はじめに
ウェブ制作の仕事をしていると、クライアントから「オンラインショップを作りたい」というご相談をいただくことがあります。そんなとき、どのようなシステムを提案すべきか迷うことはありませんか?
実は、ECサイト構築方法には大きく分けて3つの選択肢があります。BASEやSTORESなどの専用プラットフォーム、WordPressとWooCommerceの組み合わせ、そしてフルスクラッチ開発です。それぞれに長所と短所があり、クライアントの要望によって最適な選択肢は変わってきます。
今回は、実際のクライアントワークを通して感じた、最適なECサイト構築方法を見極めるポイントについてお伝えします。
クライアントの本当のニーズを知るためのヒアリング
ECサイト構築の相談を受けたとき、まず大切なのはクライアントの本当のニーズを理解することです。表面的な「ネットショップを作りたい」という言葉の裏には、さまざまな目的や要望が隠れています。
効果的なヒアリングには、以下のような項目が欠かせません:
- ショップの目的(販路拡大、新規顧客獲得など)
- 販売する商品の種類と価格帯
- ターゲットとする顧客層
- 必要な機能(決済方法、在庫管理、配送設定など)
- デザインの希望
- 予算と開設希望時期
- 運用体制(誰がどのように管理するか)
これらの質問を通じて、クライアントが本当に求めているものが見えてきます。時には、クライアント自身も明確に意識していない要望が浮かび上がることもあります。
主要なECサイト構築方法の特徴
実際の案件で考えると、クライアントのニーズによって最適な選択肢は変わります。いくつかの典型的なケースを見てみましょう。
予算が限られたスモールビジネス向け(ECプラットフォーム)
個人事業主や小規模店舗など、予算が限られている場合は、BASEやSTORESの無料プランが適しています。例えば、先ほどの個展でのECサイト活用を考えるクライアントの場合、1ヶ月後の開設希望と「なるべく少ない予算」「簡単な操作性」という要望を考えると、これらのプラットフォームが最適解になりやすいです。
この場合のおすすめポイント:
- 初期費用を最小限に抑えられる
- 短期間で開設できる
- 基本的な機能で十分な場合が多い
- 運用も比較的簡単
メリット:
- 初期費用を抑えられる(無料プランあり)
- 専門知識がなくても簡単に始められる
- 短期間でショップをオープンできる
- 決済や配送の基本機能が最初から揃っている
デメリット:
- カスタマイズの自由度が低い
- 機能拡張に限界がある
- プラットフォーム依存度が高い
- 無料プランの場合、決済手数料が高めの場合がある
成長中の中小企業向け(WordPress + WooCommerce)
事業拡大を視野に入れている中小企業の場合、WordPress + WooCommerceが適しています。最初はシンプルな機能でスタートし、徐々に機能を追加していけるという拡張性が魅力です。
この場合のおすすめポイント:
- ある程度のカスタマイズが可能
- 将来的な機能追加に対応できる
- 独自ブランディングが可能
- 中長期的なコスト効率が良い
メリット:
- 高いカスタマイズ性と拡張性
- 豊富なテーマとプラグインで機能追加が容易
- SEO対策に強い
- 独自ドメインとサーバーで運用できる
- 中長期的にランニングコストを抑えられる可能性がある
デメリット:
- 初期構築に時間と手間がかかる
- ある程度の技術的知識が必要
- セキュリティ対策やアップデートなどの保守が必要
- 開発費用が高くなりやすい
特殊な要件を持つ大企業向け(フルスクラッチ開発)
大規模なECサイトや、非常に特殊な機能要件がある場合は、フルスクラッチ開発も選択肢になります。例えば、既存の基幹システムとの高度な連携や、完全にオリジナルの購入フローが必要な場合などです。
この場合のおすすめポイント:
- あらゆる特殊要件に対応可能
- 完全にオリジナルのユーザー体験を提供できる
- 大規模なトラフィックや取引量に対応できる
メリット:
- 完全にオリジナルのサイトを構築できる
- あらゆる機能要件に対応可能
- パフォーマンスやセキュリティを細かく制御できる
デメリット:
- 開発に多くの時間とコストがかかる
- 高度な技術力が必要
- 運用・保守の負担が大きい
一から家を建てるようなものです。設計図を描き、材料を選び、細部まで自分の思い通りに作れます。
提案時の具体的なアプローチ
クライアントへの提案時には、単に機能や費用を並べるだけでなく、具体的なメリットを伝えることが大切です。
デモンストレーションの活用
「百聞は一見にしかず」ということわざがあるように、実際の管理画面や操作感を見せることで、クライアントの理解が深まります。BASEやSTORESの管理画面のデモ、WordPressのサンプルサイトなどを用意しておくと効果的です。
長期的な視点を伝える
初期費用だけでなく、ランニングコストや運用負担も含めた「総所有コスト」で比較検討できるようにします。例えば、月額費用が発生するプラットフォームと初期費用は高いが月額費用の少ないWordPressを、3年間使った場合のコスト比較などを示すと分かりやすいでしょう。
不安点への対応策を示す
WordPressの運用に不安を感じるクライアントには、保守サポートプランを提案するなど、安心して利用できる体制を整えることを伝えます。不安を解消する具体的な策を示すことで、選択の幅が広がります。
まとめ
最適なECサイト構築方法の選定には、クライアントの要望、予算、技術力、運用体制など、多角的な視点からの検討が必要です。単一の「最良の方法」はなく、それぞれのケースに応じた最適解があります。
クライアントの本当のニーズを引き出すヒアリングと、各選択肢のメリット・デメリットを分かりやすく伝えることで、クライアントが納得のいく選択ができるようサポートしていきましょう。
最終的には、ECサイトはクライアントのビジネスを成長させるための道具です。その道具が使いやすく、効果的であることが最も重要なのです。