! AIコード開発の「技術的負債」とレバレッジ

  • AIで書いたコードが後で理解できなくて困ってる人多いと思うんですが、これって「技術負債」の考え方で整理できます。
  • 理解してる割合をキープする意識は大事ですが、金融の自己資本比率と同じ。
  • 適度な負債は成長のために必要です。
  • 自前にこだわりすぎると機会を逃してしまうんですよね。

AIに頼って書いたコードが後で困った話

ChatGPTやGitHub Copilotなどの生成AI(人工知能)1を使ってプログラムを書く人が増えています。確かに便利です。数行の指示で、複雑なコードが一瞬で完成します。

しかし、多くの人が同じ問題に直面しています。「AIが書いたコードは動くけれど、後で修正しようとすると全然分からない」という状況です。バグが出ても直せない。機能を追加したくても、どこをいじればいいか分からない。

この現象を「AIに書かせたコードがメンテナンス不能になる問題」と呼びましょう。この問題を考える重要なポイントは「自己資本比率」という考え方です2

AIコードを「技術的な借金」として考える

返済能力を超えた借金は危険です。しかし、企業の世界では借金は成長のための重要な手段です。これを「レバレッジ」と呼びます3

プログラム開発においても、同じ考え方が適用できます。AIに書かせたコードのうち、自分が理解している部分を「自己資本」、理解できていない部分を「技術負債」として捉えるのです。技術的負債の概念そのものは、1992年にウォード・カニンガム氏4によって提唱されています。

AI </> ! AIコード開発の「自己資本比率」 40% 理解 AI依存の危険 理解不足でメンテ不能 適切なバランス 理解40% + AI活用60% AIはレバレッジツール 金融の借入と同様、適度な負債で成長を加速 負債 完璧を求めすぎると競争に負ける 定期的な理解度向上で負債返済 持続可能な開発を実現

従来のプログラミングでは、すべてのコードを自分で書き、完全に理解する必要がありました。これは「無借金経営」と同じです。確実ですが、開発速度が遅く、競争に負けてしまいます。

一方、AIを使えば短時間で大量のコードを生成できます。これは「資金調達」に似ています。自分の技術力だけでは実現できない規模のプロジェクトを、AIの力を借りて実現するのです。開発においては速度も重要な要素です。競合他社がAIを活用して高速開発している現状で、完璧を求めすぎると機会を逃してしまいます。

理解できないコードは危険?

「理解できないコードは危険だ」「AIに依存しすぎるのは良くない」という意見があります。確かにリスクはありますが、金融の世界でも適切な借入は普通の経営手法です。重要なのは、リスクを管理しながら活用することです。適切な比率を保てば、依存ではなく活用になります。

現実的な競争環境では、コアとなる部分やセキュリティが重要な部分は確実に理解し、その他の部分で効率化を図ることが重要です。

40%の理解とは?

「自己資本」の考え方を援用すると、人間が理解している割合が40%以上あれば、健全な開発が可能だと言えそうです。これは決して「60%は理解しなくていい」という意味ではありません。重要なのは、必要に応じて理解を深められる状態を保つことです。

なぜ40%が適切なのか? 金融業界の基準 自己資本比率40%以上 = 健全経営 60%までの借入OK 成長のためのレバレッジ 理想的バランス 40%理解 60%AI活用 対処可能な範囲 競争力を維持 実現可能な目標 ✓ 全体構造の把握 ✓ 主要処理の理解 ✓ トラブル時の対応 ✓ 段階的学習可能 危険ライン:理解度10%未満 完全なブラックボックス化 → メンテナンス不可能 ※この数値は経験則に基づく仮説です チームや案件に応じて調整可能

40%というイメージは、完全に理解できないコードでも、全体の構造や主要な処理の流れが分かれば、問題が発生したときに対処できる、ということと対応しています。また、AIが生成したコードは、多くの場合、既存のライブラリや一般的なパターンを使用しているため、学習すれば理解可能です。

技術負債をどう管理するか

技術負債は適切に管理する必要があります。というのも、AIへの依存を放置すると、システム全体が理解不能になり、最終的には開発が停止してしまうからです。

1 実践:理解度を40%以上に保つ方法 1 理解度UP • コード読解 • ライブラリ学習 • 構造把握 • AIに質問 2 負債返済 • リファクタリング • コメント追加 • 関数分割 • 変数名改善 3 継続管理 • 定期チェック • 比率測定 • 段階的学習 • チーム共有 効果的なサイクル AI生成 → 理解 → 改善 → 再利用 → AI生成… バグ修正や機能追加の際に関連部分を深く理解 ポイント:完璧を求めず、段階的に理解を深める

効果的な管理方法は、AIが生成したコードを段階的に理解していくことです。バグを修正する際や機能を追加する際に、関連する部分のコードを詳しく調べ、理解を深めます。これが「負債の返済」にあたります5

また、新しい機能を開発する際には、既存のコード規約に従うようAIに指示したり、使い慣れたライブラリを指定したりすることで、理解しやすいコードを生成させることができます。

まとめ

AIを使ったコード開発において、人間の理解している割合を40%以上に保つことで、健全な開発が可能になります。これは完璧主義でも無責任でもない、バランスの取れたアプローチです。

AIは強力なレバレッジツールです。適切に活用すれば、個人でも企業レベルのアプリケーションを開発できます。しかし、技術負債の管理を怠れば、最終的には開発が行き詰まってしまいます。

自己資本比率の概念を意識することで、AIの恩恵を受けながらも、持続可能な開発を続けることができるでしょう。

  1. 技術的負債 – Wikipedia – 技術的負債の基本概念とウォード・カニンガム氏による原典の説明
  2. 技術的負債の兆候および効果的な管理方法 | Atlassian – 技術的負債の実践的な管理手法とアジャイル開発での対応策
  3. 技術的負債とは?そして負債を完済する方法とは?[2024] • Asana – プロジェクト管理の観点から見た技術的負債の定義と対処法
  4. GitHub Copilotとは?使い方・料金・VScodeへの導入方法を解説 – AIポータルメディアAIsmiley – AI支援コーディングツールの概要と実際の活用方法
  5. 自己資本比率とは?計算方法や業種別の目安、注意点などを解説 – 弥生株式会社 – 企業財務における自己資本比率の基本的な計算方法と業種別目安
  6. 自己資本比率とは?業種ごとの目安 | クラウド会計ソフト マネーフォワード – 金融の専門家による自己資本比率の詳細解説
  7. Technical Debt – Martin Fowler – 技術的負債概念の発展に貢献したマーティン・ファウラー氏による権威的な解説
  8. Technical Debt Quadrant – Martin Fowler – 技術的負債を4つのカテゴリーに分類した著名なフレームワークの解説
  9. GitHub Copilot × ChatGPTによるAIペアプログラミング開発実践 – AIツールを実際の開発現場で活用した体験談と実践的なノウハウ
  1. GitHub Copilotは、AIがプログラマーの作業を支援するコード補完ツールです。リアルタイムでコードを提案し、開発効率を向上させます。 – GitHub Copilotとは?使い方・料金・VScodeへの導入方法を解説
  2. Kenn Ejimaさん: 「AIに書かせたコードがメンテ不能になっていく現象をどう考えれば良いのか考えてて、このシンプルな定義に行き着いた。 「AIに書かせたコードのうち、人間が理解している割合が安全域で、理解できてない部分が技術負債である」 https://t.co/hukCnyjbUT」 / X
  3. 自己資本比率は、返済不要の自己資本が総資本に占める割合を示し、30%以上で安定、40%以上で比較的安全、50%以上で優良企業とされています。 – 自己資本比率とは?業種別では何%くらいが目安なの?
  4. ウォード・カニンガム(Ward Cunningham)は、アメリカのプログラマーでWikiの発明者として知られています。アジャイルソフトウェア開発マニフェストの共著者の一人でもあります。 – 【翻訳】技術的負債という概念の生みの親 Ward Cunningham 自身による説明
  5. リファクタリングとは、外部から見た時の挙動は変えずに、プログラムの内部構造を整理することです。コードの可読性や保守性を向上させる重要な手法です。 – リファクタリングとは?定義やメリット・デメリットを解説