クラウドとSNSのデータ管理:知っておくべき権限と共有の仕組み

はじめに

インターネットサービスを使うとき、「データがどこにあるのか」「誰が見られるのか」という基本的な仕組みを理解していますか?クラウドやSNSサービスが普及した今だからこそ、この基本的な仕組みを改めて考えてみる価値があります。

日々使うサービスの裏側で何が起きているのか。知っているようで案外わかっていないことも多いものです。本記事では、クラウドサービスやSNSの根底にある「データ保存」と「アクセス権限」の考え方を整理してみました。

では「SNSとクラウドストレージの共通点」を簡潔に説明する章を追加します。

SNSとクラウドストレージの共通点

まず整理しておきたいのが、「クラウド」と「SNS」の関係です。どちらもインターネット上のサーバーにデータを保存し、アクセス権限を設定できるシステムです。

  • 両者とも「あなたのデータ」を物理的には遠く離れたサーバーに保管し、必要に応じて取り出せる仕組みを持っています。
  • また、アカウント認証によって「これは私のデータ」という所有権を証明する点も同じです。
  • さらに重要なのは、両サービスとも第三者との「共有」機能を備えており、保存したデータへのアクセス権限を自分でコントロールできます。

つまり、データの「保存」「認証」「共有」という三つの基本機能がクラウドサービスの本質と言えるでしょう。これらの共通点を理解すると、様々なインターネットサービスの根本的な仕組みが見えてきます。

両者の違いは主に目的にあります。クラウドストレージが「データの保管」に重点を置くのに対し、SNSは「共有」と「コミュニケーション」に重点を置いています。これは、図書館と公園の違いのようなものです。図書館は本を整理して保管する場所であり、公園は人々が集まって交流する場所です。

クラウドコンピューティングという大きな流れ

SNSは広い意味ではクラウドサービスの一種と考えることができます。より正確には両者とも「クラウドコンピューティング」という大きな概念に含まれます。クラウドコンピューティングとは、インターネットを通じてコンピュータリソース(ストレージ、処理能力、ソフトウェアなど)を提供するサービス全般を指します。GoogleドライブなどのクラウドストレージもFacebookなどのSNSも、このクラウドコンピューティングの一種なのです。

この観点から見ると、サービスの種類はこのように整理できます:

  • クラウドコンピューティング(最上位概念)
    • IaaS(Infrastructure as a Service):AWSやAzureなどの基盤サービス
    • PaaS(Platform as a Service):開発プラットフォームサービス
    • SaaS(Software as a Service):アプリケーションサービス
      • クラウドストレージ(Googleドライブ、Dropboxなど)
      • SNS(Facebook、Instagramなど)
      • 他のウェブアプリケーション(Evernoteなど)

データの保存場所の変化

昔は写真やファイルといったデータはすべて自分のパソコンに保存するのが当たり前でした。しかし今は違います。多くの人がGoogleドライブやiCloudなどの「クラウドストレージ」を利用しています。

クラウドとは簡単に言えば「インターネット上の保管庫」です。あなたがアップロードしたデータは、どこかのデータセンターにある大きなコンピュータ(サーバー)に保存されます。そのため、使っているパソコンやスマホが壊れてもデータは無事です。また、会社のパソコンで作業したファイルを家のスマホでそのまま続けられるといった便利さもあります。

このように、データの物理的な保存場所は「手元の機器」から「インターネット上」へと移行してきました。家のタンスから銀行の貸金庫に大切なものを移すようなものです。

アクセス権限の基本

データがクラウドに保存されると、次に重要になるのが「誰がそのデータを見られるか」という問題です。これを「アクセス権限」と呼びます。

アクセス権限は主に次の3段階があります:

  1. 「自分だけ」(非公開)
  2. 「特定の人だけ」(限定公開)
  3. 「誰でも」(完全公開)

例えば、メモ帳に書いた個人的なことは「自分だけ」に設定し、仕事の資料は「チームメンバーだけ」に共有し、会社の採用情報は「誰でも見られる」ように設定するといった使い分けができます。

鍵のかかった引き出し、特定の人だけに渡した鍵のかかる部屋、誰でも入れるロビーのようなイメージです。同じデータでも、設定一つで公開範囲が大きく変わります。

アカウントとは何か

インターネットサービスを使うとき、必ず作成するのが「アカウント」です。これはインターネット上のあなたの身分証明書のようなものです。

アカウントには三つの重要な役割があります:

  1. あなただけのデータ保管場所を確保する
  2. 「これは私のものです」と証明する
  3. あなたのコンテンツへのアクセス権限を管理する

銀行口座を持つことで、お金の管理や取引ができるようになるのと同じです。アカウントがあることで、クラウド上のデータを「自分のもの」として管理できます。

SNSにおける共有の仕組み

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、この「保存」と「共有」の仕組みを使って、人とつながるためのサービスです。

インスタグラムに写真をアップロードすると、その写真はまずインスタグラムのサーバーに保存されます。次に、あなたが設定した公開範囲に基づいて「誰に見せるか」が決まります。フォロワーのみに公開設定にすれば特定の人だけが、公開設定にすれば誰でも見られるようになります。

この仕組みは、データをクラウドに置いた上で、アクセス権限を柔軟に設定できるようにしたものと言えます。さまざまな共有設定があるのも、このためです。

サービスごとに異なる権限設定

同じSNSやクラウドサービスでも、権限設定の方法や考え方は少しずつ異なります。

  • Instagram(インスタグラム)の特徴は、基本的に「公開」か「非公開」の二択という単純さです。
    非公開アカウントにすると、フォロワーだけが投稿を見られます。ストーリーでは「親しい友達」機能で、さらに細かい公開範囲を設定できますが、基本は二択に近いシンプルさが特徴です。
  • Facebookでは、投稿ごとに「公開」「友達のみ」「カスタム」など、より詳細な設定ができます。
    友達リストをグループ分けして、家族だけ、親しい友人だけといった細かい設定も可能です。まるで手紙の宛先を「回覧板」「特定の人」「親しい人だけ」と使い分けるようなイメージです。
  • Google(Googleドライブなど)の特徴は「リンクを知っている人」という共有設定です。
    これは鍵のかかった部屋の合言葉を知っている人だけが入れるような仕組みです。また、「閲覧のみ」「編集可能」など、権限のレベルも細かく設定できます。

SNSとクラウドストレージの違い

先ほど触れたように、SNSもクラウドストレージも同じクラウドコンピューティングの一種ですが、いくつか重要な違いがあります。

一つ目はデータに対する主導権です。クラウドストレージでは、あなたがデータの管理者となり、必要に応じて特定の人と共有するかどうかを選びます。一方、SNSでは、プラットフォーム側がデータの流れをある程度コントロールしています。あなたの投稿がどのユーザーのタイムラインに表示されるかは、そのSNSのアルゴリズム次第です。

これは、自分の本棚と公開掲示板の違いにも例えられます。本棚では自分が本の並べ方を決めますが、掲示板では管理者が投稿の表示方法を決めることがあります。

安全に使うための心構え

これらの仕組みを理解した上で、いくつか注意すべき点があります。

最初の設定が「公開」になっていることが多いので、必ず確認しましょう。また、サービスの仕様変更で設定が変わることもあるため、定期的な見直しも必要です。

最も重要なのは「一度公開したものは完全には消せない」という心構えです。誰かがスクリーンショットを撮っていれば、あなたが削除してもその情報は残り続けます。インターネットに出す情報は「世界中の人に見られても大丈夫なもの」という基準で考えるとよいでしょう。

まとめ

クラウドサービスやSNSは、どちらも広義の「クラウドコンピューティング」という概念に含まれます。データはクラウド上に保存され、設定によって公開範囲が決まるという基本構造は同じです。違いは主に目的にあり、クラウドストレージが「保管」に、SNSが「共有とコミュニケーション」に重点を置いています。

アカウントを持つことで、この管理が可能になりますが、サービスによって設定方法は異なります。しかし基本的な考え方は共通しています。自分の情報をどう管理するかを意識して、インターネットサービスを安全に活用していきましょう。