はじめに
Windows 11を使っていて、タスクマネージャーが突然使えなくなった経験はありませんか。Ctrl+Shift+Escを押しても何も起こらない、または一瞬表示されてすぐに消えてしまう。こんな状況では、何が原因なのかもわからず困ってしまいます。
セーフモードで起動したところ、ディスクやネットワークが表示されません。
しかし、Windowsの「イベントビューワー」という機能を使って原因を調べたところ、意外な犯人が見つかりました。

この記事では、どのようにして問題の根本原因を突き止め、最終的に解決できたかを詳しく紹介します。同じような問題で困っている方の参考になれば幸いです。
症状の確認と整理
起きていた問題
問題が発生したのは、Windows 11 24H2にアップデートした直後でした。最初に気づいたのは、タスクマネージャーが正常に動作しないことです。
具体的には、タスクマネージャー(taskmgr.exe)を起動しようとすると、一瞬ウィンドウが表示されるものの、すぐに強制終了してしまいます。何度試しても同じ結果でした。
さらに困ったことに、他のアプリケーションでも似たような問題が起きていました。Windows設定アプリ(SystemSettings.exe)や、Windowsターミナルアプリなどもクラッシュするようになったのです。
なぜこの症状が重要なのか
タスクマネージャーは、Windowsの基本的なシステムツールです。通常は非常に安定しており、めったにクラッシュしません。それが突然動かなくなるということは、システムに何か重大な問題が起きている可能性があります。
特に今回は、複数の重要なシステムアプリが同時にクラッシュしていました。これは偶然ではなく、何らかの共通する原因があることを示しています。
イベントビューワーによる原因調査

イベントビューワーとは
Windowsには「イベントビューワー」という、システムで発生したエラーや警告を記録する機能があります。これは、まるでシステムの日記のようなもので、いつ何が起きたかを詳細に記録しています。
イベントビューワーを開くには、スタートメニューで「イベントビューワー」と検索するか、「Windows + R」キーを押して「eventvwr.msc」と入力します。
Application Errorの発見
イベントビューワーを開いて「Windowsログ」→「アプリケーション」を確認すると、大量のエラーが記録されていました。特に目立ったのは「Application Error」というイベントID 1000のエラーです。
このエラーログを詳しく見ると、以下のような情報が記録されていました。
- 障害が発生しているアプリケーション名:taskmgr.exe
- 障害が発生しているモジュール名:igd12umd64.dll
- 例外コード:0xc0000005
- 発生日時:2025年6月25日
エラーログから読み取れること
ここで重要なのは「障害が発生しているモジュール名」の部分です。「igd12umd64.dll」というファイル名が記録されていました。
DLLファイルとは「Dynamic Link Library」の略で、複数のプログラムで共有して使われるプログラムの部品のようなものです。家で例えると、複数の部屋で共有して使う電気設備のようなものと考えてください。この共有部品に問題があると、それを使う全ての部屋(アプリケーション)で問題が起きます。
igd12umd64.dllの正体
ファイル名から推測すると、「igd」は「Intel Graphics Driver」の略で、「umd」は「User Mode Driver」を表しています。つまり、このファイルはIntelのグラフィックドライバーの一部だということがわかります。
グラフィックドライバーは、画面にウィンドウや文字を表示するためのプログラムです。タスクマネージャーや設定アプリなど、画面に何かを表示するアプリケーションは、全てこのドライバーを経由して動作します。
原因の特定と仮説の構築
なぜグラフィックドライバーが原因なのか
タスクマネージャーがクラッシュする理由を整理してみました。
- タスクマネージャーを起動する
- ウィンドウを画面に表示しようとする
- Intelグラフィックドライバー(igd12umd64.dll)を呼び出す
- ドライバーに問題があり、正常に動作しない
- アプリケーション全体がクラッシュする
これで、なぜ複数のアプリが同時にクラッシュしていたかも説明できます。タスクマネージャー、設定アプリ、ターミナルアプリは全て画面表示が必要なため、同じグラフィックドライバーを使用しているからです。
Windows 11 24H2との関係
問題が発生したタイミングも重要な手がかりでした。Windows 11 24H2にアップデートした直後に症状が現れたのです。
大型のWindowsアップデートでは、システムの深い部分まで変更されることがあります。その結果、既存のドライバーとの互換性に問題が生じることがあるのです。
Web検索による情報収集
同様の事例の確認
この仮説を確認するため、インターネットで同様の問題が報告されていないか調べてみました。すると、予想通りの情報が見つかりました。
Windows 11 24H2にアップグレードした後、Intelグラフィックドライバーで問題が多発しているという報告が複数見つかったのです。特に古いバージョンのドライバーでは「unsupported operating system」というエラーが表示されるという情報もありました。
解決策の発見
さらに調べると、Intel社が2025年4月に新しいドライバー(Intel GPU Driver 32.0.101.6739)をリリースし、Windows 11 24H2との互換性問題を修正したという情報も見つかりました。
解決方法の実行
Intelドライバーの更新
原因が特定できたので、さっそく解決策を実行しました。Intel社の公式サイトから「Intel Driver & Support Assistant」をダウンロードし、最新のグラフィックドライバーに更新したのです。
ドライバーの更新作業自体は、それほど難しくありません。Intel Driver & Support Assistantを起動すると、システムを自動的にスキャンして、必要な更新があるドライバーを教えてくれます。
結果の確認
ドライバー更新後、パソコンを再起動しました。そしてタスクマネージャーを起動してみると、今度は正常に表示されました。ウィンドウが突然消えることもなく、安定して動作するようになったのです。
他のアプリケーションも確認しましたが、設定アプリやターミナルアプリも正常に動作するようになっていました。
技術的な背景の詳細
igd12umd64.dllの役割
igd12umd64.dllは「User Mode Driver for Intel Graphics Technology」の正式名称を持つファイルです。「User Mode」とは、一般的なアプリケーションが動作する領域のことで、システムの中核部分とは分離されています。
このファイルの主な役割は、アプリケーションからの画面描画要求を受け取り、実際のグラフィックハードウェアに伝えることです。ウィンドウの表示、文字の描画、画像の表示など、画面に関わる全ての処理でこのドライバーが使われます。
エラーコードの意味
イベントログに記録されていた例外コード「0xc0000005」は、「アクセス違反」を表しています。これは、プログラムが本来アクセスしてはいけないメモリ領域にアクセスしようとした時に発生するエラーです。
古いドライバーが新しいWindowsシステムで動作する際、メモリの管理方法の違いによって、このようなエラーが起きることがあります。
Windows 11 24H2での変更
Windows 11 24H2では、セキュリティの強化やシステムの最適化などで、内部の仕組みが大きく変更されました。特にグラフィック関連の処理では、パフォーマンス向上のために新しい技術が導入されています。
これらの変更により、古いドライバーとの互換性が失われ、今回のような問題が発生したと考えられます。
学んだポイントと対策
イベントビューワーの重要性
今回の問題解決で最も重要だったのは、イベントビューワーを活用したことです。単に「タスクマネージャーが動かない」という症状だけでは、原因の特定は困難でした。
しかし、イベントビューワーで詳細なエラー情報を確認することで、問題の本質を理解できました。特に「障害が発生しているモジュール名」の情報が、解決への重要な手がかりとなったのです。
システムファイルの関連性
複数のアプリケーションが同時にクラッシュする場合は、共通して使用されるシステムファイルに問題がある可能性が高いということも学びました。
今回の場合、グラフィックドライバーという、一見関係なさそうなコンポーネントが原因でした。しかし、現代のアプリケーションは画面表示が不可欠なため、グラフィックドライバーの問題が広範囲に影響することがわかります。
大型アップデート後の注意点
Windows の大型アップデート後は、ドライバーの互換性問題が起きやすいということも重要な教訓です。特にグラフィックドライバーのように、システムの根幹に関わるコンポーネントでは、早めの更新が必要です。
情報収集の重要性
自分だけの問題ではなく、多くのユーザーが同様の問題に直面していることもありました。インターネットで情報を収集することで、解決策をより早く見つけることができました。
まとめ
タスクマネージャーのクラッシュという一見単純な問題でしたが、根本原因はWindows 11 24H2とIntelグラフィックドライバーの互換性問題でした。イベントビューワーで詳細なエラー情報を確認することで、igd12umd64.dllというDLLファイルの問題を特定し、ドライバーの更新によって解決できました。
この経験から、システムの問題が発生した際は、症状の表面だけでなく、イベントビューワーを使った詳細な分析が重要だということがわかります。また、大型Windowsアップデート後は、ドライバーの互換性を確認し、必要に応じて更新することが、システムの安定性を保つために不可欠です。