- プロンプトを工夫するだけでライブラリ品質のSVGアイコンが作れることを発見しました。
- 最初は基本図形の組み合わせでしたが、段階的改善とMaterial Design風の統一ルールで劇的に向上。
- 抽象概念は具体的なアイテムで表現するのがコツです。
- キーワード入力→要素分析→アイコン作成の2ステップ方式で効率化できました。
単純なリクエストから始まった発見
ウェブサイトやアプリケーションでアイコンが必要になったとき、どのような方法で作成しているでしょうか。デザインツールを使って一つずつ手作業で描く方法が一般的ですが、統一感のあるアイコンセットを作るのは意外と時間がかかります。
この記事では、AIを使ったアイコン作成の実験を通して見つけた発見を共有します。最初は単純なパソコンアイコンの作成から始まりましたが、最終的には任意のキーワードからライブラリ品質のアイコンを自動生成する仕組みまで到達できました。
実際の試行錯誤の過程をそのまま記録しているため、失敗例も含まれています。しかし、その過程で得られた知見こそが、再現可能な手法につながったと考えています。
まずはシンプルに作ってみた
最初のリクエストは非常にシンプルでした。
「パソコンのアイコンを192×192のSVGで作成して」
この一言から始まった実験では、AIが立体感のあるパソコンアイコンを作成しました。モニター、スタンド、キーボードが含まれた、いかにもアイコンらしい見た目でした。
ところが、実際にウェブサイトで使うことを考えると問題がありました。影やグラデーションが多用されており、現代的なフラットデザインには合わないのです。
そこで追加のリクエストを出しました。
「フラットなデザインにできる?」
すると、影や立体感が取り除かれ、シンプルなフラットデザインに変わりました。さらに「カラーテーマをソフトな感じにできますか?」と調整を加えると、温かみのある色合いのアイコンが完成しました。
この段階で重要な発見がありました。最初から完璧なプロンプトを書く必要はなく、段階的に改善していく方法が有効だということです。
抽象的な概念をアイコンにする難しさ
次に挑戦したのは「オリジナル」という概念のアイコン化でした。これは具体的な物体ではなく、抽象的なアイデアです。
最初のアプローチでは、星型や電球、ダイヤモンドなどの象徴的な図形を組み合わせました。確かに「独創性」や「特別さ」を表現していましたが、何か違和感がありました。
問題は、抽象的な図形だけでは直感的に理解しにくいことでした。そこで方針を変更し、具体的なアイテムの組み合わせで表現することにしました。
筆とパレット、白い紙に描かれた絵、そして作者の印鑑。これらの組み合わせで「オリジナル作品を生み出す」という概念を表現したところ、格段に分かりやすくなりました。
この経験から、抽象概念をアイコン化する際の重要な原則が見えてきました。象徴的な図形よりも、日常的に触れる具体的なアイテムを組み合わせる方が効果的だということです。
プロンプトの品質を体系化する
これまでの経験を踏まえて、効果的なアイコン作成プロンプトの要素を整理してみました。
良いプロンプトには共通点がありました。具体的なサイズ指定、明確なスタイル指定、色の具体的指定、用途の明示です。一方で避けるべき要素も見えてきました。曖昧な表現、サイズ未指定、矛盾した要求、一度に多すぎる要求などです。
例えば、最初のパソコンアイコンを効率的に作るなら、こんなプロンプトが理想的でした。
「デスクトップパソコンのアイコンを192×192のSVGで作成してください。モダンなフラットデザインで、温かみのあるソフトパステル調の色使い。モニター、スタンド、シンプルなキーボードを含み、影やグラデーションは避けてください。」
このように、最初から詳細を指定することで、段階的調整の手間を省けます。
複数のコンセプトで検証実験
プロンプト設計の考え方を検証するため、5つの異なるコンセプトでアイコンを作成してみました。成長、学習、チームワーク、セキュリティ、コミュニケーションです。
「成長」では植木鉢と段階的に大きくなる植物、じょうろを組み合わせました。「学習」では開いた本、鉛筆、ノート、電球を使いました。それぞれのアイコンで、抽象概念を具体的なアイテムで表現する手法を一貫して使用しました。
結果として、5つのアイコンすべてで統一感のある表現ができました。しかし、新たな問題も発見されました。
実用性の壁:基本図形からの脱却
作成されたアイコンを改めて見ると、基本図形の組み合わせに留まっていることに気づきました。実際のウェブサイトやアプリで使われるアイコンと比較すると、どこか素人っぽい印象が否めませんでした。
問題は、Font AwesomeやMaterial Iconsのような、プロが作成したアイコンライブラリとの品質差でした。実用的なUIアイコンには、統一されたスタイル、適切な抽象化レベル、小さなサイズでの視認性、ブランドに合った個性などが求められます。
そこで、ライブラリ品質のアイコン作成に挑戦することにしました。
ライブラリ品質への進化
Material Design風のスタイルを目標に、同じ5つのコンセプトでアイコンを作り直しました1。
今度は以下の要素を重視しました。統一されたカラーパレット(プライマリカラーとして青、セカンダリカラーとして緑、オレンジ、赤、紫)2、一貫した線の太さ(3-6px)、透明背景、シンプルな形状、最小限の要素、視認性重視の設計。
「成長」アイコンでは、3段階のバーと上向き矢印というシンプルな組み合わせで表現しました。「学習」では開いた本と電球、「チームワーク」では3人の人物と接続線という具合に、要素を大幅に削ぎ落としました。
結果は明らかでした。情報量は減りましたが、プロフェッショナルな印象が格段に向上しました。小さなサイズでも判別しやすく、実際のウェブサイトで使用できるレベルに到達できました。
汎用的なシステムの構築
ここまでの経験を元に、任意のキーワードからライブラリ品質のアイコンを作成する汎用的な仕組みを考案しました。
重要なのは2ステップのアプローチです。まず「要素分析」でキーワードから連想される具体的なアイテムを3-5個選択し、組み合わせパターンを決定します。次に「アイコン作成」で、決定した要素を使って統一された仕様でSVGアイコンを作成します。
例えば「データ分析」というキーワードなら、要素分析の段階で「グラフ + 虫眼鏡 + トレンドライン + データポイント」という組み合わせを決定します。その後、Material Designカラーパレット、線の太さ2-4px、192×192サイズ、透明背景といった技術仕様でアイコンを作成します。
この手法を検証するため、データ分析、設定・カスタマイズ、時間・スケジュール、クラウド・同期、通知・アラートの5つの新しいテーマでアイコンを作成しました。どれも一貫したライブラリ品質を保ちながら、それぞれの機能を適切に表現できました。
プロンプトテンプレートの完成
最終的に、以下のような構造化されたプロンプトテンプレートが完成しました3。
prompt: |
入力されたキーワードを基に、ライブラリ風アイコンを作成してください。
キーワードが明示されていなければ、記事またはここまでの対話からキーワードを3つ上げてください。
【ステップ1: 要素分析】
キーワードから連想される具体的なアイテムを3-5個選択し、組み合わせパターンを提示してください。
例:「データ分析」→ グラフ + 虫眼鏡 + トレンドライン + データポイント
【ステップ2: アイコン作成】
要素からメインとなる要素を一つ選んで、デザインします。
選択した要素を使って、以下の仕様でSVGアイコンを作成してください:
**技術仕様:**
- サイズ: 192×192
- 形式: SVG
- viewBox="0 0 192 192" width="192" height="192"
**デザイン仕様:**
- スタイル: Material Design風ライブラリアイコン
- 背景要素: 192x192の白の角丸四角形(fill="white", rx=32,ry=32)
- カラーパレット:
- プライマリ: #2196F3(青)
- セカンダリ: #4CAF50(緑)、#FF9800(オレンジ)、#F44336(赤)、#9C27B0(紫)
- グレー系: #607D8B、#9E9E9E、#E0E0E0、#FFFFFF
- 線の仕様:
- stroke-width: 2-4px
- stroke-linecap: "round"
- stroke-linejoin: "round"
- 形状: 基本図形(rect, circle)とパス(path)の組み合わせ
- 角丸: rx/ry値は2-8px程度
- ソリッドなデザイン
**品質要件:**
- シンプル性: 装飾を排除し、機能の本質のみ表現
- 視認性: 24px以上の小サイズでも判別可能
- 一貫性: 他のライブラリアイコンと調和するデザイン
- 複雑なディテール
**避けるべき要素:**
- グラデーション、影、立体効果
- 5色以上の多色使い
- 細すぎる線(2px未満)
- 文字で表現する
最初にステップ1で要素の組み合わせを説明し、その後ステップ2でアイコンを作成してください。Code language: PHP (php)
このテンプレートを使用することで、どのようなキーワードからでも一定品質のアイコンを作成できるようになりました。
手法の自己検証
開発したシステムの有効性を確認するため、最後に「SVGアイコン、プロンプト、ライブラリ風デザイン」というメタ的なキーワードでアイコンを作成してみました。
要素分析では、プロンプト入力ボックス、コードブラケット、変換矢印、アイコングリッド、ギアという組み合わせを選択しました。これらの要素でプロンプトからアイコンが生成される流れを視覚化したアイコンが完成しました。
自分たちが開発した手法を、その手法自体を使って表現できたことで、システムの汎用性と有効性を確認できました。
実践で得られた設計原則
この一連の実験を通して、効果的なプロンプトエンジニアリングには以下の原則が重要だと分かりました4。
- 段階的改善の活用です。最初は曖昧なリクエストから始めて、徐々に具体化していく方法が実用的です5。完璧なプロンプトを最初から書く必要はありません。
- 具象化による表現です。抽象概念をアイコン化する際は、象徴的な図形よりも日常的なアイテムの組み合わせが効果的です。具体的で親しみやすいものを選ぶと、直感的な理解が得られます。
- 用途に応じた品質設定です。説明的なイラストとUIアイコンでは求められる品質が異なります。目的を明確にして、適切な抽象化レベルを選択することが重要です。
- 体系化による再現性確保です。経験を元にテンプレート化することで、個人の技量に依存しない安定した結果が得られます。
まとめ
プロンプトエンジニアリングを活用したSVGアイコン作成では、段階的改善と体系化のアプローチが効果的でした。抽象概念の具象化、用途に応じた品質設定、テンプレート化による再現性確保という3つの原則により、ライブラリ品質のアイコンを効率的に量産できるシステムを構築できました6。2ステップ方式(要素分析→アイコン作成)の採用により、任意のキーワードから一貫したデザイン品質のアイコン生成が可能になっています。
- Material Design System Icons Guidelines – 記事で言及したMaterial Design風アイコンの公式ガイドライン、カラーパレットと統一性に関する基準
- SVG on the Web – 実践ガイド – SVGアイコンの最適化、実装方法、パフォーマンスに関する包括的な技術解説
- Font Awesome公式ドキュメント – 記事で参考にしたライブラリ風アイコンの代表例、実用的なアイコンライブラリの基準
- Prompt Engineering Guide – 記事の核心となるプロンプトエンジニアリングの最新技法と体系的なアプローチ方法
- Design Systems Iconography Guide – 一貫性のあるアイコンセット作成、命名規則、組織化に関する実践的指針
- Best Practices for Working with SVGs – Bitovi – SVG作成からエクスポート、最適化までの技術的ベストプラクティス
- DigitalOcean Prompt Engineering Best Practices – 段階的改善アプローチと効果的なプロンプト設計の実践的手法
- Google Material Color Toolは、Material Designに準拠した配色を簡単に作成できる公式ツールです。プライマリカラーを選択すると、自動的に調和のとれたカラーパレットが生成されます。 – Google Material Color Toolの活用法
- Material Designでは色相ごとの種類に分かれており、それぞれのパレット内で明度・彩度の段階が50~900,A100~A700まで割り当てられています。それぞれの色相・明度によって適切なコントラストカラーが割り振られています。 – Android Material Design 3「カラーパレット」について
- SVGファイルの最適化には、SVGOやそのWebGUI版SVGOMGといった専用ツールが広く使用されています。これらのツールはファイルサイズを大幅に削減し、不要なメタデータやコメントを除去できます。 – ブラウザから SVGO で SVG ファイルを最適化できる 「SVGOMG」
- プロンプトエンジニアリングは、生成AIに対する指示文を工夫して出力精度を高める技術です。目的や制約を明確化し、段階的なやり取りや例示を活用することで、AIの能力を最大限に引き出すことができます。 – プロンプトエンジニアリングの進化:ベストプラクティス10選
- プロンプトエンジニアリングのコツは、まず試す→結果を見て改善点をフィードバック→再出力の繰り返しです。このイテラティブなアプローチにより、AIから望ましい出力を効率的に得ることができます。 – プロンプトエンジニアリングのベストプラクティス
- SVGアイコンの最適化では、作成から書き出しまでの工程を通じて品質を保つことが重要です。自動最適化ツールは便利ですが、機能が壊れることがあるため、できるだけ手動で実行し、自動ツールは必要な場合のみ慎重に使用することが推奨されます。 – 基礎から学ぶ、IllustratorでSVGを最適化して書き出す方法