Wi-Fi接続のプリンターで
WSDとIPPが両方追加された

Windows PCにCanonのプリンターをWi-Fiで接続しました。
Canon公式のドライバーセットアップを実行すると、特に迷うことなく設定は完了し、テスト印刷も問題なく通りました。一見すると、ここまではよくある導入作業です。

ところが、その後Windowsの「設定」からプリンター一覧を確認していると、同じ機種名のプリンターがもう一つ表示されていることに気づきました。

関連記事

1. Canonドライバーセットアップで追加されたWSDポート

まず、Canonのドライバーセットアップで何が行われていたのかを確認しました。
プリンターのプロパティを開き、「ポート」タブを見ると、WSD-xxxx という名前のポートが割り当てられています。

WSDは「Web Services for Devices」の略で、Windowsが用意している自動検出の仕組みです。同じネットワーク内にある機器を自動で見つけ、設定まで済ませてくれます。
ユーザーがIPアドレスを入力しなくてよい点が特徴です。

2. Windows設定から追加されたIPPポート

次に、Windowsの「設定 → プリンターの追加」から表示されたプリンターを選んでみました。
すると、同じプリンターが新たに追加されました。

こちらのプリンターのポートを確認すると、「IPP Port」と表示されています。
IPPは「Internet Printing Protocol」の略で、HTTP通信を使う標準的なネットワーク印刷方式です。
Windowsだけでなく、macOSやLinuxでも共通して使われています。

つまり、Canonのセットアップとは別の経路で、Windows自身がプリンターを見つけ、IPP方式で登録したことになります。

3. 同じプリンターなのに2つある状態

ここで起きていたのは、次のような状態でした。

物理的には1台のプリンターですが、Windows上では「WSD方式のプリンター」と「IPP方式のプリンター」が別物として登録されています。
見た目の名前はほぼ同じでも、中身の通信方法が違います。

この状態でも印刷はできます。
ただ、どちらが使われているのかは意識しないと分かりません。

4. WSDとIPPの違い

違いを理解するため、それぞれの特徴を調べました。

WSDは、Microsoftが策定した
「ユーザー操作を極力減らすための自動検出・自動設定向け仕組み」 です。

家庭内ネットワークや小規模環境で、
「つなげば使える」体験を実現することが目的です。

4.1. WSDポートの特徴は、

  • IPアドレスを直接指定しない
  • プリンター識別はUUIDなどの論理IDに依存
  • ネットワーク状態の変化に強く依存
  • Windowsのデバイス管理機構と密結合

WSDは自動検出が強みです。
一方で、ルーターの再起動やIPアドレスの変更があると、突然オフラインになる例が多く報告されています。

WSDは複数の技術の集合体です。

  • WS-Discovery
    → UDPマルチキャストによる機器探索
  • SOAP / XML
    → デバイス情報・機能の記述
  • HTTP
    → 実際の制御通信
  • Windows独自のデバイス管理レイヤー

プリンターはネットワーク上で
「私はここにいます」「この機能があります」
という情報を常にアナウンスします。

Windowsはそれを受信し、
動的にポート(WSD-xxxx)を生成します。

4.2. IPP

IPPはIETFで標準化された
「ネットワーク越しに印刷するための共通プロトコル」 です。

目的は一貫性と相互運用性です。

IPPは非常にシンプルです。

  • 通信:HTTP または HTTPS
  • エンドポイント:明示的なURL
    例:http://printer-ip/ipp/print
  • データ形式:IPP定義の属性+印刷データ

プリンターは「サーバー」として振る舞い、
PCは「クライアント」として直接通信します。

4.3. IPPポートの特徴

  • IPアドレスやホスト名を明示的に指定
  • 通信経路が固定
  • ステートレスに近い動作
  • OSやメーカーに依存しにくい

IPPは設定時に少し手間がかかりますが、通信が単純で挙動が安定しています。
Windows標準の仕組みとして扱われるため、更新や再起動の影響も受けにくい印象でした。

5. おわりに:2つ追加された理由が分かると安心できる

今回の出来事は不具合ではありません。Canonの自動セットアップと、Windowsの標準的な探索方法が、それぞれ別の思想で動いた結果です。

理由が分からないままだと不安になりますが、仕組みを整理すると納得できます。同じように「プリンターが2つある」と戸惑った人の参考になれば幸いです。