スマートフォンのICOCAは2種類ある(ApplePayのICOCAとモバイルICOCA)

「スマートフォンでICOCAを使う」というと「モバイルICOCA」を使うのかな、と思いますが、実はそう単純ではありません。

ICOCAは“単なる交通IC”ではなく、電子マネー・ポイント・クレジット決済などが組み合わさったシステムで、「モバイルICOCA」「SMART ICOCA」「無記名ICOCA」など、見た目は似ていても、チャージ方法やポイントの扱いはそれぞれ異なります。

ICOCAにはいくつかの“顔”がある

まず、ICOCAという名前は共通でも、実際には次のように大きく分かれます。

種類かんたんな説明主なチャージ方法WESTERポイント
無記名ICOCA駅で誰でも買える通常カード券売機で現金など×
記名ICOCA名前・生年月日を登録したICOCAカード
(紛失時の再発行)
券売機で現金など○(登録すれば)
ICOCA定期券通常のICOCAに定期券情報を載せたもの券売機で現金など○(登録すれば)
SMART ICOCAクレジットカード連携タイプクイックチャージ(カード決済)◎(自動登録)
Apple PayのICOCAiPhone Apple PayAppleアカウントの
支払い方法でチャージ /
自動券売機でチャージ
○(登録すれば)
モバイルICOCAAndroidスマホ おサイフケータイアプリからクレカでチャージ◎(自動登録)

見た目や名前は似ていますが、技術的には別サービスです。
特にSMART ICOCAとモバイルICOCAは、クレジットカードとの連携機能を持つ点が大きな違いです。

モバイルICOCA

モバイルICOCA」は、Android 向けのスマホ版 ICOCA です。
Androidスマートフォン向けに独自発行します。発行には決済用クレジットカードの登録が必須で、後述するSMART ICOCAとほぼ同等の機能です。

クレジットカードを登録してチャージできますが、自動チャージには対応していません
アプリを開いて「チャージ」ボタンを押すと、その時点でカード決済が行われる「手動チャージ型」です1

クレジットカードによるチャージだけでなく券売機での現金チャージにも対応しています。

Apple PayのICOCA

「Apple PayのICOCA」は、iPhoneやApple Watchで利用できます2

Apple PayのICOCAは、「モバイルICOCA」に先立って導入され、基本的には「記名式ICOCAカードの機能をiPhoneに埋め込んだ」仕組みです。

iOSの「ウォレット」アプリに ICOCA を追加(あるいは移行)することで、鉄道・バス・買い物での支払いが可能になります。チャージや定期券の購入も Apple Pay や ICOCA アプリを通じて可能ですが、クイックチャージやオートチャージには対応していません

すでに利用しているICOCAカードがあれば残高を、Apple PayのICOCAに取り込むこともできます(一部のカードで非対応)。ただし、取り込んだ物理カードは利用できなくなる点には注意が必要です。

SMART ICOCAの仕組み(クレカ登録型交通系ICカード)

SMART ICOCA」は、JR西日本が提供する「クレジットカード登録型のICOCA」のことです。
J-WESTカード(JR西日本グループのクレカ)などを登録して利用します。

ただし、「クレカ登録型」。
例えばSuicaのオートチャージ、「クレカ一体型」の交通系ICとは異なります。

チャージの方式は「クイックチャージ」と呼ばれ、駅の券売機や専用機で操作してチャージします。
意図しないチャージが防ぐため、自分で操作してチャージする方式です3。操作のたびにクレジットカード決済されたり、残高が減ったら自動でクレジットカードから引き落とすオートチャージになったりはしません。

また、登録されているクレジットカードを使わず、自動券売機で現金によるチャージも可能です。

現金チャージ中心のICOCAカード

一方で、駅で買える通常の「ICOCAカード(記名・無記名)」は、現金チャージ専用です。
クレジットカードを直接使うことはできません。
また、WESTERポイントというJR西日本のポイント制度も、登録を行わない限り貯まりません

無記名ICOCAは紛失時の再発行に対応していません4

券売機でかんたんに変える無記名ICOCAは、たくさんのICOCAの中ではやや特殊なんですね。

ICOCAとWESTERポイント

SMART ICOCAやモバイルICOCA、Apple PayのICOCAは、WESTERポイント(チャージ専用)の利用登録が発行時に自動で行われます5。乗車や買い物に応じてポイントが付きます6

一方、記名式のICOCAカードは、利用者が自分でWESTERポイントの登録手続きを行う必要があります。

クレジットカード連携が生む仕組みの違い

クレジットカードを紐づけると、ICOCAの「お金の流れ」が変わります。

  • 通常ICOCAカードは、あらかじめ現金を“入金”してから使います。
  • 一方、SMART ICOCAやモバイルICOCAは、チャージの操作をしてクレジット決済が発生します。

たとえば「1000円チャージ」と操作すると、クレジットカード会社を経由してJR西日本に1000円が支払われ、その金額がICOCA残高として加算されます。
つまり、ICOCAの内部では「電子マネー残高の更新」、外部では「クレジットカードの決済」が同時に進む仕組みです。

ICOCAを使う上で大切なのは、「どの方式が自分の生活スタイルに合うか」を理解することです。
現金中心なら記名ICOCAで十分ですし、クレジットカードをよく使うならSMART ICOCAやモバイルICOCAが便利です。
オートチャージ機能がないことを知っていれば、残高切れで焦る場面も減ります。

  1. JR西日本の公式FAQに「モバイルICOCAでは、クイックチャージやオートチャージはできません」と記載があります。 – クイックチャージやオートチャージはできますか。(JR西日本FAQ)
  2. JR西日本のプレスリリースとプレス一覧ページで開始日と対応端末が告知されています。 – Apple PayのICOCA 本日から開始(JR西日本プレス)Apple PayのICOCA – プレス一覧(JR西日本)
  3. JR西日本の公式FAQは、SMART ICOCAのクイックチャージがオートチャージやオンラインチャージに対応していないと明言しています。 – SMART ICOCAのクイックチャージはオートチャージやオンラインチャージに対応していますか。(JR西日本FAQ)
  4. JR西日本の公式FAQで「無記名のICOCA…紛失再発行のお取扱いはできません」と明記されています。 – 記名式ICOCAを紛失したのですが、再発行できますか。(JR西日本FAQ)
  5. JR西日本の登録方法ページに「発行時に自動で利用登録されます」とあります。 – WESTERポイント(チャージ専用)サービス利用登録方法(JR西日本)
  6. 公式ガイドに、ポイントの月次集計や登録要否が整理されています。 – ポイントをためる(JR西日本)WESTERポイント(チャージ専用)サービス利用登録方法(JR西日本)