「本を読み上げてくれる」Speechifyの広告と実際に試した結果

はじめに

SNSでよく見かける「積読が一瞬で解決!本を読み上げてくれるAI」という広告。忙しい日常で読書時間が取れない状況では、とても魅力的に映ります。

特に紙の本をスキャンして音声化できるという機能は画期的です。しかし、実際にどこまで実用的なのでしょうか。広告のキャッチコピー通りの効果が期待できるのか、実際に試してみました。

Speechifyで「本を読む」 1. 本をスキャン 連続撮影機能 2. 文字認識 OCR技術 3. 音声化 AI読み上げ 主な問題点 1冊スキャン:2-3時間 準備・修正作業含む 音声品質:無料版は機械的 Safari読み上げ同等 年額:約20,000円 ($138.96) 推奨アプローチ 1. 無料版でテスト OCRの精度を確認 2. 代替案を比較する AI要約・Audible 3. 有料版は慎重に検討 用途・頻度を考慮

Speechifyの紙の本スキャン機能とは

Speechifyは、テキストを音声に変換するAIツールです。その中でも注目される機能が、スマートフォンのカメラを使って紙の本をスキャンし、OCR(文字認識技術)でテキスト化して読み上げる機能です。

OCRとは、画像に写った文字をコンピュータが認識してデジタルテキストに変換する技術のことです。例えば、写真に写った看板の文字をスマホが読み取って翻訳アプリで変換する、あの技術と同じ仕組みです。

この機能を使えば、理論上は手持ちの紙の本すべてをオーディオブック化できることになります。

実際に使ってみた:OCR機能の使い勝手

実際に使ってみた結果 良い点 連続・自動シャッター ページめくりに合わせて 自動撮影が便利 課題点 無料版音声品質 Safari読み上げと同レベル 機械音声感が強い 料金比較(年額) Speechify 約20,000円 ($138.96) vs Audible 18,000円 (月1,500円) まず無料版でテストを推奨 OCR精度と音声品質を確認してから判断

連続・自動シャッター機能が便利

実際にスキャン機能を試してみると、連続・自動シャッター機能が思いのほか便利でした。ページをめくるたびに手動でシャッターを押す必要がなく、一定のリズムで撮影が進みます。

この機能により、数十ページぐらいの書籍なら比較的スムーズにスキャンできます。ただし、ページの平坦化や照明の調整など、きれいにスキャンするための準備は必要です。

ただし、このスキャン作業時間で、なんとなく斜め読みできるような気もしました。

文字認識の精度

一般的な文庫本やビジネス書の本文であれば、認識率は実用レベルでした。ただし、漢字の複雑な画数や、印刷のかすれ、ページの湾曲などが原因で誤認識が発生します。

どちらかというと、専門用語や固有名詞で。技術書やアカデミックな内容では、誤読が頻発する傾向があります。

また、雑誌や教科書のような複雑なレイアウトでは、スキャン精度が大幅に低下します。図表やコラム、注釈などが混在する場合、テキストの読み取り順序が混乱することがあります。

無料版の音声品質:現実的な評価

会員登録とカスタマイズのアンケート。

Safariの読み上げと同レベル

無料版で使用できる音声は、正直なところSafariの標準読み上げ機能と同程度の品質です。機械音声感が強く、長時間聞いていると疲労を感じます。

10種類の音声から選択できますが、どれも明らかにロボット音声という印象です。小説のような感情的な内容では、読み上げの無機質さが内容理解を妨げる場合もあります。

実用性の限界

無料版の音声品質では、「聞き流し」程度の用途が限界でしょう。内容を正確に理解したり、長時間集中して聞いたりするには厳しいレベルです。

ただし、ビジネス書や実用書の要点を把握する程度であれば、使えないことはありません。期待値を適切に設定すれば、無料ツールとしては十分な機能を提供しています。

有料版の壁:年間30,000円という現実

サブスクリプション料金の実態

自然な音声やAI要約機能を使用するには、プレミアム版への加入が必要です。年間料金は約30,000円(為替レートにより変動)という設定になっています。

月額換算すると約2,500円程度ですが、年間一括払いが基本となるため、初期投資としては大きな金額です。

コストパフォーマンスの検討

市販のオーディオブックが1冊1,500〜3,000円程度であることを考えると、年間10冊以上の利用がなければコストメリットは薄いでしょう。さらに、スキャン作業の時間コストも考慮する必要があります。

プロのナレーターによるオーディオブックと比較すると、音声品質に差があることも考慮すべき点です。

代替手段との現実的な比較

代替手段との比較 手法 コスト 品質 手軽さ Speechify 有料版 20,000円/年 ★★★ ★★ 無料OCR+標準TTS Google Lens等 無料 ★★ ★★★ AI要約ツール NotebookLM等 無料〜低額 ★★★★ ★★★★ オーディオブック Audible等 18,000円/年 ★★★★★ ★★★★★

無料OCR+標準読み上げの組み合わせ

Google LensやAdobe Scanなどの無料OCRツールと、スマートフォン標準の音声読み上げ機能を組み合わせる方法があります。Speechifyの無料版と音声品質はほぼ同等で、コストは一切かかりません。

AI要約ツールの活用

ChatGPTやClaude、NotebookLMなどのAI要約ツールを使って、本の内容を要約してから音声化する方法も効果的です。全文を聞く必要がなく、重要なポイントを効率的に把握できます。

要約されたテキストであれば、音声化にかかる時間も大幅に短縮されます。忙しいビジネスパーソンにとっては、こちらの方が実用的かもしれません。

既存のオーディオブックサービス

AudibleやAudiobook.jpなどの既存サービスでは、プロのナレーターによる高品質な音声コンテンツを提供しています。月額1,500円程度で月1冊の利用ができ、音声品質は格段に上です。

まずは無料版から始める現実的なアプローチ

1 2 3 現実的な積読解消戦略 無料版テスト OCR精度確認 代替案比較 AI要約・Audible 投資判断 用途・頻度考慮 判断基準 月間読書量 1-2冊 → 無料ツール 3冊以上 → 有料検討 書籍タイプ 小説 → オーディオブック 実用書 → AI要約 時間の使い方 移動中 → 音声 自宅 → スキャン可能 完璧な積読解消法は存在しない

段階的な検証方法

いきなり年間30,000円の投資をする前に、まず無料版でOCRと読み上げ機能を試してみることをお勧めします。

自分の読書パターンや許容できる音声品質レベルを把握してから、有料版の検討を進めるべきです。特に、どの程度の頻度でスキャン機能を使用するか、実際の利用シーンを想定することが重要です。

書籍タイプによる適性判断

小説やエッセイなど、文章のリズムや感情表現が重要な書籍では、無料版の音声品質では満足度が低いでしょう。一方、ビジネス書や実用書、資料の内容確認程度であれば、実用性があります。

利用シーンの現実的な評価

電車内でのスキャン作業は現実的ではありません。事前に自宅でスキャンしておく必要があるため、「思い立ったらすぐに聞ける」という利便性はありません。

むしろ、料理や掃除をしながら本の内容を聞くという「ながら作業」用途では、一定の効果があります。

検証結果:現実的な期待値の設定が重要

無料版の実用性

Speechifyの無料版は、OCR機能と基本的な読み上げ機能を提供する実用的なツールです。ただし、音声品質はSafariの標準機能と同程度であり、長時間の利用や高品質な音声体験を求める場合には限界があります。

連続・自動シャッター機能により、スキャン作業自体は比較的スムーズに行えます。

有料版の投資判断

年間30,000円という料金は、読書頻度と用途を慎重に検討する必要がある金額です。月10冊以上のペースで利用し、なおかつスキャン作業の時間コストを許容できる場合に限り、投資効果が期待できます。

総合的な評価

Speechifyは「積読解消の決定打」ではありませんが、特定の用途では有用なツールです。まず無料版で自分の利用パターンを把握し、その後に投資判断を行うことが現実的なアプローチです。

AI要約ツールや既存のオーディオブックサービスなど、他の選択肢も含めて総合的に検討することで、より効率的な読書環境を構築できるでしょう。重要なのは、過度な期待をせず、現実的な用途と制限を理解した上で活用することです。