はじめに
SNSでよく見かける「積読が一瞬で解決!本を読み上げてくれるAI」という広告。忙しい日常で読書時間が取れない状況では、とても魅力的に映ります。




特に紙の本をスキャンして音声化できるという機能は画期的です。しかし、実際にどこまで実用的なのでしょうか。広告のキャッチコピー通りの効果が期待できるのか、実際に試してみました。
Speechifyの紙の本スキャン機能とは
Speechifyは、テキストを音声に変換するAIツールです。その中でも注目される機能が、スマートフォンのカメラを使って紙の本をスキャンし、OCR(文字認識技術)でテキスト化して読み上げる機能です。




OCRとは、画像に写った文字をコンピュータが認識してデジタルテキストに変換する技術のことです。例えば、写真に写った看板の文字をスマホが読み取って翻訳アプリで変換する、あの技術と同じ仕組みです。




この機能を使えば、理論上は手持ちの紙の本すべてをオーディオブック化できることになります。
実際に使ってみた:OCR機能の使い勝手
連続・自動シャッター機能が便利
実際にスキャン機能を試してみると、連続・自動シャッター機能が思いのほか便利でした。ページをめくるたびに手動でシャッターを押す必要がなく、一定のリズムで撮影が進みます。
この機能により、数十ページぐらいの書籍なら比較的スムーズにスキャンできます。ただし、ページの平坦化や照明の調整など、きれいにスキャンするための準備は必要です。
ただし、このスキャン作業時間で、なんとなく斜め読みできるような気もしました。
文字認識の精度
一般的な文庫本やビジネス書の本文であれば、認識率は実用レベルでした。ただし、漢字の複雑な画数や、印刷のかすれ、ページの湾曲などが原因で誤認識が発生します。
どちらかというと、専門用語や固有名詞で。技術書やアカデミックな内容では、誤読が頻発する傾向があります。
また、雑誌や教科書のような複雑なレイアウトでは、スキャン精度が大幅に低下します。図表やコラム、注釈などが混在する場合、テキストの読み取り順序が混乱することがあります。
無料版の音声品質:現実的な評価
会員登録とカスタマイズのアンケート。














Safariの読み上げと同レベル
無料版で使用できる音声は、正直なところSafariの標準読み上げ機能と同程度の品質です。機械音声感が強く、長時間聞いていると疲労を感じます。
10種類の音声から選択できますが、どれも明らかにロボット音声という印象です。小説のような感情的な内容では、読み上げの無機質さが内容理解を妨げる場合もあります。
実用性の限界
無料版の音声品質では、「聞き流し」程度の用途が限界でしょう。内容を正確に理解したり、長時間集中して聞いたりするには厳しいレベルです。
ただし、ビジネス書や実用書の要点を把握する程度であれば、使えないことはありません。期待値を適切に設定すれば、無料ツールとしては十分な機能を提供しています。
有料版の壁:年間30,000円という現実
サブスクリプション料金の実態
自然な音声やAI要約機能を使用するには、プレミアム版への加入が必要です。年間料金は約30,000円(為替レートにより変動)という設定になっています。
月額換算すると約2,500円程度ですが、年間一括払いが基本となるため、初期投資としては大きな金額です。
コストパフォーマンスの検討
市販のオーディオブックが1冊1,500〜3,000円程度であることを考えると、年間10冊以上の利用がなければコストメリットは薄いでしょう。さらに、スキャン作業の時間コストも考慮する必要があります。
プロのナレーターによるオーディオブックと比較すると、音声品質に差があることも考慮すべき点です。
代替手段との現実的な比較
無料OCR+標準読み上げの組み合わせ
Google LensやAdobe Scanなどの無料OCRツールと、スマートフォン標準の音声読み上げ機能を組み合わせる方法があります。Speechifyの無料版と音声品質はほぼ同等で、コストは一切かかりません。
AI要約ツールの活用
ChatGPTやClaude、NotebookLMなどのAI要約ツールを使って、本の内容を要約してから音声化する方法も効果的です。全文を聞く必要がなく、重要なポイントを効率的に把握できます。
要約されたテキストであれば、音声化にかかる時間も大幅に短縮されます。忙しいビジネスパーソンにとっては、こちらの方が実用的かもしれません。
既存のオーディオブックサービス
AudibleやAudiobook.jpなどの既存サービスでは、プロのナレーターによる高品質な音声コンテンツを提供しています。月額1,500円程度で月1冊の利用ができ、音声品質は格段に上です。