- 画面全体を録るだけなら、OSに付いている機能でも足ります。それでも OBS Studio を選んだのは、WindowsとMacで手順が揃うからです。
- 最初にさわるのは映像と出力の2か所だけ。あとは開いて、録画開始を押して、ウィンドウを隠すだけになります。
- 録画フォーマットがMP4ではなくMKVなのには理由があります。MP4は再生に必要な目次を最後に書くので、途中で落ちると開けません。
- 録り終わったらファイルメニューの「録画の再多重化」でMP4にします。映像を作り直さないので、待ちは短くて済みます。
1. 画面録画のために、配信ソフトを入れる
画面を録るだけなら、Windows にも録画の機能が付いています。
それでも OBS Studio を入れることにしました。
理由は、使う機械が Windows と Mac に分かれているからです。
OS 付属の機能を使うと、説明も設定の場所も2通りになります。
OBS ならウィンドウの見た目も設定項目の並びもほとんど同じで、手順書が1本で済む。
配信ソフトとして育ってきたので、録画はできることのごく一部でしかありません。
今回さわっているのは Windows 版の 29.1.3 で、2023年6月に出た版です1。
ソースコードが公開されているので、古い版に何ができて何ができないかを後から確かめられます。
2. 録画の前にさわるのは、映像と出力の2か所
2.1. 解像度とFPSは、出したい大きさに合わせる

設定の「映像」には、解像度の欄が2つあります。
基本(キャンバス)解像度が、シーンを組み立てる画面の大きさ。
出力(スケーリング)解像度が、そこから書き出すときの大きさです。

2つとも 1280×720 にしてあります。
数字が揃うと縮小フィルタの欄が「解像度が一致、縮小フィルタは不要です」に変わり、拡大縮小の処理が挟まりません2。
画面を録るだけなら、この形がいちばん素直です。
FPS は 30 で足りました。
画面の操作を見せる録画で 60 にしても、増えるのはファイルの大きさばかり。
動きの速いゲームを録るなら、また話は変わります。
2.2. 録画フォーマットと保存先を確かめる
出力の設定は、出力モードを「詳細」にすると、配信・録画・音声・リプレイバッファのタブに分かれます。
見るのは録画のタブだけ。

確かめるのは、録画ファイルのパスと録画フォーマットとエンコーダの3つです。
フォーマットは Matroska Video (.mkv) になっています。MP4 ではありません3。
エンコーダは「(配信エンコーダを使用)」のまま。配信用に選んだものを録画にも使い回す設定です。
同じタブには、ファイル名からスペースを抜く項目や、音声トラックを6本まで分ける項目、時間でファイルを自動的に分ける項目も並んでいます。
長丁場の録画で1つのファイルが大きくなりすぎるのを避けたいなら、自動ファイル分割が効きます4。
今回はどれも既定のままにしました。
その下に警告が出ています。
配信エンコーダを使う設定のままだと、録画を一時停止できないという内容5。
録りながら止めたり再開したりしたいなら、ここで録画専用のエンコーダを選ぶことになります。
3. ふだんの操作は、開いて、押して、隠す
3.1. ソースは画面キャプチャひとつ。プレビューは合わせ鏡になる
OBS は、シーンという箱にソースを積んでいく作りです。
配信ならカメラやテロップを重ねますが、画面全体を録るだけならソースは1つで足ります。

ソースに置いてあるのは「画面キャプチャ」だけ6。
プレビューを見ると、OBS のウィンドウの中に OBS のウィンドウが写り、その中にまた写っています。
画面全体を録っているので、自分自身も画面の一部として入ってくる。合わせ鏡です。
録画したファイルにも、このまま入ります。
だから、録画を始めたあとに OBS を画面から消す手順が要ります。
3.2. 録画開始と録画終了は、同じ場所で入れ替わる
右下のコントロールに、配信開始・録画開始・仮想カメラ開始が縦に並んでいます。

録画開始を押すと、そのボタンが録画終了に変わります。
ボタンが増えるのではなく、同じ場所の文字が入れ替わる。

下のステータスバーでは、REC の右で録画時間が進みます。
右端の CPU も見ておくと、重い設定にしてしまったときに気づけます。
この画面は 10.3% で、30.00 fps が保たれています。
3.3. 音はデスクトップ音声とマイクの2本が出ている
音声ミキサーには、最初からデスクトップ音声とマイクの2本が並んでいます。
デスクトップ音声がパソコンの鳴らす音で、マイクが自分の声です。

画面の操作を録るだけなら、マイクは絞っておくか、スピーカーの印を押して止めておきます。
この画面ではマイクのつまみだけ左に寄せてあります。
録ったあとで「話していないのに部屋の音が入っていた」と気づくのが、いちばん面倒な失敗です。
Windows では、このデスクトップ音声が何もしなくても出てきます。
Mac は事情が違って、アプリの鳴らした音を別のアプリへ渡す口が長いあいだ無く、仮想のオーディオ機器を挟む必要がありました7。
macOS 13 と OBS 30 の組み合わせで、専用の音声キャプチャソースが使えるようになっています8。
3.4. 隠したまま止めるには、ホットキーを決めておく
OBS を最小化すれば、合わせ鏡は消えます。
設定の「一般」には、起動と同時にシステムトレイへ入れておく項目もあります9。
ただし、隠してしまうと録画終了のボタンが押せません。
設定の「ホットキー」に録画開始と録画終了の欄があるので、ほかのアプリとぶつからない組み合わせを入れておきます10。
プレビューだけを止める手もあります。
プレビューの領域を右クリックして「プレビューを無効にする」を選ぶと、合わせ鏡は消えます11。
ただし、これは表示をやめるだけで、録画される中身は変わりません。
Mac 版には、もう一段いい逃げ道があります。
画面キャプチャのプロパティに「OBS をキャプチャから隠す」というチェックがあって、OS の側に OBS を除いた画面を作らせる12。
Windows 版のディスプレイキャプチャには、これに当たる項目がありません。
4. 録り終わってから、MP4に詰め直す
4.1. MP4は目次を最後に書くので、落ちると開けない
録画フォーマットが MKV なのは、途中で止まっても開けるからです。
MP4 は、再生に必要な目次にあたる moov という箱を、書き込みの最後に置きます13。
録画中に電源が落ちれば、この箱は書かれないまま終わります。
映像の中身は残っているのに開けないファイルができる。2時間の講座を録って、最後の1分で落ちたら全部です。
MKV はそういう作りになっていません。
だから長いあいだ「MKV で録って、あとから MP4 に変換する」やり方が勧められてきました。
4.2. 再多重化は、映像を作り直さないので速い
変換は、ファイルメニューの「録画の再多重化」から行います14。

再多重化という言葉は硬いのですが、やっているのは入れ物の詰め替えです。
映像と音声のデータはそのまま取り出して、MP4 の箱に入れ直し、最後に目次を書く。
画質を落とす処理が入らないので、長い録画でも待ちは短くて済みます。
変換のあとは MKV と MP4 が両方残ります。
中身を確かめてから消す流れになるので、保存先の空きは気にしておいたほうがいい。
4.3. 新しいOBSでは、この一手間が要らなくなった
2024年7月の 30.2 で、ハイブリッド MP4 という形式が入りました。
録画中は断片化した MP4 として書き、停止したときにファイルの先頭を書き換えて、普通の MP4 に見せかける15。
ファイル全体を読み直さないので、この仕上げは一瞬で終わります。
チャプターを打てるようになったのも、この形式からです。
ただし章の情報は停止時の仕上げで書かれるので、途中で落ちた録画には残りません16。
映像そのものは復旧できても、章だけが消える。
手元の 29.1.3 には無い機能なので、更新すれば再多重化の一手間は消えます。
macOS 向けの MOV 版は 32.0 で加わり、新しく入れた場合の既定になりました17。
録画そのものは、ボタンを2回押すだけの作業です。
面倒に見えた MKV も再多重化も、途中で落ちたときに何が残るか、という一点から来ていました。
形式の話は、うまくいっているあいだは目に入りません。
- 29.1.3 は2023年6月19日に公開された版です。現行の 32 系とは、録画フォーマットまわりの作りがだいぶ違います。 – OBS Studio 29.1.3 · obsproject/obs-studio
- この文言は表示用の文字列としてそのまま用意されていて、基本解像度と出力解像度が同じときに縮小フィルタの欄へ出ます。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- OBS公式の録画出力の解説も、録画フォーマットには MKV を勧めています。 – Standard Recording Output Guide | OBS
- 自動ファイル分割は、時間か容量で録画ファイルを区切る機能です。音声トラックは6本まで分けられます。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- 警告文は「録画エンコーダが “(配信エンコーダを使用)” に設定されている場合は録画を一時停止することはできません」。簡易モードでは「録画品質が “配信と同じ”」のときに同じ警告が出ます。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- Windows版の画面キャプチャには、キャプチャ方法として自動・Legacy(DXGI)・Modern(WGC)の選択があります。 – obs-studio/plugins/win-capture/data/locale/en-US.ini
- 無料の VB-CABLE は手作業の設定が必要でアプリ単位の音声キャプチャに対応せず、アプリ単位で取り出すには有料の Loopback や Sound Siphon が要りました。 – macOS Desktop Audio Capture Guide | OBS
- macOS 音声キャプチャのソースを足すと、デスクトップ全体の音か特定アプリの音かを選べます。OBS 28と29では、画面キャプチャに音声が付いてくる形でした。 – macOS Desktop Audio Capture Guide | OBS
- 「起動時にシステムトレイへ最小化する」と「タスクバーの代わりにシステムトレイに常に最小化する」の2つが用意されています。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- 詳細設定には、ホットキーをいつ無効にするかの選択もあります。メインウィンドウにフォーカスがあるとき無効にする、無いとき無効にする、どちらでも無効にしない、の3択です。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- 無効にすると、プレビュー部分は「プレビューは現在無効です」の表示に変わります。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- 実装では、実行中アプリの一覧から OBS 自身のバンドル識別子と一致するものを探し、ScreenCaptureKit のコンテンツフィルタの除外対象に渡しています。既定は無効で、キャプチャの種類がディスプレイのときだけ項目が出ます。 – obs-studio/plugins/mac-capture/mac-sck-video-capture.m
- moov ボックスは最後に書かれ、ファイルの終了時に必須のため、書き込みが中断されると復旧が極めて難しくなる、と開発者が説明しています。 – Writing an MP4 Muxer for Fun and Profit | OBS
- ファイルをウィンドウにドロップしても追加できます。再多重化の途中で止めると、対象ファイルが使えなくなる場合があると警告されます。 – obs-studio/frontend/data/locale/ja-JP.ini
- 停止時に完全な moov を書き、先頭の空き領域を上書きする処理はソフトリマックスと呼ばれます。ファイル全体を読み直さないので速く終わります。 – Writing an MP4 Muxer for Fun and Profit | OBS
- チャプターは終了処理の中で書き込まれるため、クラッシュした録画では復旧できないと明記されています。 – Hybrid MP4 & Hybrid MOV Formats | OBS
- 32.0 のリリースノートに、新規インストールの既定の録画コンテナをクラッシュ耐性のあるハイブリッド MP4(macOS ではハイブリッド MOV)にした、と書かれています。 – OBS Studio 32.0 Release Notes | OBS