M macOSのウィンドウを「消す」、4つの操作の違い

macOSを使っていると、ウィンドウを「消す」方法がいくつもあることに気づきます。⌘+Mで最小化、⌘+Hで隠す、⌘+Wで閉じる、⌘+Qで終了。どれも似たような結果に見えるかもしれませんが、実は技術的に全く異なる処理が行われていて、パフォーマンスへの影響も変わります。

ポイントは、GUIで操作できる「閉じる」や「最小化」はウィンドウ単位の操作で、アプリケーションレベルの操作ではないことです。

2つの終了と2つの非表示

まず、それぞれの操作が何を対象としているかを整理してみましょう。

macOS ウィンドウ操作の違い Minimize ⌘+M ウィンドウを Dockに格納 Hide ⌘+H アプリ全体を 非表示 Close ⌘+W ウィンドウを 完全終了 Quit ⌘+Q アプリを 完全終了 技術的な違い メモリ使用量: 保持 保持 解放 解放 CPU負荷: 軽減 軽減 停止 停止 復帰方法 Minimize: Dockクリック Hide: アイコンクリック Close: 再作成が必要 Quit: アプリ再起動 使い分けのポイント 一時的にウィンドウを隠したい → Minimize アプリ全体を一時的に隠したい → Hide 作業完了でウィンドウ不要 → Close アプリ自体が不要 → Quit
  • Minimize(⌘+M)は特定のウィンドウだけを対象とします。
    ウィンドウが画面から消えてDockに小さなサムネイルとして格納されます。アプリケーション自体は動き続けています。
  • Hide(⌘+H)はアプリケーション全体を対象とします。
    そのアプリのすべてのウィンドウが一度に画面から消えます。アプリケーションは背景で動作を続けています。
  • Close(⌘+W)は現在のウィンドウを完全に閉じます。
    ウィンドウに関連するデータやプロセスも終了します。ただし、アプリケーション本体は残ります。
  • Quit(⌘+Q)はアプリケーション全体を終了します。
    すべてのウィンドウが閉じられ、アプリケーションのプロセスも完全に停止します。

「閉じる」と「終了」の違い

Close(⌘+W)- ウィンドウの完全終了

特定の作業が完了したときは、Closeを使います。文書の編集が終わったとき、ブラウザの特定のタブが不要になったときなどです。⌘+Wでそのウィンドウだけを終了できます。

Closeは、ウィンドウを完全に破棄する操作です。ウィンドウオブジェクトがメモリから解放され、関連するリソースも開放されます。

この操作の重要な特徴は、アプリケーションによって動作が異なることです。Safariのような文書ベースのアプリケーションでは、ウィンドウを閉じても他のウィンドウは残ります。しかし、設定アプリやカレンダーアプリのような単一ウィンドウアプリケーションでは、ウィンドウを閉じるとアプリケーション全体が見えなくなります。

テキストエディタで未保存の文書がある場合、保存確認ダイアログが表示されます。これは、ウィンドウの破棄前にデータの整合性を保つためです。

Quit(⌘+Q)- アプリケーションの完全終了

アプリケーション自体が不要になったときは、Quitを選択します。画像編集ソフトでの作業が完全に終わったとき、ゲームを終了するときなどです。⌘+Qでアプリケーション全体を終了し、メモリを解放します。

この処理では、まずすべてのウィンドウが順次閉じられます。各ウィンドウで未保存データがあれば保存確認が行われます。すべてのウィンドウが正常に閉じられた後、アプリケーションのメモリが解放され、プロセスが終了します。

Quitは、アプリケーションのライフサイクルを完全に終了する操作です。NSApplicationterminate:メソッドが呼ばれ、アプリケーションのメインプロセスが停止します。

バックグラウンドで実行中のタスクがあっても、すべて強制的に停止されます。ダウンロード中のファイルがあれば中断されます。データベース接続があれば切断されます。

「最小化」と「非表示」の違い

Minimize(⌘+M)- ウィンドウレベルの操作

一時的にウィンドウを邪魔に感じるときは、Minimizeが適しています。メールの返信中に資料ウィンドウが邪魔になったとき、⌘+Mで最小化すれば、後で簡単に復帰できます。

Minimizeは、特定のウィンドウオブジェクトの状態を変更する操作です。ウィンドウのisMinimizedプロパティがtrueになり、macOSのWindow Serverがそのウィンドウを画面から取り除きます。

重要なのは、ウィンドウのコンテンツはメモリに保持されることです。Webブラウザでダウンロードを実行中にウィンドウを最小化しても、ダウンロードは継続されます。動画の再生も音声は続きます。これは、アプリケーションのメインプロセスには何の影響もないからです。

ただし、描画処理は停止します。ウィンドウが見えないため、画面更新の必要がなくなるからです。これにより、GPU負荷が軽減されます。

復帰方法は3つあります。Dockのウィンドウサムネイルをクリックする方法、アプリのWindowメニューから選択する方法、そしてMission Control(以前は Expose)から選択する方法です。

Hide(⌘+H)- アプリケーションレベルの操作

アプリ全体を一時的に使わないときは、Hideが効果的です。音楽アプリで作業用BGMを流しながら、他の作業に集中したいときなどです。⌘+Hで隠せば、音楽は流れ続けながら画面がすっきりします。

Hideは、NSApplicationhide:メソッドを呼び出す操作です。システムレベルでアプリケーション全体の表示状態が制御されます。

Window Serverは、そのアプリケーションのすべてのウィンドウを非表示リストに移動します。アプリケーションの描画処理が完全に停止するため、CPUとGPUリソースの節約効果が高くなります。

特に複数のウィンドウを開いているアプリケーションでは、効果が顕著に現れます。Chromeで10個のタブを開いているとき、⌘+Mでは1つのウィンドウしか最小化されませんが、⌘+Hではすべてのウィンドウが隠れます。

復帰方法は、Dockのアプリアイコンをクリック、⌘+Tabでのアプリ切り替え、またはSpotlightからの再起動です。

パフォーマンスへの影響

メモリ使用量とCPU負荷の観点から、4つの操作を比較してみましょう。

パフォーマンスへの影響 Minimize Hide Close Quit メモリ使用量 保持 保持 解放 完全解放 CPU負荷 軽減 軽減 停止 完全停止 GPU負荷 軽減 最効果 停止 完全停止 効果レベル 高負荷 中負荷 低負荷 停止 推奨シナリオ 8GBメモリ不足時: Quit活用 バッテリー節約: Hide推奨 高負荷アプリ: Close/Quit 総合パフォーマンス効果: Hide > Quit > Close > Minimize 効果的
  • メモリ使用量では、MinimizeとHideはメモリを保持し続けます。Closeは該当ウィンドウのメモリを解放します。Quitはアプリケーション全体のメモリを解放します。8GBメモリのMacで複数のアプリケーションを使っている場合、適切にQuitを使うことでメモリ不足を回避できます。
  • CPU負荷では、MinimizeとHideは描画処理を停止するため負荷が軽減されます。Closeは該当ウィンドウの処理を完全に停止します。Quitはアプリケーションのすべての処理を停止します。
  • GPU負荷では、画面に表示されるウィンドウ数が直接影響します。Hideが最も効果的で、次にMinimize、Close、Quitの順になります。

効率的な使い方と注意点

いくつかのアプリケーションでは、標準的な動作と異なる場合があります。

  • Finderの特殊性があります。Finderは⌘+Qが無効になっています。macOSの基本機能であるため、完全に終了できません。⌘+Hで隠すことは可能です。
  • バックグラウンドアプリの存在も考慮が必要です。Dropbox、Google Drive、メニューバーアプリなどは、ウィンドウを閉じても動作を続けます。これらを完全に停止するには⌘+Qが必要です。
  • システムアプリでは、一部の操作が制限される場合があります。システム環境設定やアクティビティモニタなどは、セキュリティ上の理由で特別な終了手順が必要な場合があります。

そのほかの操作を組み合わせることで、より効率的な作業環境を構築できます。

  • ⌘+Option+Hという隠れた機能があります。「現在のアプリ以外をすべて隠す」操作で、集中して作業したいときに便利です。複数のアプリケーションが開いている状況で、現在の作業に集中したいときに使います。
  • アプリ切り替えとの連携も重要です。⌘+Tabでアプリを切り替えるとき、隠されたアプリケーションは薄く表示されます。これにより、どのアプリが隠されているかを把握できます。
  • Dockの活用では、最小化されたウィンドウはサムネイルとして、隠されたアプリケーションは通常のアイコンとして表示されます。この視覚的な違いを理解すると、現在の状態を把握しやすくなります。

まとめ

macOSの4つのウィンドウ操作は、それぞれ異なる技術的な処理を行います。Minimize(⌘+M)はウィンドウレベルでの一時的な非表示、Hide(⌘+H)はアプリケーションレベルでの一時的な非表示、Close(⌘+W)はウィンドウの完全終了、Quit(⌘+Q)はアプリケーションの完全終了です。

適切な操作を選択することで、メモリ使用量の最適化、CPU・GPU負荷の軽減、そして作業効率の向上を実現できます。特に限られたリソースのMacを使っている場合、これらの違いを理解することは重要です。