モバイルICOCA利用に必要な4つの
要素:FeliCa、NFC、
Googleウォレット、
おサイフケータイアプリの関係

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1. 3つの階層として理解する

AndroidスマートフォンでモバイルICOCAを使おうとすると、

  • FeliCa
  • NFC
  • Googleウォレット
  • おサイフケータイアプリ

という4つの用語が出てきて、どうすれば設定できるのか混乱します。

モバイルICOCA」は、改札やレジでスマホをタッチするだけで決済が完了します。
このとき、「Googleウォレット」で選択されたカード情報をもとに、「おサイフケータイ」アプリがFeliCaチップを通じて通信を行っています。
チャージや設定変更が必要なときだけ、「モバイルICOCA」アプリを開くという使い方になります。

これらの関係は、次のような3層構造として理解できます。

3つの階層として理解する 第1層 おサイフケータイアプリ FeliCa制御・データ保存の土台 第2層 Googleウォレット 表示・管理の窓口 第3層 モバイルICOCAアプリ ICOCA固有機能 改札やレジでは第1層が自動で動作 設定・チャージ時のみ第3層を操作
  • 最下層にあるのが「おサイフケータイ」アプリです。
    FeliCaチップを制御し、電子マネーのデータを保存する土台となります。この層がなければ、日本の電子マネーは一切動きません。
  • 中間層が「Googleウォレット」です。
    登録された電子マネーを一覧表示し、どのカードを使うか選択する窓口の役割を果たします。ユーザーが普段目にするのは主にこの層です。
  • 最上層に各サービスの専用アプリがあります。
    モバイルICOCA」アプリはこの層に位置し、ICOCA固有の機能を提供します。

1.1. 【補足】iPhoneとの違い

対照的に、iPhoneではもっとシンプルです。

iPhoneとの違い Android モバイルICOCA Googleウォレット おサイフケータイ FeliCa VS iPhone ICOCAアプリ Apple Pay + FeliCa Appleは一体型でシンプル Androidは複数メーカー対応のため共通基盤が必要

iPhone 8以降の機種には、本体にFeliCaチップが内蔵されています1。そして、Apple Pay自体がウォレット機能とFeliCa通信の両方を担います。おサイフケータイのような中間層がなく、Apple Payが直接FeliCaチップを制御します。

Appleは自社でハードウェアとソフトウェアを統合して開発できるため、このような一体型の設計が可能です。Androidは様々なメーカーの端末があるため、共通の基盤としておサイフケータイアプリが必要だったという違いがあります。

モバイルICOCAの設定や詳細機能については、iPhone用のICOCAアプリも提供されています。しかし、基本的な通信の仕組みがシンプルなため、Androidほど複雑な階層構造にはなっていません。

2. スマホをICカードにする技術(NFCとFelica)

スマートフォンで交通系ICカードが使える仕組み、「NFC」と「Felica」について見ていきましょう。

スマホをICカードにする技術 FeliCa ソニー開発の 非接触ICチップ カード型ICOCAと 同じ技術 NFC Type F = FeliCa NFC Type A/B (海外主流) とは別規格 重要 NFC対応 ≠ FeliCa対応 海外モデルは使えない

駅の改札でスマホをタッチして通過できるのは、スマホの中に「FeliCa」という小さなチップが入っているからです。FeliCaはソニーが開発した非接触通信技術で、カード型のICOCAやSuicaにも使われています2

つまり、プラスチックカードの中にあった技術が、そのままスマホに搭載されているわけです。

2.1. NFC対応だけどFelica非対応という機種もある(BASIO Active)

「NFC対応」のスマートフォンなら、タッチで決済できるの?

それがそうとも限らないのです。一部のスマートフォンでは「NFC対応」でもFelicaが使えない場合があります。たとえば BASIO activeは、このパターンでした。
NFC機能は提供されているものの、Felicaには対応してません3
マイナンバーカードの読み取りなどはできるのに、「おサイフケータイ」が使えない機種があるのです。

  • 実は、NFCは「Near Field Communication(近距離無線通信)」の略で、世界共通の通信技術の総称です。
  • それに対して、FeliCaは「NFC Type F」という規格の一種です4

NFCにはいくつかの種類があり、海外で主流なのはNFC Type A/Bですが、日本ではNFC Type F、つまりFeliCaが使われています5。ここが重要なポイントで、単に「NFC対応」と書かれたスマホでも、FeliCaに対応していなければ日本の交通系ICカードは使えません。海外モデルのスマホの多くはNFC Type A/Bのみ対応で、FeliCaチップが搭載されていないのです。

3. 「おサイフケータイ」という仕組み

FeliCaチップを搭載しただけでは、スマホで電子マネーは使えません。このチップを動かすソフトウェアが必要です。それが「おサイフケータイアプリ」です6

おサイフケータイという仕組み FeliCaチップ ハードウェア層 おサイフケータイアプリ 基盤ソフトウェア層 ICOCA Suica Edy 各電子マネーアプリ 土台として全ての日本電子マネーを支える

「おサイフケータイ」アプリは、FeliCaチップとスマホのOSを橋渡しする基盤となるアプリです7。Suica、ICOCA、楽天Edy、nanaco、iD、QUICPayなど、日本の主要な電子マネーサービスはすべてこの基盤の上で動いています

このアプリは普段、裏方の役割を担っています。電子マネーのデータを保存し、改札やレジでタッチしたときにFeliCaチップを通じて通信を行います。

「おサイフケータイ対応」と表示されているスマホは、FeliCaチップが搭載され、おサイフケータイアプリがインストールされている端末を指します。つまり、おサイフケータイ対応 = FeliCa対応と考えて差し支えありません。

3.1. 「Googleウォレット」の役割

では、「Googleウォレット」はどこに位置するのでしょうか。

Googleウォレットの役割 Googleウォレット 表示・管理 インターフェース 連携 実際の通信 おサイフケータイ FeliCa制御 基盤 ユーザーが見る画面 ≠ 実際に動く仕組み

「Googleウォレット」は、電子マネーやクレジットカード、ポイントカードなどを一元管理するアプリです。世界中で使われているGoogleのサービスで、日本特有のFeliCaだけでなく、国際的な決済手段にも対応しています。

日本のAndroidスマホでは、Googleウォレットとおサイフケータイアプリが連携して動きます。Googleウォレットで交通系ICカードを選択すると、裏側でおサイフケータイの技術が働いて実際の通信を行います。ユーザーが見るのはGoogleウォレットの画面ですが、実際にFeliCaチップを制御しているのはおサイフケータイアプリなのです。

この分業体制には理由があります。Googleウォレットは世界共通のサービスとして設計されています。しかし、日本のFeliCa技術は2000年代初頭から独自に発展してきた経緯があります。すでに確立していたおサイフケータイの仕組みに、後から参入したGoogleウォレットが表示や管理の部分を担当する形で共存しているのです。

3.2. 「モバイルICOCA」アプリの位置づけ

最後に、「モバイルICOCA」アプリがどこに入るかを見てみましょう。

モバイルICOCAアプリの位置づけ IC OCA チャージ 定期券 利用履歴 P ポイント ICOCA固有の機能を提供 他の交通系ICも同様の専用アプリあり

モバイルICOCA」アプリは、ICOCA特有の機能を提供する専用アプリです。残高へのチャージ、定期券の購入、利用履歴の確認、ポイントチャージなど、ICOCAならではの細かい設定や操作を行います。

JR西日本をはじめとする各交通事業者は、自社サービスの特色ある機能を独自アプリで提供したいと考えます。Googleウォレットだけでは、各社の特別な機能まで対応しきれません。そのため、Googleウォレットが基本的な表示や選択を担当し、詳細な設定はモバイルICOCAアプリで行うという役割分担になっています。

モバイルSuicaやモバイルPASMOも同じ構造です。各事業者が専用アプリを提供し、Googleウォレットとおサイフケータイアプリと連携して動いています。

4. なぜこれほど複雑なのか

この階層構造は日本独特の仕組みで、海外のスマホ決済と比べると複雑です。複雑になった背景には、日本の技術的な歴史があります。

FeliCaは2001年のSuica導入時から使われており、Googleが参入するずっと前から定着していました8。すでに確立していたおサイフケータイという基盤の上に、世界共通のGoogleウォレットが後から加わったため、このような構造になったのです。

また、各交通事業者が独自性を保ちたいという事情もあります。定期券の種類や割引制度、ポイントプログラムなど、各社のサービスには細かな違いがあります。Googleウォレットですべてを統一するのではなく、各社が専用アプリで特色を出せる仕組みが必要だったわけです。

この構造は楽天EdyやnanacoなどFeliCaを使う他の電子マネーにも共通しています。つまり、交通系ICカード特有の問題ではなく、日本の電子マネー全体に見られる特徴なのです。

4.1. まとめ

AndroidスマートフォンでモバイルICOCAを使うには、FeliCaチップ(ハードウェア)、おサイフケータイアプリ(FeliCa制御の基盤)、Googleウォレット(表示・管理インターフェース)、モバイルICOCAアプリ(サービス固有の機能)という4つの要素が必要です。これらは「ハードウェア → 基盤ソフトウェア → 共通インターフェース → 個別サービス」という3層構造で連携しています。NFC対応だけでは不十分で、FeliCa対応(おサイフケータイ対応)が必須である点が日本特有の要件となっています。


  1. 2016年9月16日にApple iPhone 7、iPhone 7 Plus、Apple Watch Series 2が発売され、NXPセミコンダクターズのNFC A, BおよびFeliCaに対応するチップが内蔵された。 – FeliCa – Wikipedia
  2. FeliCaは1988年にソニーが無線ICカードの開発を開始し、1997年に香港の公共交通機関で初めて商用化された。 – FeliCa – Wikipedia
  3. 「NFCとは、(…)国際標準の近接型無線通信方式です。リーダー/ライター(R/W)機能などが本製品でご利用いただけます。※本製品は、FeliCa機能には対応しておりません」- NFCとは | BASIO active SHG09 | オンラインマニュアル(取扱説明書) | au
  4. NFCフォーラムでは、ISO/IEC 18092にもとづくFeliCaの通信技術をNFC-Fと称している。 – NFCとFeliCaの関係 – ソニー株式会社
  5. NFCには主に「Type-A」「Type-B」「Type-F」「ISO/IEC 15693」の4種類の規格がある。Type-AとType-Bは世界標準の規格として世界中で利用されており、Type-F(FeliCa)は主に日本国内や香港などで利用される。 – NFCとは?主な機能やFelicaとの違い、決済方法を解説
  6. 「おサイフケータイ」は、株式会社NTTドコモの登録商標である。 – おサイフケータイ | サービス・機能 | NTTドコモ
  7. モバイルFeliCaプラットフォームは、ソニー株式会社が開発した非接触ICカード技術「FeliCa」をベースとして、フェリカネットワークスが開発したモバイル端末対応のプラットフォームで、2004年におサイフケータイとして提供開始された。フェリカネットワークスはソニーとNTTドコモの合弁会社として2004年1月に設立された。 – モバイルFeliCaプラットフォーム | FeliCa Networks
  8. JR東日本は2001年11月18日に首都圏の鉄道利用者向けに非接触型ICカード「Suica」を導入した。 – Suica – Wikipedia