1. 生成したスライドがごちゃごちゃしている?
最初に使っていたプロンプトはこれです。
横長16:9のスライド画像で、図解で説明してください。
文章は大きく、なるべく簡潔にまとめて。
配色は、白背景で、アクセントカラーとテーマカラーを意識して。Code language: CSS (css)
できあがるスライドは、見た目は整っていました。
でも何かが違う。


情報が全部並んでいて、どこを見ればいいか分からない。
「一番伝えたいこと」が、周囲の要素と同じ重さで置かれていました1。
1.1. AIは「削る」判断ができない
見た目の指定だけ渡すと、AIは受け取った情報を全部使おうとします。

デザインの指示があっても、情報の取捨選択を促す指示がなければ、「できるだけ漏れなく、見やすく」という方向に動きます2。
「どこを削っていいか」の判断材料が指示に含まれていないので、削れないのです3。
スライドの見た目を整えることと、伝わるスライドを作ることは別の問題です。
前者は「どう見せるか」を決め、後者は「何だけ見せるか」を決めます。
シンプルなプロンプトは前者しか指定していなかった。
2. SNS発信者の分析をプロンプトに取り込む
そこで、プロンプトを改善するにあたって、X(旧Twitter)などでスライドデザインの知見を発信しているクリエイターの名前を例示してみて、AIにウェブ検索で知見とコツを調査させてみました。
指示はこうです。
「これらの発信者の作るスライドの特徴を分析してください。
特に情報の絞り込み方、その上での強調の仕方を取り入れたいです」と伝えました。
スライドそのものではなく、公開されている情報をもとにAIが分析すると、共通して出てきたのは、「削ってから強調する」という順序でした。
装飾や強調の技法に目が向きがちですが、情報を1つに絞る工程が先にあって、強調はその後についてくる。
AIはこれを「目立たせるものを1つに決める技術が先にある」と整理しました。
- 「覚えてほしい一文」を先に決めてから逆算して削ること。
- 強調は色を増やすのでなく周囲の情報を取り除くことで生まれること。
- Before/Afterや原因→結果といったレイアウトの型を先に選ぶことで、削る基準が自然に絞られること。
2.1. 情報設計の言葉で指示する(短い版)
「これを踏まえて、元のプロンプトを改善し、短い版と長い版を提示して」と指示しました。

出来上がったプロンプトは、
以下の内容を、横長16:9のスライド画像として図解で作成してください。
1枚1メッセージで、最も伝えたい結論を見出しで短く言い切ってください。
情報は必要最小限に絞り、結論を支える要素だけを最大3点まで整理してください。
文章は大きく簡潔にし、図解・比較・矢印を中心に構成してください。
最重要のキーワードや数値を1か所だけ強く目立たせ、他は控えめにしてください。
白背景、テーマカラー1色、アクセントカラー1色で整え、余白を広く使って、見やすく洗練されたデザインにしてください。Code language: CSS (css)
- 1枚1メッセージ
- 情報は最大3点に絞る
- 見出しは結論を言い切る
- 強調は1か所だけ
これをプロンプトに書き込むことで、AIが「何を残して何を捨てるか」を判断できるようになりました4。

3. 長い版はより詳細に
プロンプト案として、短いものと長いものを出させました。
精度を上げたいとき、または初めて試す内容に向いています5。
以下の内容を、横長16:9の1枚スライド画像として、図解中心で作成してください。
目的は、見た人が短時間で要点を理解できることです。
まず情報を整理し、このスライドで最も伝えたい結論を1つだけ決めてください。
見出しには、その結論を短く言い切りで入れてください。
本文には、結論を支える情報だけを残し、情報量は必要最小限に絞ってください。
要素は最大3点程度までに整理し、長文ではなく短い語句や短文で表現してください。
説明は文章の羅列ではなく、図解、比較、矢印、囲み、関係図などを使って視覚的に伝えてください。
最も重要な結論、数値、キーワードのいずれか1つを主役として大きく強調し、それ以外は控えめに配置してください。
強調は、文字サイズ、太さ、余白、コントラストで行い、色の使いすぎは避けてください。
レイアウトは、上部に結論の見出し、中央に図解、下部に補足情報という構成にしてください。
文章は大きく、簡潔で、ひと目で理解できる表現にしてください。
白背景を基本にし、テーマカラー1色とアクセントカラー1色でまとめてください。
アクセントカラーは、重要箇所の強調にのみ使ってください。
不要な装飾、不要な情報、細かすぎる説明は入れず、余白を十分に使って、洗練されたビジネススライドにしてください。Code language: CSS (css)

長い版は指示の意図を細かく渡せる分、AIが判断に使える情報が増えます。
毎回書くには手間がかかるので、定型文として保存しておいてコピー・ペーストで使えるようにしておくと便利です。
3.1. 元のシンプル版が無駄だったかというと
そうでもありません。
スライドのビジュアルを素早く確認したいだけなら、シンプル版でも十分です。
ただ、「伝えるスライド」が必要なときだけ、情報設計の指示を加える。
用途によって使い分けます。




強調が効くのは、強調するものを1つに絞ってからです6。
プロンプトも同じで、「何を削るか」を先に決める指示があるから、「何を目立たせるか」の指示が機能します。
- 1枚のスライドに複数のメッセージが詰め込まれると、聞き手はどこに注目すべきかが分からなくなる。情報量を減らすことで、フォントを大きくしたり図版を入れるスペースが生まれ、伝わりやすさが上がる – 一流のプレゼン資料は、「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない
- 出力形式や制約条件をプロンプトに明示しないと、AIは文章量や構成にばらつきが出やすい。「何を入れないか」「どの程度の量か」といった制約を加えることで、すぐに使える出力が得られやすくなる – AIプロンプトとは?役割や種類、作成のポイントを解説
- 同じAIでも「文章を書いて」という指示と「中学生向けに500文字で、具体例を交えて」という指示では、出力の精度が大きく変わる。プロンプトは単なる命令文ではなく、生成物の設計図として機能する – AI用語の基礎知識【第3回】「プロンプト」とは
- 「1スライド=1メッセージ」はプレゼン設計の原則として広く知られる。また、人が一度に記憶しやすい情報の数は3つ程度とされ(マジカルナンバー3)、伝えるポイントをそれ以上増やすと印象が薄れていく – なぜ、プレゼンの達人たちは「3」の魔術にこだわるのか?
- タスクが複雑な場合や特定の形式を必要とする場合、具体的で詳細な指示を含めることで出力の精度が上がる。一方で冗長な指示や矛盾する指示はかえって効果を下げるため、必要な情報に絞ることも意識したい – プロンプト戦略の概要(Google Cloud)
- 視覚的階層(ビジュアルヒエラルキー)とは、情報要素の重要度に応じて視覚的に優先順位をつけ、重要度の高い情報から視線を誘導する構成のこと。強調する箇所を1か所に絞り、周囲に余白を持たせることで、最も重要な要素に視線が集まりやすくなる – スライド資料作成に活用できるUXデザインの手法「視覚的階層」