2回目の万博来場で起きた混乱
以下のような相談がありました。
万博に一度行った後、友人が余っていたチケットをくれたので、また行くことにしました。
前回と同じようにチケットIDを登録すればいいと思っていたのですが、なぜかメールアドレスの登録でうまくいきません。「このメールアドレスは既に使用されています」というエラーが表示され、先に進めなくなってしまいました。
実は、「前回と同じようにチケットIDを登録」しようとすると、うまくいかないことがあります。それは、重複した万博IDを作ろうとしてしまうこと。
万博IDとチケットIDの関係性
実は、チケットIDを登録したメールアドレスは、一度きりではありません。


これは、「万博ID」というアカウントを作ったことになります。インターネットサービスに慣れていないと、見落としがちなポイントです。
「チケット」を使うには、「万博ID」に10桁の英数字で構成された「チケットID」を登録する必要があります。そうすることで、初めてチケットが使用可能になります。
「万博ID」はチケットの入れ物
2回目以降の来場では、同じメールアドレスで万博IDを作成することはできませんし、その必要もありません。
「万博ID」は、チケットを登録する「いれもの」。
前回使用した万博IDとパスワードで、そのままログインして利用します。
- 「万博ID」にログインすれば、マイチケット画面に進むことができます。
- 「チケットの追加登録」を選択し、新しいチケットIDを入力欄に打ち込みます。
- 「追加」ボタンをクリックして、同じ万博IDに複数回分のチケットを登録できます。
システム上は、一つの万博IDに最大10枚までのチケットを同時登録できます。日付が異なるチケットでも、管理できるのです。
メールアドレス制限の技術的背景
万博IDシステムでは、メールアドレスに対して永続的な識別子が割り当てられています。一度万博ID登録に使用したメールアドレスは、退会後も20日間は再利用できません。
さらに、チケット購入や登録の履歴がある場合、そのメールアドレスは既存の万博IDと自動的に関連付けられます。これにより、重複アカウントの作成やチケットの不正利用を防いでいます。
データベース設計上、メールアドレスは一意制約(ユニークキー)として管理されています。これは、一つのメールアドレスに対して複数のアカウントが存在することを技術的に禁止する仕組みです。
混乱を避けるための理解すべきポイント
万博IDは使い捨てのアカウントではありません。一度作成したら、期間中はずっと同じIDとパスワードを使い続けます。
新しいチケットを購入するたびに新しいアカウントを作る必要はありません。既存の万博IDに追加登録していく形になります。これは、図書館の利用カードに新しい本の貸出記録を追加していくのと似ています。
また、万博IDを忘れてしまった場合は、ログインページの「万博IDをお忘れの方」から確認できます。パスワードを忘れた場合も、同様にリセット機能が用意されています。
現在のWebサービス事情との違い
現在のWebサービスでは、「まず登録」が当たり前になっています。新しいサービスを使うたびにアカウントを作成し、メモアプリで管理する人も多いでしょう。
しかし万博IDは、この常識とは異なる設計でした。一度作成したアカウントを長期間使い続ける前提で作られています。イベント期間中は同じID、つまり同じメールアドレスとパスワードがそのまま有効だったのです。
この設計思想の違いが、2回目来場時の混乱を生んでいました。「新しいチケット=新しいアカウント」という先入観が、かえって障害となってしまったのです。
システム設計から見えること
万博IDとチケットIDの紐づけシステムは、大規模イベントにおけるデジタルチケット管理の特殊性を表しています。セキュリティと利便性の両立を図りながら、同時に大量のユーザーを処理する必要がありました。
メールアドレス制限という一見不便に見える仕組みも、実際には不正利用防止とアカウント管理の簡素化という目的がありました。結果として、慣れてしまえば一つのアカウントですべてのチケットを管理できる、むしろシンプルなシステムだったのです。
万博IDとチケットIDの紐づけは、「一度作成したアカウントを継続利用する」という設計思想に基づいた、期間限定イベント特有のシステムでした。