$ AIの裏側で回るお金
(黙認される詐欺広告)

Metaが詐欺広告を意図的に収入源として厚遇していたことがバレた」という気になるニュースを見かけました。

AIの裏側で回るお金 詐欺 広告 ¥ AI開発 黙認される詐欺広告

これまで、AIとサイバー犯罪の関係というと、「生成AIで詐欺メールやマルウェアが作りやすくなってしまった」みたいな話が中心でした。
でも今回の話は違います。
AIの開発資金そのものが、詐欺などのサイバー犯罪を黙認することで得られているかもしれないという指摘です。

関連記事

1. 収益の10%が詐欺広告という異常性

2025年11月6日にReutersで公開されたMetaの内部文書によると、Meta社において、1日平均150億件詐欺広告や禁止商品の広告が表示されていた、という事実が明らかになりました1

内部文書が示す数字 年間収益の 10% ≒ 160億ドル 1日あたり 150億件 詐欺広告表示 排除基準:確実性95%以上 94%以下は「ペナルティビッド」で課金継続 出典: Reuters内部文書 (2024年12月)

しかも、これらの広告によって、2024年では収益の約10%、金額にして約160億ドルから得ていた、という推計されます2


一企業の収益の10%がこういう広告から来ているというのは、想像以上です。

1.1. 95%ルールとペナルティビッド

問題を複雑化させているのは、Metaの「ペナルティビッド」という仕組みです3

95%ルールとペナルティビッド 詐欺検出AI 95%以上 広告排除 94%以下 高額課金で 掲載継続 詐欺業者は高利益率のため支払い可能

Metaは、詐欺広告を自動検出するシステムを運用しています。
しかし、詐欺広告を排除するには不十分な仕組みでした。

というのも、広告主が詐欺を行っていることが95%以上確実だとシステムが判断した場合にのみ、その広告を排除していたそうです。
反対に、詐欺と疑わしいけど95%までは確度がない場合には、広告主に高い広告料金(ペナルティビッド)を課すものの、掲載そのものは続けさせていたわけです。

1.2. オークション広告の構造的問題

ペナルティビッドは、詐欺のような高利益率ビジネスにとっては、そこまで抑止力になっていません。
「詐欺的な広告」であっても、お金さえ払えば掲載してもらえるからです。

オークションベースの広告モデルでは、最も高い入札価格を出した者が勝ちます。
詐欺は、真っ当なビジネスよりも利益率が高いため、同じ広告枠を取り合ったとき、詐欺業者の方が高い金額を払えます。
そして、広告プラットフォーム側にとっては、その高額入札は「お得意先」なのです。

被害額の大きな詐欺案件ほど、ペナルティビッドを支払ったとしても、「採算」が取れてしまうのです。

この構造は、Meta社に限らず、Google・YouTubeなども、ほかの広告ビジネスをやっているプラットフォームにも当てはまりそうです。

たとえば、Google検索やAmazonでも詐欺っぽい商品広告は多いですよね。
「日本製」と謳いながら住所を確認すると中国だった、みたいな話はよく聞きます。
また、LINEも詐欺の誘導先として使われているけど、まともな通報先がなく「いたちごっこ」になっています。

2. AIが被害者を追いかける(ターゲティング広告)

ここでもう一つ問題になるのは、詐欺広告の表示の仕方です。

AIが被害者を追いかける 利用者 クリック 詐欺広告 学習 AI さらに表示 ターゲティング広告 一度騙されかけた人に 次々と詐欺広告を表示 = 被害者の商品化

Metaのプラットフォームでは、ユーザーの関心に沿って広告を配信するAIシステムレコメンドシステム)が動いています。
すると、「詐欺広告をクリックした利用者はより多くの詐欺広告が表示される可能性が高く」なります4

つまり、一度騙されかけた人が、次々と標的にされる構造になっているわけです。

2.1. 被害者が商品化される

元Meta社の安全担当者だったサンディープ・アブラハム氏は、こう指摘しています。

「銀行は犯罪組織から利益を得てはならないと規制されているので、ハイテク業界においても容認すべきではない」

これ、本質を突いてると思います。

銀行が詐欺師に協力して手数料を取っていたら大問題ですよね。
でも、プラットフォーム企業が同じことをしても、なぜか許されている。

しかも、ただ放置しているだけじゃない。
AIで「騙されやすい人」を識別して、その人に優先的に詐欺広告を表示している。
つまり、被害者を商品として詐欺師に売っているような状態なのです。

3. AI開発への巨額投資

このようなグレーゾーンの収益に手を伸ばしやすい要因に、AI開発競争に伴う資金需要があると考えられます。

AI開発への巨額投資 詐欺広告収益 160億ドル AI投資(2024年) 400億ドル 2025年: 660-720億 2028年までのデータセンター投資 6000億ドル計画

Meta社のCEOのザッカーバーグ氏は、2028年までに米国のデータセンターとインフラに少なくとも6000億ドルを投資すると表明しています5

2025年、AIインフラへの投資として660〜720億ドルを計画していることがわかりました。
これは、2024年と比べて約300億ドル増えていて、さらに2026年も同様の大幅増加を予定しているそうです。

この数字を並べてみると:

  • 詐欺広告収益:年間 約160億ドル(2024年)
  • AI投資:年間 約400億ドル(2024年)

もちろん、詐欺広告収益だけでAI開発を賄っているわけではありません。
でも、無視できない規模の資金が、この経路で流れていると言えます。

3.1. 罰金より利益が大きい計算

内部文書には、もっと生々しい話も載っていました。

規制は機能しているのか 予想罰金 10億 ドル < 半年収益 35億 ドル 米SEC 調査中 英国規制当局 被害の54% 罰則が軽すぎて抑止力にならない

「規制当局からの罰金は最大10億ドルと予想されていたけれど、高リスク詐欺広告から半年で35億ドルの収益が得られる。だから、罰金を払ってでも続けた方が得だ」、という判断が示されていたそうです6

ビジネス的な合理的だけに基づいて判断してしまうと、詐欺被害を増やすことに加担してしまうのです。

4. 規制は機能しているのか

このような詐欺広告は、市場経済だけでは解決しないため、法規制が必要です。

規制は機能しているのか 1 罰則が軽すぎて抑止力なし 2 社会的コストは外部化 3 オークション広告の構造的問題

今回のケースでは、AIは「騙されやすい人を識別して、その人に詐欺広告を表示する」という使われ方をしていました。そして、そのAIを開発する資金が、詐欺広告収益から来ている。つまり、技術が進歩するほど、被害が拡大する構造になっています。

「基本無料」のサービスは、広告収益で成り立っています。でも、広告モデルそのものに、詐欺を優遇する構造が組み込まれているとしたら。これは個別企業のモラルもさることながら、ビジネスモデルに根ざした問題なのかもしれません。

これは、現在の規制では罰則が軽すぎて、抑止力になっていないからです。
罰金を払ってでも続けた方が儲かるなら、企業は合理的にそちらを選んでしまいます。

4.1. 外部化されるコスト

詐欺被害者が負担する金銭的・精神的コストは、プラットフォーム企業の収益計算に含まれていません。つまり、社会的なコストを外部化して、利益だけを内部化している状態です。

たとえば、英国のデータによると、2023年の決済関連詐欺被害の54%にMetaのサービスが関連していて、これは他のSNSを全部合わせた数字の2倍以上だそうです。金融詐欺広告については、米国のSEC(証券取引委員会)や英国の規制当局などが、Meta社を調査中です。

Meta社によると、「詐欺広告のチェックの改善で、報告件数が58%減った」とも言っていますが、正確な数字は公表していないため、絶対数は不明です。

5. おわりに

Meta社の詐欺広告問題は、単なる「審査の甘さ」ではありません。

システムとして、被害者を識別し、ターゲティングし、収益化する構造ができあがっている。そして、その収益がAI開発に投資され、さらに高度なターゲティングを可能にする。

これは、AI開発の資金源の正当性についての問題です。
この構造を知った上で、私たちは何を選択するのか。
それを考える必要があると思います。

  • 米メタ、詐欺広告などで巨額収益か 1日150億件表示=内部文書 | ロイター
  • 深津 貴之 / THE GUILDさん: 「メモ。AIと仮想通貨が、可処分電力で競合関係にある。 ブロックチェーンの提供する社会機能の9割ぐらいは、ブロックチェーン無しにも成立するので、電力足らなくなると、どうなるんか。」 / X
  • もへもへさん: 海外で大ニュースになってるが、「Meta」が「詐欺広告を取り締まるどころか意図的に収入源としてある意味厚遇していた」ということがバレた内部文書が流出。 ここには書いてないが「詐欺広告には削除じゃなくて高い広告料を吹っ掛けて利益にする」とかやってたのがバレた。」 / X
  • Brandon K. Hill | CEO of btrax/2さん: 「内部リークで判明した、Metaの内情。“詐欺広告”で稼ぎ、その収益でAI開発に巨額投資。内部資料によると、認識していながらも、詐欺まがいの広告などをあえて放置。犠牲になりやすそうなユーザーに表示することでの利益を優先し、その売上を元にAI開発を進めていた。」 / X
  1. 2024年12月の内部文書では、Metaのプラットフォーム上で1日平均150億件の「高リスク」詐欺広告がユーザーに表示されていたことが記録されている。 – Meta reportedly projected 10% of 2024 sales came from scam, fraud ads
  2. Reutersが入手した内部文書によると、Meta社は2024年の収益の10.1%、約160億ドルが詐欺や禁止商品の広告から得られると内部で推計していた。 – Leaked Documents Unveil Meta’s $16 Billion Revenue Projection From Scam Ads
  3. Metaの内部ポリシーでは、自動システムが広告主の詐欺行為について95%以上の確実性を予測した場合のみ、その広告主を禁止する方針だった。95%未満の場合は「ペナルティビッド」として高額な広告料金を課すことで収益化していた。 – Leaked Meta docs reveal disturbing details of its advertising business
  4. MetaのAI駆動型広告パーソナライゼーションシステムにより、詐欺広告をクリックしたユーザーは、その行動がシステムに学習され、さらに多くの詐欺広告が表示されるようになっていた。 – Internal Meta documents suggest that 10% of its 2024 revenue came from fraudulent ads
  5. Metaは2025年の資本支出として660億〜720億ドルを計画しており、これは2024年比で約300億ドルの増加となる。主にAIデータセンター開発に投資される。 – Meta to spend up to $72B on AI infrastructure in 2025 as compute arms race escalates
  6. 内部文書には、規制当局からの予想罰金額が約10億ドルであるのに対し、高リスク詐欺広告からは半年間で35億ドルの収益が得られるため、罰金を支払ってもビジネスを継続する方が経済的に合理的であるという分析が含まれていた。 – Leaked Meta documents reveal $16 billion revenue from fraudulent ads and banned products