WooCommerceの「独自のものをデザイン」機能の使い方と注意点

最初に感じた違和感

WooCommerceでネットショップを作っていると、もっとかっこいいデザインにしたくなります。管理画面を見ていると、「拡張機能」の「テーマ」セクションに「独自のものをデザイン」という魅力的な機能があります。

この機能を試してみると、予想外のことが起こりました。使用していたテーマが突然「Twenty Twenty-Four」というWordPressの標準テーマに変わってしまったのです。最初は「壊れた」と思いました。

でも調べてみると、これは故障ではありませんでした。実はこの機能の正しい動作だったのです。

勘違いしていた機能の正体

「独自のものをデザイン」という名前から想像すると、今使っているテーマの色や文字を変える機能だと考えました。しかし実際は全く違いました。この機能は家の外壁を塗り替える道具ではなく、家そのものを建て直す機能だったのです。

WooCommerceの公式マーケットプレイス1内にあるこの機能の正式名称は「ストアデザイナー」です。説明文を読むと「組み込みのストアデザイナーを使用して美しいストアをすばやく作成します」とあります。

つまり、既存テーマの修正ではなく、新しいテーマの作成が目的なのです。

機能を正しく理解する

なぜテーマが変わるのか

ストアデザイナーを起動すると、次のような流れでテーマが変更されます。

まず、新しいテーマの作成プロセスが始まります。この時点で、作業の邪魔にならないよう一時的にデフォルトテーマ(Twenty Twenty-Four2)に切り替わります。そして、カスタマイズが完了すると新しいテーマが適用されます。

なぜわざわざデフォルトテーマに切り替えるのでしょうか。これは安全性のためです。

新しいテーマを作成している最中に、既存のテーマが干渉すると予期しない問題が起こる可能性があります。そこで、確実に動作する標準テーマを使って作業環境を安定させているのです。

ストアデザイナーができること

画面に表示される「クリエイティブに作成」のメニューを見ると、この機能の目的がよく分かります。

ロゴの追加、カラーパレットの選択、フォントの選択などがあります。これらは既存テーマの装飾ではなく、新しいテーマを一から作るためのツールです。

この機能が威力を発揮するのは、次のような場面です。

  • 新しくサイトを立ち上げる時には最適です。
    まだテーマが決まっていない状態なら、この機能で理想的なデザインを作れます。
  • また、サイトを大幅にリニューアルしたい時にも向いています。
    会社のロゴが変わった、商品ラインナップが変わったなど、ブランドイメージを刷新する際に有効です。

初心者にとってのメリット

技術的な知識がなくても、プロフェッショナルなデザインのオンラインショップを作れることが最大のメリットです。

通常、美しいECサイトを作るには、デザインの知識、CSSの技術、WooCommerceの理解など、多くの専門知識が必要です。しかし、ストアデザイナーを使えば、これらの知識がなくても質の高いサイトを構築できます。

他の方法との使い分け

小さな変更にはカスタマイザー

既存テーマの色を少し変えたい、フォントを調整したいといった小さな変更には、WordPressの標準機能「カスタマイザー」が適しています。カスタマイザーは「外観」→「カスタマイズ」からアクセスできます。既存テーマを維持しながら、色やレイアウトを調整できます。変更内容はリアルタイムで確認でき、気に入らなければ簡単に元に戻せます。

高度なデザインにはページビルダー

ElementorやBeaver Builderなどのページビルダープラグインという選択肢もあります。これらのツールは、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でページを作成できます。既存テーマと併用でき、より複雑なレイアウトも実現できます。

技術者向けのCSS編集

プログラミングの知識がある場合は、CSS(スタイルシート)を直接編集する方法もあります。この方法なら最も細かい調整が可能です。子テーマ3を作成すれば、テーマのアップデートでカスタマイズが消える心配もありません。

安全に使うための準備

バックアップは絶対必要

ストアデザイナーを使う前に、必ずサイト全体のバックアップを取ります[【efn_note]WordPressサイトのバックアップには、データベース、メディアファイル、テーマ、プラグインのすべてを含む完全バックアップが推奨されています – WordPress バックアップガイド[/efn_note]。

テーマが変更されるため、何か問題が起きた時に元の状態に戻せるよう準備しておくことが重要です。信頼できるバックアッププラグインを使って、データベースとファイルの両方を含む完全バックアップを作成します。

現在の設定を記録・テスト環境での確認

使用中のテーマ名、カスタマイズ内容、プラグインの設定なども記録しておきます。新しいテーマに移行した後で、必要な設定を再現するために役立ちます。

可能であれば、本番サイトではなくテスト環境で最初に試すことをお勧めします。期待する結果が得られるかを確認してから、本番サイトに適用すれば安心です。

知っておくべきリスク

カスタマイズの消失

既存のカスタマイズ内容は、新しいテーマには引き継がれません。ウィジェットの配置、メニューの設定、色やフォントのカスタマイズ、追加したCSSコード、プラグイン固有の設定などが失われる可能性があります。これらを再設定する時間と労力を考慮する必要があります。

プラグインとの相性

新しいテーマが、現在使用中のプラグインと相性が良いかを確認する必要があります。特にセキュリティプラグイン、SEOプラグイン、ページビルダー、フォーム作成プラグイン、決済関連プラグインとの互換性は重要です。問題があると、サイトの機能に支障が出る可能性があります。

実際の対応手順

ストアデザイナーを選ぶべき時

新しいサイトを立ち上げる場合、現在のデザインに大きな不満がある場合、大幅なリニューアルを計画している場合、WooCommerceに最適化されたテーマが欲しい場合、技術的な知識が限られている場合には、この機能が最適です。

現在のテーマに概ね満足している場合、小さな調整だけを行いたい場合、既存のカスタマイズを保持したい場合、特定のプラグインとの互換性が重要な場合、SEOの影響を最小限に抑えたい場合には、別の方法を検討することをお勧めします。

段階的なアプローチ

いきなり本番サイトで作業するのではなく、段階的に進めることが大切です。

まず現在のサイト状況を詳細に記録します。次に完全バックアップを作成し、テスト環境で機能を試します。問題がないことを確認してから、アクセスの少ない時間帯に本番サイトで実行します。

事後確認の重要性

テーマ変更後は、サイトの全ページが正常に表示されるかを確認します。

特に商品ページ、ショッピングカート、決済ページの動作確認は必須です。これらのページに問題があると、売上に直接影響するからです。また、お問い合わせフォームなどの重要な機能も忘れずにチェックします。

まとめ

WooCommerceの「独自のものをデザイン」機能でテーマがTwenty Twenty-Fourに変わるのは、故障ではなく正常な動作です。この機能は既存テーマのカスタマイズツールではなく、新しいテーマを作成・適用するための機能だからです。

機能の性質を理解すれば、適切な場面で有効活用できます。新規サイトの立ち上げや大幅なリニューアル時には非常に有用な機能です。一方で、既存サイトの小さな調整には向いていません。

重要なのは、目的に応じて最適な方法を選択することです。バックアップを確実に取り、リスクを理解した上で使用すれば、効率的にサイトのデザインを改善できます。

  1. WooCommerceマーケットプレイスは2014年に開始されたWooCommerce公式の拡張機能販売プラットフォームで、テーマ、プラグイン、拡張機能を提供しています – WooCommerce Marketplace について
  2. Twenty Twenty-Fourは2024年にリリースされたWordPressの年次デフォルトテーマで、ブロックエディターに完全対応した設計になっています – Twenty Twenty-Four テーマ
  3. 子テーマは親テーマの機能を継承しつつ独自のカスタマイズを保護する仕組みで、親テーマのアップデート時にもカスタマイズが消失しません – 子テーマの作成方法