解除する機能が加わりました15。
ただ、この機能が動くのは、通知を押して、行き先のページが SmartScreen に止められたあとです。
通知が届くこと自体は防げません。
しかも利用者を順番に広げている段階の機能なので、手元の Edge ですでに動いているとは限りません16。
もう一つのスケアウェアブロック(Scareware blocker)は、パソコンの中で動く機械学習のモデルで、全画面になった詐欺ページを見分けて、全画面を解除し警告を出す機能です17。
こちらは、ページを開いたあとに全画面で脅してくるものが対象です。
右下に出る通知は全画面のページではないので、見張っている範囲の外にあります。
警告のページが開いただけなら、パソコンがウイルスに感染したわけではありません。
何かをダウンロードしたり、電話をかけたり、遠隔操作のソフトを入れたりしていなければ、許可を消せば終わりです。
気になるときは、通知のボタンからではなく、スタートメニューから「Windows セキュリティ」を開いてスキャンします。
通知は、便利な機能のはずでした。
たとえば、メールが届いた、荷物が出た、というお知らせが画面の隅に出るのは助かります。
しかし、その同じ場所に、ここまで本物そっくりの絵を貼れてしまう。
「誰から届いたか」を示す小さな2行を読むくせだけは、つけておきたいところです。
- Push API は、Webアプリが前面に出ていなくても、ページが読み込まれていなくても、サーバーから送られたメッセージを受け取れるようにする仕組みです。 – プッシュ API – Web API | MDN
- IPAは、ブラウザの通知で表示される「パソコンがウイルス感染した」といった内容は根拠のない偽の通知で、不安をあおって不審サイトに誘導するのが目的だと説明しています。 – ブラウザの通知機能から不審サイトに誘導する手口に注意|IPA
- 通知を表示する
showNotification()のオプションには、本文(body)、アイコン(icon)とは別に、通知の中に表示する画像(image)と、ボタンを並べる操作(actions)があります。 – ServiceWorkerRegistration.showNotification() – Web API|MDN - 通知やボタンが押されると、サービスワーカーに notificationclick イベントが届きます。どのボタンが押されたかは
event.actionで分かり、その先でclients.openWindow()を呼べば、サイトが指定したページを開けます。 – ServiceWorkerGlobalScope: notificationclick イベント – Web API|MDN - 今回の写真の通知を押した先に、実際にどのページが開くのかは確かめていません。ここに書いた行き先は、同じ種類の通知について報告されている例です。 – ブラウザの通知機能から不審サイトに誘導する手口に注意|IPA
- IPAは、偽のセキュリティ警告に表示された番号に電話をかけないこと、遠隔操作を他人に安易に許可しないことを呼びかけています。画面が表示されただけであれば、パソコンはウイルスに感染していないとも説明しています。 – 偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ|IPA
- この例では、偽の FileZilla 配布サイトからダウンロードしようとした際に、気づかないうちに通知を許可していました。記事は、Norton 自身が仕組んだものではなく、悪質な広告業者が正規のアフィリエイトの仕組みを悪用しているとしています。 – 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠|おたくま経済新聞
- Windows の通知設定では、「アプリやその他の送信者からの通知」の一覧で、アプリごとに通知のオンとオフを切り替えられます。 – Windows での通知と応答不可|Microsoft サポート
- Microsoft のサポートページは、サイトのアクセス許可の「通知」で「ブロック」を選ぶ方法と、そのサイトを開いているときにアドレスバー左の「サイト情報の表示」から通知をブロックする方法を案内しています。IPAは、通知の設定から不審なURLを削除する方法を案内しています。 – Microsoft Edge で Web サイトの通知を管理する|Microsoft サポート
- 2021年3月の時点で、検索エンジンから誘導した先のサイトで、CAPTCHAの認証画面などを装い、本来は関係のない通知機能を許可させる手口が報じられています。 – ブラウザの通知機能を悪用、巧妙な「偽アラート」に注意|Security NEXT
- IPAは偽セキュリティ警告が出るきっかけとして、不審な広告のクリック、検索結果からの誘導、アダルトサイトの再生ボタン、ブラウザの通知機能の悪用の4つを挙げ、通知の場合は画面の右下に偽の警告が表示されるとしています。 – サポート詐欺の偽セキュリティ警告はどんなときに出るのか?|IPA
- 静かな通知要求は Edge 84 から既定で有効になりました。Edge 88 からは、利用者が実際に許可したかブロックしたかを集計し、サイトごとにダイアログを出すかどうかを判断する方式も試されています。 – Microsoft、「Edge」の機能“静かな通知要求”を改善|窓の杜
- 購読のときに発行される送り先のURL(エンドポイント)は、それを知っていればメッセージを送れる鍵のようなものです。メッセージが届くと、サービスワーカーが必要に応じて起動され、push イベントで受け取ります。 – プッシュ API – Web API | MDN
- 管理者向けのポリシーの説明では、この動作がオンだと、最後のウィンドウを閉じたあとも Edge のプロセスが動き続け、システムトレイにアイコンが出ます。ポリシーで決めていない場合の初期状態はオフで、利用者が edge://settings/system で変えられるとされています。 – Microsoft Edge ブラウザー ポリシー ドキュメント BackgroundModeEnabled|Microsoft Learn
- 2026年8月27日の Edge 152.0.4191.53 のリリースノートに「通知からユーザーの購読を自動的に解除」として載っています。解除されたサイトは edge://settings/privacy/sitePermissions/allPermissions/notifications で確認し、元に戻せます。 – Stable チャネルに関する Microsoft Edge リリース ノート|Microsoft Learn
- リリースノートでは、この機能は段階的に展開する「controlled feature rollout」とされています。写真の通知が出ていたパソコンの Edge のバージョンと、機能が有効だったかどうかは確認していません。 – Stable チャネルに関する Microsoft Edge リリース ノート|Microsoft Learn
- スケアウェアブロックは、全画面表示のページを数千の既知の詐欺サンプルと比べ、スケアウェア攻撃を示す行動パターンを探します。分析はパソコンの中で行われます。 – Microsoft Edge でスケアウェア ブロックを使用してオンライン詐欺を防止する|Microsoft サポート