「radiko+FM」は、
FMチューナーのあるスマホのためのアプリ

  • Playストアには「radiko」と「radiko+FM」が並んでいる。+FMのほうが後から出たのに、更新は1年前で止まっていて、画面も古いデザインのまま
  • radiko+FMは、FMチューナーを内蔵したスマホ「ラジスマ」のためのアプリ。FMで受信するときは、有線イヤホンのコードがアンテナになる。チューナーのないスマホでは、イヤホンを挿しても受信しない
  • ラジスマは、スマホを携帯ラジオにしようという民放ラジオ業界の計画だった。ところがスマホはイヤホン端子をなくす方向へ進み、対応機種は減っている
  • タイムフリー30やチャプターなど、新しい機能は通常版のradikoにだけ入っている。ラジスマ対応機でなければ通常版で十分で、iPhoneは通常版しか選べない

関連記事

1. Playストアには「radiko」と「radiko+FM」が並んでいる

1. Playストアには「radiko」と「radiko+FM」が並んでいる

Androidのスマホでラジオのアプリを探していたら、よく似たアプリが2つ出てきました。
「radiko」と「radiko+FM」。
どちらも提供元は株式会社radikoで、アイコンもほぼ同じです。

名前だけ見ると、+FMのほうが多機能な上位版に見えます。
Playストアの説明文にも「radikoのスマホアプリが進化した」とあります1。
実際、Playストアのリリース日は通常版のradikoが2011年、radiko+FMは2019年で、+FMのほうが後から出ています2。
ところが最終更新は、radikoが2026年8月26日、radiko+FMは2025年8月29日。
後から出たほうが、1年前で止まっているわけです。

数字を並べると、差はもっとはっきりします。
バージョンはradikoが8.4.7で、radiko+FMは6.4.0fm44。
評価は4.0と3.4で、レビューの件数は12万件と3,407件です。

両方入れて開いてみると、radiko+FMは「タイムフリー」「ライブ」「エリアフリー」のタブが上に並ぶ、以前のradikoの画面でした。
新しいradikoは、ホーム、番組表、ポッドキャスト、フォローといったメニューが下に並ぶ作りに変わっています。
+FMは、後継ではなさそうです。

radiko+FMの画面。以前のradikoと同じデザイン

2. radiko+FMは、スマホの中のFMチューナーを使う

2. radiko+FMは、スマホの中のFMチューナーを使う

2つのアプリの違いは、スマホ本体の「FMラジオを受信する機能」を使うかどうかです。
radiko+FMは、インターネット配信のradikoに、FM放送の電波を直接受信する機能を足したアプリ。
この組み合わせは、ハイブリッドラジオと呼ばれています3。

2.1. IPサイマルラジオのradikoは、電波を受信していない

通常版のradikoは、IPサイマルラジオ(IP simulcast radio:インターネットで放送を同時に配信するラジオ)のサービスです。
地上波の放送を、放送エリアに合わせた地域へインターネットで流しています。
音声はデータとして届くので、聴いているあいだはずっと通信量を使います。

配信の仕組み上、実際の放送より少し遅れて聞こえます。
アプリの説明にも、時報や緊急地震速報は正確ではないと書かれています4。

radiko+FMで「FM放送で聴く」に切り替えると、放送局の送信所から出ている電波そのものを受信します。
通信量は使いませんし、遅れもありません。
ただし、FMで聴けるのは今流れている放送だけ。
タイムフリーやエリアフリーは、インターネット側の機能です5。

2.2. イヤホンのコードがFMアンテナになる

FMを受信するには、有線イヤホンを挿しておく必要があります。
イヤホンのコードの中の金属線が、アンテナの役割をするからです。
日本のFM放送の電波は76〜99MHzで、波長は3〜4メートルほどあります6。
1mほどのコードでも、電波をそれなりに拾えます。

では、音を聴くためのコードで、どうして同時に電波も拾えるのか。
イヤホンに流す音声の信号は、高くても20kHzほど。
FMの電波は、それより数千倍も高い周波数です。
スマホの中のフィルター(filter:特定の周波数だけを通す回路)で、低い周波数はイヤホンへ、とても高い周波数はFMチューナーへ、と振り分けています。

アンテナの作りは機種ごとに違います。
USB Type-Cの端子しかない機種では、アナログ方式のType-Cイヤホンや変換アダプタならアンテナになり、デジタル方式のイヤホンは使えません7。
ワイヤレスイヤホンは、そもそもスマホとつながる金属線がないので無理です。
京セラのシニア向けの機種には、カメラの周りの枠に触り続けていれば、イヤホンなしでも受信できるものまであります8。
人の体をアンテナにしているわけで、これはちょっと面白い。

2.3. FMチューナーのないスマホでは「FM放送で聴く」が出ない

ここで気になったのが、イヤホンさえ挿せば、どのスマホでもFMが聴けるのかという点です。
答えは、聴けません。
コードはあくまで電波を拾う線で、拾った電波を音声に戻すのはFMチューナー(FM tuner:FM電波を受信する回路)の仕事です。
チューナーと、そこまでつながる配線がなければ、コードが電波を拾っても行き場がありません9。

対応している機種では、放送局を選ぶと、タブのすぐ下に「FM放送で聴く」というスイッチの行が出ます。
イヤホンを挿さないと、このスイッチはオンにできません10。
私のスマホでradiko+FMを開くと、タブのすぐ下はいきなり番組の一覧で、この行がありません。
インストールも起動もできますが、動いているのは以前のradikoです。

チューナーのないスマホで開いたradiko+FM。タブの下に「FM放送で聴く」の行がない

iPhoneには、使えるFMチューナーがありません。
Google Pixelも非対応で、Xperiaも2024年のモデルからFMの機能をやめています11。

3. ラジスマは、スマホを携帯ラジオにする計画だった

3. ラジスマは、スマホを携帯ラジオにする計画だった

FMチューナーを内蔵して、radiko+FMでradikoとFMを切り替えられるスマホを「ラジスマ」と呼びます。
radiko+FMは、このラジスマのために作られた派生版です。

3.1. 民放連がハイブリッドラジオを2019年に製品化した理由

ラジスマを進めたのは、民放連(日本民間放送連盟)です。
2015年にハイブリッドラジオの調査研究を始め、2019年3月に最初の対応機が発売されました。
ドコモの「らくらくスマートフォン me F-01L」と、auの「URBANO V04」です12。

きっかけは、ラジオを持ち歩く人が減ったことでした。
専用のラジオの国内出荷は、2000年の269万台から2020年には112万台まで減っています。
一方でAndroidのスマホは、2020年度だけで1,046万台出荷されました13。
スマホがラジオになれば、多くの人がいつもラジオを持ち歩いている状態になる、という考え方です。

もう一つの理由が防災です。
FM放送は携帯電話の回線とは別の設備から一斉に送信されるので、災害時にアクセスが集中して回線が混み合う輻輳(congestion:ふくそう)の影響を受けません。
普段はradikoの便利さを使い、いざというときはFMに切り替える。
放送と通信のいいとこ取りが、ラジスマの売りでした14。

3.2. ワイヤレスイヤホンの普及と、ラジスマは逆を向いた

対応機種は、2021年11月末までに5メーカー39機種、2025年4月の時点で累計89機種まで増えました15。
AQUOS、Galaxy、arrowsといった普通のスマホにも載っていたので、最初からシニア向けに絞った企画ではなかったわけです。

ところが、スマホの流れはラジスマの想定と逆の方向へ進みました。
イヤホン端子はなくなり、ワイヤレスイヤホンが当たり前になった。
コードをアンテナにする前提と、真っ向からぶつかります。
radikoが日本だけのサービスなので、世界共通で作るスマホに組み込みにくいという事情もあります。

2025年の取材では、携帯電話会社はラジスマ対応を端末選びの条件にしておらず、対応機種は減っていると報じられています16。
今は、2025年4月に出た「BASIO active3」のようなシニア向けの機種や、手頃な価格帯の機種に残っている状態です17。
公式サイトもアプリも続いているので、終わったわけではありません。

4. タイムフリー30もチャプターも、通常版radikoにだけ入る

4. タイムフリー30もチャプターも、通常版radikoにだけ入る

radiko+FMの更新が止まって見えるのは、この経緯を知ると納得がいきます。
スマホにFMを載せる計画のほうが勢いを失い、radikoの開発は通常版に集まっているからです。

4.1. radiko+FMは2023年の全面リニューアルより前に枝分かれした

通常版のradikoは、2023年に画面を全面的に作り直し、2024年にはポッドキャストを始めました18。
2025年にはApple CarPlayとAndroid Autoにも対応しています19。
radiko+FMの画面が古いままなのは、この作り直しの前から枝分かれしているからです。

はっきり線が引かれたのが、2024年秋に始まった有料プランのタイムフリー30。
公式に、radiko+FMでは使えないと書かれています20。
新しいサービスを+FMにも揃えていく方針ではない、ということです。

通常版radikoのホーム画面。下にメニューが並ぶ新しいデザイン

2026年9月には、通常版に「チャプター」が加わりました。
タイムフリーの番組やポッドキャストを、AIが聴いて話題や曲の切れ目で区切り、見出しを付ける機能です21。
放送局が用意した番組情報ではなく、radikoが後から足している見出しで、聴きたい場面へすぐ飛べます。

4.2. ラジスマ対応機種かどうかで選ぶ

まず、自分のスマホがラジスマに対応しているかを確かめます。
いちばん確実なのは、ラジスマの公式サイトにある対応機種の一覧で、正確な機種名を探すことです。
radiko+FMが最初から入っている、仕様表に「FMラジオ」とある、というのも目安になります。

対応機なら、radiko+FMを残しておく意味があります。
通信量を使わずに聴けますし、災害で回線が混んでもFMは届きます。
そのときのために、有線イヤホンを1本手元に置いておくと安心です。

対応機でなければ、通常版のradikoで十分です。
radiko+FMを入れても切り替えは出ず、新しい機能も使えないので、わざわざ選ぶ理由がありません。
iPhoneには、はじめから通常版しかありません。

同じアプリの新旧に見えた2つは、実はスマホとラジオの関係について、違う未来を想定して作られたものでした。
スマホがラジオの受信機になる未来と、ラジオがインターネットの音声サービスになる未来。
今のところ、進んでいるのは後者のようです。

  1. 同じ説明文の冒頭には「本アプリをインストールした場合、通常版radikoアプリはご利用できません」とも書かれています。ただ、2026年9月13日に手元のAndroidスマホで試したところ、両方をインストールでき、どちらも起動しました。 – radiko+FM – Google Play のアプリ
  2. Playストアに表示されるリリース日は2011年4月6日ですが、radikoのサービス自体は、2010年3月にIPサイマルラジオの実用化試験配信として始まっています。 – 「IPサイマルラジオ」実用化試験配信開始について
  3. 民放連のラジオ委員会は、2015年にFM放送波とインターネットを組み合わせたハイブリッドラジオの調査研究を始めています。 – FM放送とインターネットラジオの両方を聴くことができる「ラジスマ」、ご存じですか?|民放online
  4. 説明文の「ご注意」には、遅延が発生するため時報及び時刻のお知らせ、緊急地震速報は正確ではないこと、バッファ時間を長くするほど遅延が大きくなることが書かれています。 – radiko – Google Play のアプリ
  5. radiko公式ヘルプは、「FM放送で聴く」では現在放送中の番組の聴取のみで、タイムフリー・エリアフリーは聴取できないと説明しています。FM波で放送していないラジオNIKKEIとNHK AMも、FMでは聴けません。 – ハイブリッドラジオアプリ【radiko + FM(ラジコプラスエフエム)】|radiko ヘルプ
  6. AM放送を補うワイドFMの周波数帯は、2025年5月19日に76.0〜95.0MHzから76.0〜99.0MHzへ拡張されました。 – ワイドFM|総務省
  7. FCNTのらくらくホン F-41Fの案内では、アナログ方式のType-Cイヤホンケーブルか変換アダプタを使い、ケーブルの長さは0.6〜1.5m程度、安定して受信するには1m以上を推奨しています。radiko公式ヘルプが「USB Type-C接続イヤホンでは使えない」としているのは、デジタル方式のものを指していると読めます。 – FMラジオを聴くには、どうすればよいですか?|FCNT
  8. 京セラの「かんたんスマホ3」の使い方ガイドには、専用の3.5φ-Type-C変換ケーブル(KYDFM1)と市販のイヤホンを使う方法のほかに、カメラプレートの枠に触り続けることで変換ケーブルとイヤホンなしでもFMを受信できると書かれています。 – radiko+FM|かんたんスマホ3 使い方ガイド|京セラ
  9. 逆に、Androidスマホには、ハードウェアとしては受信機能を備えながらソフトウェアで無効にしている機種も少なくないと報じられています。 – スマホから「FMラジオ機能」が消えつつある理由|ITmedia Mobile
  10. FCNTのよくある質問は、radiko+FMでFMに切り替えられないときの原因として、イヤホンがイヤホンジャックに差し込まれていないことを挙げています。 – 「radiko+FM」アプリ内でFMラジオへの切り替えができない。|FCNT
  11. Appleは2017年に「iPhone 7とiPhone 8には信号をサポートするためのチップとアンテナがない」と回答しています。Pixelは初代から一貫して非対応で、Xperiaは2023年のXperia 10 VでFMチューナーが復活したものの、2024年モデルで再び非対応になりました。 – スマホから「FMラジオ機能」が消えつつある理由|ITmedia Mobile
  12. 民放連は2019年3月6日にラジスマを発表し、この2機種にradiko+FMがプリインストールされました。 – ネット+FMでラジオが聴ける 民放連が「ラジスマ」をアピール|ITmedia Mobile
  13. どちらの数字も、民放連の担当者が2021年12月に書いた記事によるものです。 – FM放送とインターネットラジオの両方を聴くことができる「ラジスマ」、ご存じですか?|民放online
  14. ラジスマの公式サイトは、FM放送について「通信が途絶えてもラジオを受信できるから災害の時でも便利」と説明しています。 – 民放ラジオ「ラジスマ」
  15. 89機種は民放連の資料による数で、同じ機種でも販売する携帯電話会社が違えば別に数えています。 – スマホから「FMラジオ機能」が消えつつある理由(3/4ページ)|ITmedia Mobile
  16. KDDIは「端末メーカー様にて搭載要否をご判断頂いております」、楽天モバイルは「採用製品の選定時における優先度は高くない状況」と答えています。民放連自身も、radikoが国内のみのサービスでグローバル端末に採用しづらいこと、有線イヤホンが必要なことを普及の壁に挙げています。 – スマホから「FMラジオ機能」が消えつつある理由(3/4ページ)|ITmedia Mobile
  17. BASIO active3は京セラ製で、2025年4月18日にauとUQ mobileから発売されました。ラジスマの公式サイトにも対応機種として載っています。 – 「BASIO active3」をauとUQ mobileから4月18日に発売|KDDI ニュースルーム
  18. 全面リニューアルは2023年1月30日に発表され、ホーム画面の刷新やフォロー機能が加わりました。 – radikoアプリが全面リニューアル!|株式会社radikoのプレスリリース
  19. 2025年7月2日の発表で、Androidはバージョン8.2.10以上が対象です。 – radikoが「Apple CarPlay・Android Auto」に対応|株式会社radikoのプレスリリース
  20. タイムフリー30は放送から30日以内の番組を時間制限なしで聴けるプランで、利用できるのはバージョン8.2.0以上のradikoアプリとPCサイトだけです。radiko+FMやradiko autoなど他のアプリ、スマートスピーカーでは使えないと明記されています。 – ラジコのタイムフリー30プラン|radiko
  21. 2026年9月4日に提供が始まりました。チャプターには「トーク」「音楽」「ゲスト」「コーナー」といった種類と時刻が付き、音楽の場面では曲名とアーティスト名も表示されます。8月26日のアプリ更新の時点では、トライアルとして一部の利用者に先行して出ていました。 – radiko、新機能「チャプター」を提供開始|株式会社radikoのプレスリリース