Google AdSenseの
「ビデオゲーム」デリケー
トカテゴリ廃止の理由を考える

関連記事

1. Google AdSenseから届いた通知

先日、Google AdSenseの利用者に次のような通知メールが届きました。

お客様のサイト運営者 ID: pub-〜
ブロックのコントロールでデリケートなカテゴリ「ビデオゲーム(カジュアル ゲーム、オンライン)」をブロックする機能はまもなくサポート終了となります。2025 年 6 月 15 日より、ブロックのコントロールでデリケートなカテゴリ「ビデオゲーム(カジュアル ゲーム、オンライン)」をブロックできなくなります。これにより、このカテゴリを使用して、ビデオゲーム、オンライン ゲーム、ダウンロード可能なゲームの広告をブロックすることはできなくなります。また、このカテゴリを使用した既存のブロックは適用されなくなります。なお、ビデオゲーム、オンライン ゲーム、ダウンロード可能なゲームの広告がユーザーに適していないと思われる場合は、一般カテゴリ「ビデオゲーム、本体、付属品」と「オンライン ゲーム、パズル」、またはそれらのサブカテゴリを使用してブロックしていただけます。ブランド保護に関する要件を引き続き効果的に満たすように、ブロックのコントロール内の一般カテゴリとデリケートなカテゴリの既存のブロックをご確認のうえ、更新していただくことをおすすめします。よろしくお願い申し上げます。

Google AdSense チーム

このメールの内容を要約すると、「ビデオゲーム」関連の広告が「デリケートなカテゴリ」から外れることになり、今後はブロックしたい場合には一般カテゴリを使ってブロックするように案内されています。一見シンプルな変更ですが、この裏には何があるのでしょうか?

2. 「デリケートなカテゴリ」とは何か

まず、Google AdSenseにおける「デリケートなカテゴリ」とは何かを説明します。「デリケートなカテゴリ」とは、「扇情的な内容」や「過度な肌の露出」など、ビジネスや広告の性質によって「デリケート(配慮が必要)」と見なされる広告のグループのことです。サイト運営者は、自分のサイトのブランドイメージや訪問者層に合わせて、こうしたカテゴリの広告を表示しないようにブロックできます。

たとえば、子ども向けのコンテンツを提供するサイトでは、アルコール関連の広告をブロックするといった使い方が考えられます。これは店の品揃えを選ぶのに似ています。高級ブティックがディスカウントストアの広告を店内に掲示したくないように、サイト運営者も自分のサイトのイメージに合わない広告を表示したくないものです。

2.1. 代替手段として提供される一般カテゴリへの移行

今後、ビデオゲーム関連の広告をブロックしたい場合は、「ビデオゲーム、本体、付属品」と「オンライン ゲーム、パズル」という一般カテゴリを使うことになります。

実はこれは一見すると「手間が増える」ように見えますが、より細かい制御が可能になるメリットもあります。デリケートカテゴリではビデオゲーム全般がひとくくりでしたが、一般カテゴリでは「カジュアルゲーム」と「ハードコアゲーム」を区別したり、より具体的なサブカテゴリでの選別が可能になる可能性があります。

これは「すべての野菜」をブロックするのではなく、「ニンジン」や「ピーマン」など嫌いな野菜だけをブロックできるようになるようなものです。より細かい選択肢があれば、自分のサイトに合った広告選びがしやすくなります。

3. ビデオゲームがデリケートでなくなる理由

なぜビデオゲームが「デリケート」な扱いから外されるのでしょうか?公式の説明はないものの、いくつかの理由が考えられます。

3.1. Google側の収益最適化

この変更の最も現実的な理由は、Googleの収益最大化という目的です。広告のブロックが少なければ少ないほど、広告オークションの競争率は高まり、結果としてGoogleの収益も増加します。

AdSenseのヘルプページには「広告をブロックすると、ブロックされた広告が広告オークションから除外されるため、サイトでの収益にマイナスの影響が出る可能性があります」と明記されています。

「デリケート」というラベルをなくすことで、サイト運営者が「念のため」でブロックする機会を減らし、広告の表示機会を増やす狙いがあります。多くのサイト運営者は「デリケート」と聞くと、内容を精査せずにブロックしがちです。それを防ぎ、広告の表示機会を増やすことが本当の狙いでしょう。

3.2. 社会的認識の変化

大手ゲーム会社からの不満の声に応える形での変更である可能性も高いです。ゲーム業界は巨大な広告主です。モバイルゲームを始めとするゲーム広告は、オンライン広告市場で大きなシェアを占めています。「デリケート」というラベルがついていると、多くのサイト運営者が念のためブロックしてしまい、広告の表示機会が減ってしまいます。これはゲーム会社にとっては不本意な状況でしょう。「なぜ私たちの広告が『デリケート』扱いなのか?」という声がGoogle側に届いていたとしても不思議ではありません。

かつてビデオゲームは「若者を堕落させる」「依存性がある」など、否定的な見方をされることがありました。しかし現在では完全に主流の娯楽として認知されています。家族でゲームを楽しむ風景も珍しくなく、eスポーツが人気を集め、ゲーム実況がエンターテイメントとして確立しています。

4. サイト運営者にとっての影響

この変更は、サイト運営者にとってどのような影響があるでしょうか。

4.1. 1. 作業負担

既存のブロック設定がある場合、2025年5月15日以降、このカテゴリに「非推奨」ラベルが追加され、6月15日以降は既存のブロックも適用されなくなります。ビデオゲーム広告をブロックしたい場合は、一般カテゴリで再設定する必要があり、若干の手間が発生します。

4.2. 2. 収益への影響

実際のところ、「ビデオゲーム広告を特にブロックしたい」という需要はそれほど多くないと考えられます。子ども向けサイトなど一部の例外を除けば、ゲーム広告が表示されることによる大きな問題はないでしょう。むしろブロックがデフォルトで減ることで、サイト運営者の収益が微増する可能性もあります。

4.3. 3. より細かい制御の可能性

先述の通り、一般カテゴリではより細かい制御が可能になる可能性があります。これはサイト運営者にとって、より自分のサイトに合った広告設定ができるというメリットになるかもしれません。

5. サイト訪問者への影響

この変更は、サイトを訪れるユーザーにとってどのような影響があるでしょうか。

5.1. 1. ゲーム広告の増加

デリケートカテゴリからの移行により、今までブロックされていたゲーム広告が表示されるようになるサイトが増える可能性があります。特に、サイト運営者が設定変更に気づかなかったり、対応を怠った場合にこの影響が顕著になるでしょう。

これは学習塾が「ゲームの話題はNG」としていたのに、突然「一部のゲームの話題はOK」になったようなものです。今まで見なかった種類の広告が目に入るようになるでしょう。

5.2. 2. ターゲティング広告の質の向上

一方で、より細かいカテゴリ分けになることで、表示される広告の関連性が高まる可能性もあります。例えば、カジュアルゲームに興味のあるユーザーには、より関連性の高いカジュアルゲーム広告が表示されるようになるかもしれません。

これは本屋で「小説コーナー」だけでなく「ミステリー」「ファンタジー」「恋愛」などの細かい分類ができるようになり、読者が自分の好みの本を見つけやすくなるようなものです。

5.3. 3. 子ども向けサイトでの懸念

子ども向けのコンテンツを提供するサイトでは、適切な対応がされないと不適切なゲーム広告が表示される可能性があります。例えば、年齢制限のあるゲームの広告が子ども向けサイトに表示されるというリスクです。

サイト運営者が適切に新しいカテゴリでのブロック設定を行わなければ、「子どもの塾の教室に暴力的なゲームのポスターが貼られる」ようなミスマッチが起きるかもしれません。

5.4. 4. ユーザー体験の変化

全体としては、多くのユーザーにとって大きな変化は感じられないでしょう。しかし、広告をブロックしていない場合、ゲーム関連の広告が増えると、サイトの雰囲気や閲覧体験に微妙な変化が生じる可能性があります。

特に、今までゲーム広告を見慣れていないサイトの常連ユーザーにとっては、「いつもの店の内装が変わった」ような違和感を覚えるかもしれません。

6. まとめ

Google AdSenseの「ビデオゲーム(カジュアル ゲーム、オンライン)」デリケートカテゴリの廃止は、表面上はカテゴリ整理や効率化という説明がされていますが、実際はGoogleの収益最大化戦略の一環と考えられます。

ビデオゲームが「デリケート」から一般カテゴリに移行するのは、社会的認識の変化に合わせた自然な流れでもあります。サイト運営者にとっては若干の設定変更が必要になりますが、日々の運用に大きな影響はないでしょう。

サイト訪問者に対しては、適切な対応がなされなければゲーム広告の露出が増加する可能性がありますが、より細分化された関連性の高い広告表示という利点もあります。子ども向けコンテンツなど特定のジャンルでは注意が必要ですが、大多数のユーザーにとっては劇的な変化はないと考えられます。

この変更は、Googleと広告主の利益を優先した決定であり、サイト運営者よりもGoogle自身の事情による変更と見るのが現実的です。広告エコシステムの中で、常に最適化が進められていくことの一例と言えるでしょう。