iPhoneでWebサイトを見たりアプリを使ったりしていると、突然「iPhoneのメモリがいっぱいです」という警告が表示されました。


しかし、この警告、実はiPhoneが出したものではありません。
- Webサイト閲覧やアプリ利用中に突然現れる「メモリ不足」警告はほとんどが偽物。
- 特定のクリーナーアプリへ誘導し有料契約を勧める詐欺的な広告手法です。
- iPhoneには設定アプリ内に最適化機能が内蔵されていて、外部クリーナーアプリは不要。
- 怪しい警告が出たらWebページを閉じて、設定→一般→iPhoneストレージから標準機能で確認します。
偽警告はアプリをダウンロードさせる目的
「写真やビデオの撮影、ファイルのダウンロード、アプリのインストールや更新に必要なストレージがほとんど残っていません」という説明のほとんどは、Webサイトが勝手に表示している偽の情報です1。
画面には「すぐにストレージをクリーンアップしてください」と書かれ、ステップ1では「メモリをクリーンアップ」ボタンをタップするよう指示します。ステップ2でApp Storeにリダイレクトされ、ステップ3で特定のクリーナーアプリをインストールするよう促します。
この一連の流れは、ユーザーを特定のアプリをダウンロードするよう誘導しています2。
偽の警告画面の自然なポイント
Webサイトで警告が表示されても、すぐに行動を起こさないことが大切です。今回の「警告画面」をよく見ると、いくつかの不自然な点がありました。

- 画面の右上に「✗」ボタンがあります。
これは、広告を閉じるためのボタンです。 - 偽警告では「すぐに」「今すぐ」「緊急」などの急かす言葉が頻繁に使われます。
- 本物のシステム警告は、設定画面に移動するだけで、特定のアプリのインストールを勧めることはありません。
本当に容量不足などの問題があるかは、iPhoneの設定アプリの「一般」→「iPhoneストレージ」から確認できます。



ここでは実際の使用量が表示され、多くの場合、実際には何も問題がないことがわかります。
また、写真の整理や不要なアプリの削除なども行えます。
騙されてしまった場合の対処法
誘導先のアプリは「写真重複削除 – クリーンアップ & メモリー最適化」という名前で、一見便利そうに見えます。しかし、これだけではインストールするのは早計です。というのも、iPhoneには高度なメモリ管理機能が最初から備わっていて、本来不要だからです3。
このようなアプリは「PUA(Potentially Unwanted Application)」と呼ばれます4。PUAとは「望ましくない可能性があるアプリケーション」という意味で、必ずしも悪意のあるウイルスではありませんが、過度に広告を表示したり、有料プランの契約をさせようとするものが多いです。むしろ、これらのアプリは余計なバックグラウンド処理を行い、バッテリーの消耗を早める可能性があります。
迷惑アプリを削除することが大切
もしクリーナーアプリをダウンロードしてしまっても、慌てる必要はありません。
ほとんどの迷惑アプリは、削除するだけで十分なことが多いです。
ホーム画面でアプリアイコンを長押しし、「Appを削除」を選択すればかんたんに消せます。
しかし、アプリを消す前に確認すべきことがあります。
サブスクリプションに加入していないか?
一つは、購入履歴を確認します。
iPhoneの「設定」から「Apple アカウント(自分の名前)」を選択し、「サブスクリプション」を確認します5。
不要な定期購読の契約があれば、「キャンセル」すればこれ以降の支払いを止めることができます。
ほとんど見かけないですが、アプリ内でアカウントを作成して、クレジットカード情報などを入力するパターンも考えられます。
念のために、迷惑アプリを開いて「プロプラン」などに加入していないかも確認しておくと良いでしょう。
迷惑アプリは、「勘違い」による有料契約を目的にしているので、ユーザーにクレジットカード情報を入力させることは少ないです。
App Store経由の方が、タップやFace IDだけで決済できてしまうからです。
個人的なデータが取られていないか?
もう一つは、データの流出です。
一部の迷惑アプリは、写真や連絡先へのアクセス許可を求める場合があります。
「設定」アプリからアプリの「プライバシーとセキュリティ」から、不審なアプリの権限を許可していないか確認しておきます6。
ただし、権限を許可は取り消すことができても、個人的な情報を取られてしまった場合には、完全に消すことはできません。
「今後は、気をつける」しかないのです。
アクセス権限の確認ができたら、迷惑アプリは削除しておきましょう。
ちなみに、許可していたとしても慌てる必要はありません。
油断はできませんが、全部のデータを抜き取るにもデータ通信に時間もかかりますし、それまで悪意のあるアプリは一部です。
迷惑アプリも悪質すぎると、App Storeから消されてしまうため、「グレーゾーン」で稼ごうと狙っている傾向があります7。
「変なアプリをインストールしてアクセス許可した」というのは、不審者を家に入れてしまったことと同じです。何をされたかわからない部分があるので、気持ち悪いですね。
まとめ
偽の警告とクリーナーアプリの組み合わせは、ユーザーの不安を煽って不要なアプリをダウンロードさせる典型的な手法です。iPhoneには十分な自動最適化機能があるため、外部のクリーナーアプリは基本的に不要です。Web閲覧中に突然現れる警告は疑い、システム設定から実際の状況を確認することで、このような罠を回避できます。
- AppleはSafariのポップアップに偽の警告が含まれる旨を公式に注意喚起し、関与せずタブを閉じることを推奨しています。 – Block pop-up ads and windows in Safari – Apple Support
- 詐欺的ポップアップが「警告」を装って不必要なソフトのインストールや課金に誘導する典型が確認されています。 – How to spot, avoid, and report tech support scams (FTC)
- iOSはメモリプレッシャーに応じてアプリへ警告・解放を促すなど自動管理が前提で、ストレージの整理も「設定→一般→iPhoneストレージ」で標準対応できます。 – Responding to low-memory warnings (Apple Developer)
- PUAはウイルスではないが望ましくない挙動(不要な広告表示等)を行うソフトの分類です。 – Protect your PC from potentially unwanted applications (Microsoft)
- iPhoneの設定アプリからApple ID→サブスクリプションで契約の確認・解約ができます。 – If you want to cancel a subscription from Apple – Apple Support
- 各種アクセス権は設定の「プライバシーとセキュリティ」で確認・取り消しが可能です。 – About privacy and Location Services in iOS, iPadOS, and watchOS – Apple Support
- Appleは詐欺や悪意性が判明したアプリを直ちに削除し、場合によりユーザーに通知すると明記しています。 – About App Store security (Apple Platform Security)