はじめに
一部の記事を読者の範囲を不特定多数にせず限定するため、有料記事にしたいと考えました。
WordPressサイトで記事ごとの有料販売を行いたい場合、どのプラグインを選ぶべきでしょうか。noteのような記事単位での課金システムを自分のサイトで構築する際の選択肢を検討しました。
重要な条件は以下の通りです。
- 記事ごとに個別の価格設定ができること
- 購入者の管理を自分のサイトで完結できること
- Stripe決済に対応していること
- 設定が複雑すぎないこと
特に、大事な条件は、購読者や記事の管理をサイト内だけで完結することです。わざわざ別サービスで管理するなら、noteなどの既存プラットフォームを利用すれば速いからです。
主要な選択肢の比較
Codocの特徴と限界
Codocは日本のサービスで、WordPressプラグインも提供されています。設定は簡単で日本語サポートもあります。しかし、購入者情報はCodocのダッシュボードで管理する仕組みになっており、自分のWordPressサイトでは詳細な購入者管理ができません。
手数料は売上の約15%と比較的高く1、データの完全な所有権も制限されます。手軽さを重視するなら良い選択肢ですが、購入者データを完全に自分で管理したい場合には向いていません。
WooCommerceベースのソリューション
WooCommerce本体は無料ですが、記事販売に必要な拡張プラグインは有料です。WooCommerce Membershipsは年額199ドル2、その他の機能も含めると結果的にRestrict Content Proより高額になります。
さらに、eコマース全般の機能が多すぎて記事販売だけには大げさです。商品設定、会員レベル設定、アクセス制限設定など複数の手順が必要で、初心者には設定が困難です。
Restrict Content Proのメリット
Restrict Content Proは記事ごとの有料販売に特化した機能を持ちます。年額99ドル(1サイト)という価格設定で3、Stripe決済機能と購入者管理機能が含まれています。
最も重要な特徴は設定の簡潔さです。記事編集画面で直接アクセス制限を設定でき、価格設定も直感的に行えます。プラグイン本体は英語ですが、日本語翻訳ファイルが提供されています4。管理画面とフロントエンドの両方を日本語化できるため、運用面での言語の壁はありません。サポートは英語になりますが、設定が比較的シンプルなため、日本語の解説サイトや情報も豊富に見つかります。
年間99ドルというコストをどう考えるか?
年額99ドルのライセンスには1年間のアップデートとサポートが含まれます。更新しなくてもプラグインは動作し続けますが、セキュリティパッチや新機能、WordPressの新バージョンへの対応は受けられなくなります。本機能は安定しており、更新を一時的に停止しても重大な問題が発生する可能性は低いですが、セキュリティの観点から、継続的な更新は推奨されます。
ということで、限定公開のために99ドル。ちょっと迷うところです。実際にしっかり販売するなら、必要なコストです。しかし、まだニーズが読めず、とりあえず限定公開にしたい段階なので、「パスワード保護」でもよいかな、という気もしました。ただし、「パスワード保護」だと、サイト管理者もパスワード入力が必要になるので、自分の記事を読むのには不便です。
購入者側の購入操作
読者が記事を開くと、記事の一部だけが表示されます。「続きを読むには購入が必要である」というメッセージが表示され、購入ボタンをクリックすると登録ページに移動します。
メールアドレスとパスワードを設定し、Stripeの安全な決済画面で支払い情報を入力します。決済完了後は即座に記事にアクセスできるようになります。このあたりは、noteなどの一般的な買い切り記事の購入の流れと同じで、馴染みやすいです。
WordPressユーザーとしての登録
購入者はWordPressサイト内にユーザーアカウントが作成されます。デフォルトではSubscriber(購読者)権限が付与されますが5、設定により他の権限レベルも選択できます。
- サイト側は、WordPressの標準ユーザー管理機能に加えて、Restrict Content Pro独自の詳細な購入履歴管理も利用できます。どの人がどの記事を購入したか、購入日時、決済状況などを一覧で確認できます。
- 購入者も自分のアカウントページで購入履歴の確認、PDFの請求書ダウンロード、プロフィール情報の更新などができます。管理者は手動でのアクセス権付与や返金処理も行えます。
基本的な設定フロー
プラグインを有効化すると、必要なページが自動的に作成されます。登録ページ、ログインページ、アカウント管理ページ、購入完了ページなどです。
Stripe連携は管理画面のPayment GatewaysタブでAPIキーを入力するだけで完了します。秘密キーと公開可能キーの2つを設定すれば6、すぐに決済機能が使えるようになります。
記事ごとに価格設定
記事の価格設定は「メンバーシップレベル」という仕組みで実現します。例えば「記事A – 500円」「記事B – 300円」といった具合に、記事ごとに専用のメンバーシップレベルを作成します。
各記事の編集画面では「Restrict Content」ボックスが表示され、どのメンバーシップレベルがアクセス可能かを選択できます。期間を無制限に設定すれば、一度の購入で永続的にアクセスできる買い切り販売になります。
まとめ
記事ごとの有料販売を実現するプラグインとして、Restrict Content Proの利点は、設定の簡潔さ、購入者データの完全な管理権、適正な価格設定、Stripe決済への標準対応、WordPressとの親和性の高さなどです。Codocのような外部サービスとは異なり、データの所有権を保持しながら柔軟な運用ができます。WooCommerceベースのソリューションと比較しても、コストと設定の複雑さの両面で優位性があります。
- Codocの手数料は2024年時点での情報です。最新の料金体系は公式サイトでご確認ください。 – Codoc公式サイト
- WooCommerce Membershipsの価格は2024年時点での情報です。為替レートにより日本円での価格は変動します。 – WooCommerce Memberships公式ページ
- Restrict Content Proの価格は2024年時点での情報です。Personal License(1サイト)、Plus License(3サイト・年額199ドル)、Professional License(無制限サイト・年額299ドル)があります。 – Restrict Content Pro公式サイト
- 日本語翻訳ファイルは有志により作成・配布されています。WordPressoなどのサイトで入手可能です。 – Restrict Content Pro日本語翻訳ファイル
- WordPressのユーザー権限には、Subscriber(購読者)、Contributor(投稿者)、Author(作成者)、Editor(編集者)、Administrator(管理者)の5つのレベルがあります。記事販売の場合はSubscriberが最適です。 – WordPress ユーザーの種類と権限
- StripeのAPIキーは、Stripeダッシュボードの「開発者」→「APIキー」から取得できます。本番環境とテスト環境で異なるキーを使用します。 – Stripe APIキー取得方法