はじめに
朝、いつものように銀行残高を確認しようとスマートフォンで滋賀銀行デジタル通帳アプリを開くと、突然「ログアウトされました」というメッセージが表示されました。

ログアウトされました。ログアウトされています。お手数ですが再度ログインをお願いします。
前日まで普通に使えていたのに、なぜ急にログアウトされるのでしょうか。
滋賀銀行デジタル通帳の基本的な仕組み
まず、滋賀銀行デジタル通帳がどのような仕組みで動いているかを理解する必要があります。
このアプリは滋賀銀行が直接開発したものではありません。実際の開発・運営はマネーフォワードエックス株式会社が行っています。滋賀銀行はこの会社にサービスを委託している形です。
アプリが銀行の口座情報を取得するには、API連携という仕組みを使います。APIとは「Application Programming Interface」の略で、異なるシステム同士が情報をやり取りするための窓口のようなものです。家の玄関のドアに例えると分かりやすいでしょう。正しい鍵を持った人だけが家に入れるように、正しい認証を通過したアプリだけが銀行のデータにアクセスできます。
通常のログアウトサイクル:186日間の期限
滋賀銀行デジタル通帳には、セキュリティ上の理由で定期的にログアウトされる仕組みがあります。
正常な場合、API連携による口座連携操作の期限は186日間(約6ヶ月)に設定されています1。この期限が過ぎると自動的にログアウトされ、再度ログイン操作が必要になります。
186日という期間は、セキュリティと利便性のバランスを考えて設定されています。あまり短いと頻繁にログインし直す必要があり不便です。一方で、あまり長すぎると万が一スマートフォンを紛失した場合などのリスクが高くなります。
この期限切れについては、メールでの通知は行われません。突然ログアウトされたように感じる理由の一つがここにあります。
不定期のログアウト:システムメンテナンスが原因
しかし、今回のケースでは約30日でログアウトが発生しました。これは通常の186日サイクルとは異なります。
滋賀銀行の公式説明によると、「セキュリティに関するメンテナンス等で、連携操作期限に関わらず、全てのお客さまにあらためて連携操作を求める場合もございます」とあります2。
つまり、通常の期限に関係なく、銀行側の判断で全ユーザーを強制的にログアウトさせることがあるのです。
システムメンテナンスが行われる理由
では、なぜ銀行はメンテナンスで全ユーザーをログアウトさせるのでしょうか。主な理由を整理してみます。
セキュリティ強化対策
金融機関を狙ったサイバー攻撃は日々巧妙化しています。新しい攻撃手法が発見されると、それに対応するためのセキュリティパッチ(修正プログラム)を適用する必要があります。
このような重要なセキュリティ更新を行う際、既存の接続をいったん全て切断し、新しいセキュリティ基準で再接続してもらうことで、より安全な環境を確保できます。
システム基盤の更新
銀行のシステムは膨大なデータを扱うため、サーバーやデータベースの性能向上や安定性確保のための更新が定期的に必要です。
大規模なシステム更新の際は、データの整合性を保つために全ての外部接続を一時的に遮断することがあります。これは、工事中の建物への立ち入りを制限するのと似ています。
法規制への対応
金融業界は非常に厳しい法的規制下にあります。金融庁からの新しいガイドラインや個人情報保護法の改正などに対応するため、システムの設定変更や機能追加が必要になることがあります。
このような法規制対応の際も、コンプライアンス(法令遵守)を確実にするため、全ユーザーの再認証を求めることがあります。
API仕様の変更
マネーフォワードエックス株式会社と滋賀銀行の間で使用されているAPI仕様が変更される場合もあります。
API仕様の変更は、セキュリティの向上や新機能の追加のために行われますが、既存の接続では新しい仕様に対応できないため、全ユーザーに新しい仕様での再接続を求める必要があります。
ユーザーへの影響と対処法
このような突然のログアウトは、ユーザーにとって不便に感じられるかもしれません。しかし、これは銀行がお客様の資産を守るために行っている重要な安全対策です。
対処法は簡単で、アプリを開いてメールアドレスとパスワードを入力し直すだけです。一度再ログインすれば、次の定期メンテナンスまでは通常通り使用できます。
再ログイン時には、過去1ヶ月間の入出金明細が自動的に取得されます。また、連携期限経過後でも1ヶ月以内に再連携すれば、明細情報の連続性は保たれます。
他の銀行でも同様の現象が発生する可能性
この現象は滋賀銀行に限ったものではありません。マネーフォワードエックス株式会社が開発したデジタル通帳アプリを採用している他の地方銀行でも、同様のログアウトが発生する可能性があります3。
京都信用金庫など、多くの金融機関がマネーフォワード社のシステムを利用しているため、これらの金融機関のアプリでも同じような現象を経験することがあるでしょう。
セキュリティ対策の重要性
金融アプリのセキュリティ対策は、私たちの資産を守るために不可欠です。不正アクセスによる被害は年々増加しており、金融機関は常に最新の脅威に対応する必要があります。
滋賀銀行デジタル通帳アプリで30日程度でログアウトされる現象は、システムメンテナンスによる安全対策が原因です。通常の186日サイクルとは別に、セキュリティ強化やシステム更新のために全ユーザーの再認証が求められることがあります。
この現象はマネーフォワードエックス株式会社が運営するAPI連携システムの仕様によるもので、他の金融機関でも発生する可能性があります。ユーザーは再ログインするだけで解決でき、これは資産保護のための重要なセキュリティ措置として理解することが大切です。
定期的な強制ログアウトは、一見不便に思えますが、セキュリティレベルを維持するための必要な措置です。家の鍵を定期的に交換するのと同じように、デジタルの世界でも定期的な「鍵の交換」が重要なのです。
- 滋賀銀行の公式サイトでは、API連携の期限を186日間と明記している。 – 滋賀銀行 デジタル通帳|便利につかう|滋賀銀行
- 滋賀銀行はシステムメンテナンス時に通常の186日期限とは関係なく、全ユーザーに再連携を求めることがあると公式に説明している。 – 滋賀銀行 デジタル通帳|便利につかう|滋賀銀行
- マネーフォワードエックス株式会社は複数の金融機関向けに同様のサービスを提供しており、システム基盤が共通のため類似の現象が発生する可能性がある。 – 株式会社マネーフォワードのプレスリリース