- ケーブルモデムはCATVインターネットの終端装置で、同軸ケーブルの信号をEthernetに変換する機器です。
- ONUは光回線終端装置で、光ファイバーの光信号をEthernetに変換する役割を担います。
- 家庭用インターネットはダイヤルアップ、ISDN、ADSL、CATVインターネットと進化し、現在は光ファイバーを直接引くFTTHが主流です。
1. 「ケーブルモデム」
家庭のネット機器を見てみると、壁から来たケーブルにつながった小さな箱が置いてあります。
この中に、「ケーブルモデム」という機器がありました。
「モデム」といえば、電話回線を使っていたときの「変調器」。
最近の光回線では「ONU」という機器になり、耳にすることが減りました。
1.1. ケーブルモデムはCATVの終端装置
「ケーブルモデム」は、CATVインターネットで使う終端装置です。
CATVインターネットとは、ケーブルテレビ回線を使ったインターネットサービスのこと。
壁から来ているのは、テレビアンテナと同じねじ式の「同軸ケーブル」です。
ケーブルモデムの役割は、同軸ケーブルの信号をEthernetに変換することです。
Ethernetは、有線LANの規格で、スマホやパソコン、ルーターなどのインターネット機器が利用できるようになります。
1.2. ONUは光回線終端装置
ONU(Optical Network Unit)は光回線終端装置とも呼ばれ、NTTなどの光回線で使う終端装置です。
こちらは、壁まで来ているのは細い光ファイバーケーブル。
ONUは、光信号をEthernetに変換します。
ケーブルモデムもONUも、さらにWi-Fiルーターをつないで使うことが多いです。
ただし、1台で完結する構成も珍しくありません。
ケーブルモデムとルーターが一体になった機器や、ONUとルーターが一体になった機器もあるからです。
2. 帯域の共有と混雑
ざっくり言えば、ケーブルTV回線の方が光回線よりも古い方式です。
CATVインターネットと光回線では、帯域の共有方式に違いがあります。
CATVインターネットは地域の利用者で帯域(通信容量)を共有する構成になりやすく、時間帯によって速度が変わることがあります。
一方、光回線ても共有はしますが、送信タイミングを分割して割り当てる設計で、安定しやすい傾向があります1。
2.1. ケーブルTV回線に光が来ていることも
ただ、最近のCATVインターネットは、光回線に置き換わっていることも多いです。
従来のCATVインターネットは、途中までは光回線で家庭までに同軸ケーブルを使う混合構成(HFC:Hybrid Fiber-Coaxial)が主流でした。
しかし、最近は光ファイバーを家庭まで直接引くプラン(FTTH)も増えています2。
その場合、終端装置はケーブルモデムではなくONUに近い機器になります。
つまり、ケーブルTV事業者と契約していても、機器は光回線と変わらない、ということもあります。
3. 電話線から始まったインターネット接続
CATVインターネットは、インターネット回線がどのように発展してきたかを知ると、整理しやすくなります。
家庭用インターネットの出発点は、電話線でした。
1990年代、一般家庭がインターネットに接続する手段は主にダイヤルアップ接続でした。
アナログモデムを電話線につなぎ、プロバイダの番号に電話をかけて接続する方式です。
通信中は電話回線を占有するため、ネットをしている間は電話が使えません。
速度も遅く、常時接続ではありませんでした。
電話局から家庭までつなぐ銅の電話線を使って、電気信号をやり取りします。
その後、登場したのは ISDN(Integrated Services Digital Network)。
電話網をデジタル化した規格で、アナログモデムよりは速く、複数チャンネルを使えるのが利点でしたが3、後のブロードバンドと比べると速度が遅く、過渡期の技術と言えます。
3.1. ブロードバンド(ADSLとCATVインターネット)
1990年代末から2000年代初頭にかけて、「ブロードバンド(広い帯域)」と呼ばれる高速インターネットが家庭に普及し始めました。
その担い手は、ADSLとCATVインターネットでした。
ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line、非対称デジタル加入者線)は、既存の電話線をそのまま使いながら、音声用とは別の高い周波数帯でデータ通信を行う方式です。
新しい線を引かずに高速化できたため急速に普及し、ITU-Tの勧告G.992.1が1999年に承認されたちょうどその頃から広まりました。
電話線を使うという点でダイヤルアップやISDNと同系譜にありますが、速度は桁違いに向上しました。
一方、CATVインターネットでは、電話回線とは別のインフラを使います。
もともとケーブルテレビを配信するために整備された同軸ケーブルの網を、インターネットにも転用したのです4。
このネットワークは一般に、「途中までは光、最後はテレビ線」というHFC構成を取りました。
事業者の局舎から地域の途中までは光ファイバーで信号を運び、そこから各家庭までは同軸ケーブルに切り替える、という方法です。
ADSLが電話線を再利用したように、CATVインターネットはケーブルテレビのインフラを再利用しました。
既存の網をインターネットに転用したという点で、両者は似た発想から生まれています。
ケーブルモデムは、この同軸ケーブルの信号をインターネット用の電気信号(Ethernet)に変換するために生まれた機器です5。
3.2. 光ファイバーの到達(FTTH)
ADSLとCATVインターネットが普及する中で、より高速で安定した方式として広まっていったのがFTTH(Fiber To The Home)です。
日本ではNTT東日本・西日本が2001年に「Bフレッツ」として家庭向けFTTHサービスを本格開始し、その後20年ほどで主流となりました6。
局から家庭まで全区間を光ファイバーで引く方式で、電話線でも同軸でも混合でもない、純粋な光回線です。
ONUは、この光ファイバーの信号をEthernetに変換するために用意された機器です。
4. まとめ
電話線の時代から数えると、回線の変遷は次のようになります。
- ダイヤルアップ(電話線、低速、常時接続なし)
- ISDN(電話線のデジタル化、過渡期)
- ADSL(電話線をブロードバンド化)
- CATVインターネット(同軸ケーブル網を転用、HFC構成)
- FTTH(局から家まで全区間が光ファイバー)
CATVインターネットとFTTHはほぼ同時期に広まり始めましたが、最終的には光ファイバーが主流になっています。
ケーブルモデムとONUは、それぞれ異なる時代のインフラが家庭に届く接点として生まれた機器です。
歴史を知ると、壁の穴から伸びるケーブルが何を運んでいるのかが、少し具体的に見えてきます。
- PON方式では、OLT(光回線終端局側装置)から光スプリッターを介して複数のONUへ信号を分岐します。上り通信はTDMA(時分割多元接続)で各ONUに送信タイミングを割り当てることで衝突を防いでいます。 – パッシブ光ネットワーク(PON)概要(VIAVI Solutions)
- CATV最大手のJCOMは2024年6月、同軸ケーブル網からFTTHへの転換を積極的に進める方針を発表しました。MM総研によれば、CATVアクセスのFTTH化はFTTH市場全体の成長を支える要因の一つとして分析されています。 – FTTH純増数は緩やかな減少傾向続く(MM総研)
- 日本のISDNサービス「INSネット64」は1988年にNTTが東京・名古屋・大阪の3地域で開始しました。最大伝送速度は128kbps(64kbps×2回線)で、当時のアナログモデムより高速でした。NTTのISDNサービスは2028年12月にサービス終了が予定されています。 – NTTグループの歩み(NTT)
- 日本最初のCATVインターネットサービスは1996年10月に武蔵野三鷹ケーブルテレビ(現J:COM武蔵野・三鷹)が開始しました。当時のインターネット接続はダイヤルアップが主流だったため、常時接続サービスは画期的なものとして注目を集めました。 – 通信サービス(日本ケーブルテレビ連盟)
- ケーブルモデムの標準規格DOCSISは、1990年代に乱立していたメーカー独自方式を統合する目的で策定されました。1996年に業界コンソーシアムMCNSがDOCSIS 1.0の草案をまとめ、CableLabs(ケーブル事業者が1988年に設立した非営利研究機関)に委託して規格化が進みました。その後DOCSIS 3.1では最大下り10Gbpsに対応しています。 – ケーブルモデム(Wikipedia)
- NTTグループによるFTTHの商用化にむけた研究・試験は1990年代から進められていましたが、一般家庭向けの本格サービスは2001年のBフレッツ開始が起点です。2024年3月末時点でFTTHの契約数は約4,036万件に達しています。 – NTT東日本の歴史(NTT東日本)