ショールームで商品を紹介し、注文を受けてから後日郵送するビジネスモデル。この特殊な販売形態に最適な決済サービスを探した結果、Squareを選択しました。この記事では選定プロセスと実際の導入体験について共有します。
ショールームでの販売と決済の課題
ショールームという特殊な販売環境では、通常のECサイトや実店舗とは異なる課題があります。会場でのインターネット接続は不安定なことが多く、決済処理がスムーズに行えるか心配です。また、その場で商品を渡さず後日発送するため、注文情報と決済情報を確実に記録する必要があります。
まず、候補となる主要な決済サービスを比較検討しました。Stripe、BASE、Shopify、Square、STORES(旧Coiney)などが候補に挙がりました。それぞれに一長一短がありますが、ショールームという特殊な環境に適したサービスを選ぶ必要がありました。
決済サービスの比較検討
Stripe
Stripeはオンライン決済に特化したサービスです。APIと呼ばれるプログラムの接続口が充実しており、自社サーバーとの連携が容易です。料金体系もシンプルで、決済手数料は3.6%と明瞭です。
しかし、Stripeは基本的にオンライン決済向けで、展示会のような対面での決済に使うには「Stripe Terminal」という追加サービスが必要です。日本での対応状況や展開についても不明確な点がありました。
BASE
BASEは簡単にネットショップを開設できるサービスで、決済機能も備えています。初心者でも簡単に始められる点が魅力ですが、展示会という一時的な対面販売には少しマッチしません。あくまでもECサイト運営が主な目的のサービスです。
Shopify
Shopifyはグローバルに展開するECプラットフォームで、実店舗連携の機能も備えています。しかし、月額料金がかかる点や、展示会という一時的な販売のためには機能過剰である点が懸念されました。
Square
Squareは実店舗決済に強いサービスです。無料のカードリーダーが提供され、オフライン対応もしています。決済手数料は2.5%〜3.95%で、月額料金はかかりません。POSレジ機能も備えており、在庫管理と連携可能です。APIも提供されており、自社サーバーとの連携も可能です。
Squareを選んだ理由
比較検討の結果、以下の理由からSquareを選択しました。
- 実店舗向け機能の充実: 展示会という対面販売に適したシステム設計
- オフライン対応: 通信環境が不安定な会場でも決済処理が可能
- ハードウェアの無料提供: カードリーダーが無料で提供される
- 入金サイクルの速さ: 最短で翌日入金が可能で資金繰りに有利
- APIの充実: 自社サーバーとの連携が可能
特に決め手となったのは、オフライン対応と実店舗向け機能の充実でした。展示会は通信環境が不安定な場合が多く、オフライン対応は非常に重要です。また、その場で決済を完了し、後日発送するという特殊なビジネスモデルにも対応できる柔軟性がありました。
Square導入と設定のプロセス
Squareの導入は想像以上に簡単でした。以下の手順で進めました。
- アカウント登録: Squareの公式サイトからアカウントを作成
- カードリーダーの申し込み: 無料のカードリーダーを申し込み
- アプリのインストール: スマートフォンにSquareアプリをインストール
- 商品登録: 展示会で販売する商品をアプリに登録
- 決済テスト: 実際にカード決済のテストを実施
カードリーダーは申し込みから数日で届きました。USBケーブルで充電し、Bluetooth(ブルートゥース)でスマートフォンと接続します。接続設定も画面の指示に従うだけで簡単に完了しました。
ショールームでの実際の運用
ショールームでは、以下のような流れで運用します。
- 商品説明: 展示商品について説明
- 注文受付: 注文を希望するお客様の情報を記録
- 決済処理: その場でカード決済を完了
- 注文確認: 注文内容と配送予定日をお客様に案内
- 注文記録: Square上で注文情報と配送情報を紐づけ
特に注意するのは通信環境です。会場のWi-Fiは混雑すると不安定になるため、モバイルWi-Fiとスマートフォンのテザリングの両方を準備しました。また、バックアップとしてオフライン決済の設定も有効にしておきました。
決済処理は非常にスムーズで、お客様からも「スマートな決済方法ですね」という好評をいただきました。カードを読み取るだけで決済が完了し、レシートをメールで送信することもできます。
発送管理との連携
展示会後の発送管理は、Squareから出力した注文データを活用しました。Square管理画面から注文情報をCSVファイルでエクスポートし、自社の発送管理システムに取り込みました。
また、Square APIを使って自動的に注文情報を取得するシステムも構築しました。これにより、新しい注文があった場合に自動的に発送処理が開始される仕組みができました。
導入してわかったSquareのメリット
実際に導入して感じたSquareの主なメリットは以下の通りです。
- 使いやすさ: 直感的な操作性で、特別な研修なしでもすぐに使いこなせました
- 安定性: オフライン対応もあり、通信環境が不安定な場所でも安心して使えました
- 入金の速さ: 決済から入金までが早く、資金繰りがスムーズになりました
- レポーティング: 売上データがリアルタイムで確認でき、分析も容易でした
- 拡張性: APIが充実しており、自社システムとの連携も比較的容易でした
特に印象的だったのは、Square管理画面のわかりやすさです。売上レポートや在庫管理、顧客管理など、必要な機能が直感的に使えるように設計されていました。
課題と改善点
もちろん、完璧なサービスはありません。いくつかの課題も見つかりました。
- 手数料の差: 決済方法によって手数料率に差があり(2.5%〜3.95%)、予算管理が少し複雑になりました
- オフライン時の制約: オフライン決済時は一部の機能が制限されるため、注意が必要でした
- 顧客データの扱い: 顧客情報の管理について、よりきめ細かい設定があると良いと感じました
これらの課題は、運用方法の工夫である程度対応可能でした。例えば、手数料の差については、事前に試算して予算を確保しておくことで対応しました。
まとめ
ショールームでの販売(後日郵送)という特殊なビジネスモデルに最適な決済サービスを探した結果、Squareが最も適していることがわかりました。実店舗向け機能の充実、オフライン対応、入金サイクルの速さなどが大きな利点でした。
導入から運用まで比較的スムーズに進められ、お客様からも好評をいただきました。APIを活用した自社システムとの連携も実現でき、展示会後の発送管理もスムーズに行えています。
ショールーム販売や一時的な対面販売を検討している方には、Squareは有力な選択肢になるでしょう。特に後日発送が必要なケースでは、注文情報と決済情報を確実に連携できる点が大きなメリットです。
- Square公式サイト – Square決済サービスの機能、料金、導入方法に関する公式情報
- Square開発者ポータル – Square APIのドキュメント、連携方法、開発者向けリソース
- Square for Retail: ポイントオブセール決済システム – 小売業向けSquareのPOS機能と展示会での活用方法
- Stripe公式サイト – Stripe決済サービスの概要と機能(比較検討用)
- Shopify公式サイト – Shopifyのネットショップ機能と決済サービス(比較検討用)
- BASE公式サイト – BASEのネットショップ作成サービスと決済機能(比較検討用)
- Square Help Center: オフライン決済 – 通信環境が不安定な場所でのSquare決済方法
- Square 開発者ブログ: 注文APIの使用方法 – SquareのAPIを使った注文情報の連携方法
- Square レポート機能について – 売上データの分析と活用方法
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