AtomからVS Codeへ
(IDEと軽量エディタ)

2010年代の前半、エディタの話題といえばAtomやSublime Textが中心だった記憶があります。
それがいつの間にか、気づけばVisual Studio Codeが「とりあえずこれを使っておけばよい」存在になっていました。

振り返ってみると、そこにはIDEの時代、軽量エディタの時代、それぞれの反省と積み重ねがあったように思います。

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1. IDE全盛期(2000年代)

IDE全盛期(2000年代) Eclipse Java開発の定番 ✓ コード補完 ✓ リファクタリング ✓ デバッガ完備 Visual Studio C#/C++の世界 ✓ 高い完成度 ✓ 洗練された体験 ✓ 有料 起動が重く、設定が複雑

1.1. Eclipseが当たり前だったころ

2000年代後半から2010年前後にかけて、Java開発といえばEclipseという空気がありました。
コード補完、リファクタリング、デバッガ。
開発に必要なものは最初から全部そろっていて、「IDE(統合開発環境)」という言葉そのものがしっくりくるツールでした。

一方で、起動が重く、設定やプラグインの管理が複雑になりがちだったのも事実です。

1.2. Visual Studioは別の完成形だった

C#やC++の世界では、Visual Studioが同じように強い存在感を持っていました。
こちらも完成度が非常に高く、IDEとしての体験は洗練されていましたが、有料でした。

このころは、「IDEでやる開発」と「テキストエディタでやる作業」が、はっきり分かれていたように思います。

2. 軽量エディタの登場(2010年代)

軽量エディタの登場(2010年代) Sublime Text 2011年〜 軽量・高速起動 コードに集中できる Atom 2014年〜 すべてがハック可能 Electron製 (動作は重め) IDEの重さからの解放

2.1. Sublime Textがもたらした転換

2011年ごろになると、Sublime Textが一気に広まりました1
とにかく軽く、起動が速く、コードを書くことに集中できる。

IDEの重さに疲れていた身としては、「これで十分では?」と感じたのを覚えています。
ただし、デバッグや高度な解析は外部ツールに頼る必要があり、万能ではありませんでした。

2.2. Atomという実験的な存在

その流れの中で登場したのがAtomです。
GitHubが開発し、「すべてがハック可能(Hackable)」という思想を前面に出していました2

内部はElectronという技術で作られており、HTMLやJavaScriptでエディタ自体を拡張できます3
エディタなのにWebアプリのよう、という感覚は当時かなり新鮮でした。

ただ、自由度が高い分、動作が重くなりやすいという課題もありました。
使っていて楽しい一方で、常用には少し工夫が必要だった印象です。

3. VS Codeの登場

VS Codeの登場 Visual Studio Code Electronなのに軽量 必要時にIDE並み Language Server Protocolで IDE機能を外部プロセス化

3.1. Electronでも速い

Visual Studio Codeが登場したとき、最初はVisual Studioのエディタ部分を独立させたものだと思いました。
しかし実際には、Visual Studioとは別に、Electronベースで、一から設計された、独立したプロダクトです。
Electronベースという意味では、Atomとも共通しますが、コードは別です。

VS Codeは、継続的な最適化で動作が軽く、安定していきました4
この「Electronなのに速い」という点が、まず強く印象に残りました。

3.2. IDEとエディタの境界が曖昧になる

VS Codeは、見た目は軽量エディタですが、内部では言語サーバー(Language Server Protocol)などを使い、IDE的な機能を外部プロセスとして扱っています5
必要な機能だけを後から足していく構造です。

その結果、
「普段は軽いエディタ、必要なときはIDE並み」
という使い方が自然にできるようになりました。

4. GitHubとMicrosoft、そしてAtomの終わり

GitHubとMicrosoft、Atomの終わり 2018年 Microsoft がGitHub買収 2022年 Atom 開発終了 VS Codeに集約 Atomの思想は VS Codeに受け継がれた

4.1. 買収が意味したもの

2018年にMicrosoftがGitHubを買収したことで、AtomとVS Codeは同じ企業グループに属することになりました6
その後、2022年にAtomの開発終了が発表されます7

コードが統合されたわけではありませんが、
「エディタはVS Codeに集約する」
という判断だったのだろうと考えています。

4.2. Atomは役割を終えたのか

Atomは消えましたが、その思想や実験性は無駄になっていません8
拡張前提、Web技術の活用、オープンな開発文化。

それらは、形を変えてVS Codeの中に生きているように見えます。

5. 振り返って思うこと

IDE、軽量エディタ、そのどちらかを選ぶ時代は終わったのかもしれません。
VS Codeは、その中間に自然と落ち着いた存在です9

個人的には、
「Eclipseで疲れ、Sublimeで物足りず、Atomで試行錯誤した結果」
たどり着いた場所がVS Codeだった、という感覚があります。

驚きはありましたが、振り返ると納得もできる。
そんな変化だったように思います。

  1. 正確にはSublime Text 2が2011年にリリースされ、日本では2011年末から2012年にかけて急速に普及しました。初版は2008年にリリースされていましたが、広く注目を集めたのはバージョン2以降です。 – テキストエディター「Sublime Text」の導入
  2. Atomプロジェクトは2008年にGitHubの共同創業者クリス・ワンストラスによって開始されましたが、一時開発が停止。2011年に再開され、2014年2月にMac OS X向けベータ版、2015年6月にバージョン1.0が正式リリースされました。 – Atom (テキストエディタ) – Wikipedia
  3. Electronは、もともとAtomプロジェクトから生まれた技術です。現在では独立したオープンソースプロジェクトとして、VS Code、Slack、GitHub Desktopなど、数千ものアプリケーション開発の基盤となっています。 – テキストエディター「Atom」が開発終了、半年後にアーカイブへ
  4. VS Codeは当初、他のElectron製エディタ同様に動作が重い面がありましたが、継続的な最適化により軽快に動作するようになりました。Microsoftチームの徹底した性能改善への取り組みが、Electron製アプリケーションの可能性を示す事例となっています。 – どんどん軽くなるElectron製エディタ
  5. Language Server Protocol(LSP)は2016年にMicrosoftが主導して策定した標準プロトコルです。従来は各言語×各エディタの組み合わせごとに機能実装が必要でしたが(m×n問題)、LSPによりm+n問題に削減され、開発効率が大幅に向上しました。 – Official page for Language Server Protocol
  6. 買収は2018年6月4日に発表され、同年10月に完了。買収額は75億ドル(約8,200億円)で、全額株式交換で支払われました。当時GitHubのユーザー数は2,800万人以上でした。 – マイクロソフト、GitHub を 75 億ドルで買収へ
  7. GitHubは2022年6月8日に開発終了を発表し、同年12月15日に全プロジェクトをアーカイブ。公式声明では「過去数年間、重要な機能開発を行っておらず、クラウドベースのツールの台頭によりコミュニティの関与が減少した。GitHub Codespacesを通じたクラウド開発体験の向上に集中する」と説明されています。 – GitHub、テキストエディタ「Atom」の開発終了 12月に全プロジェクトをアーカイブ
  8. Atomの主要開発メンバーは新たなエディタ「Zed」の開発を開始しています。ZedはRust言語で実装され、高速性とコラボレーション機能を重視した設計となっています。また、コミュニティ主導でAtomのフォークプロジェクト「Pulsar」も開発が続いています。 – 開発終了のAtomとは?後継や代わりのおすすめエディタを紹介!
  9. VS Codeは、拡張可能なアーキテクチャにより必要に応じてIDE機能を追加できる設計です。2025年のStack Overflow開発者調査では75.9%の開発者が使用していると回答し、2位以下を大きく引き離しています。 – Visual Studio Code – Wikipedia