スマホで白色申告をしようと弥生IDを作り、「弥生 申告」アプリでログインしたところエラーになって進めませんでした。


「弥生 申告」アプリと「弥生の白色申告オンライン」の関係は、一般的なウェブサービスのアプリとはちょっと違っていました。アカウント作成だけでなく、サービス利用申し込みや「サービス起動」という初期設定が必要なのです。
「弥生 申告」アプリと「弥生の白色申告オンライン」
「個人事業で白色申告が簡単にできるスマホアプリを探している」という相談がありました。
いくつかの候補から無料で使える「弥生の白色申告オンライン」と「弥生 申告」アプリを試してみました。


- 「弥生 申告」アプリ App Store / Google Play
(弥生のクラウド青色申告ソフト・白色申告ソフト専用アプリ)
「弥生 申告」アプリは、弥生の白色申告オンライン・青色申告オンラインの両方に対応した入力用スマートフォン・アプリです。



つまり、スマートフォン用のアプリ「弥生 申告」は、単体では動作しません。
帳簿データの保存や集計のオンラインサービス「やよいの白色申告オンライン」と連携して使います。
そのため、利用前には弥生マイポータルの会員登録とサービス利用申し込みが必要です。
簡単にいうと、「受け皿」となる「弥生の白色申告オンライン」がメインで、「弥生 申告」アプリはその入力を簡単にする役割です。
レシートを撮影して自動で読み取るための、「弥生 レシート取込」という別のアプリもあります1。「弥生 レシート取込」アプリでレシートをカメラで撮影すると、日付や金額を自動で読み取ってくれますが、あまり精度は高くないので、修正が必要なことも多いです。
- 弥生 レシート取込(App Store / Google Play)
日々の記録から申告書ができるまで
日頃は現金出納帳を作成して、決算時に白色申告の提出書類を作成します。


帳簿の項目を集計すると収支内訳書が作成できます。
確定申告では、さらに「控除」などの金額を自分で入力していき、完成します。
クラウド会計システムの注意点
会計ソフト・会計システムを選ぶときに重要なのは、「データがどのように保存されるのか」という点です。
というのも、事業を継続している期間に、サービスが終了したり有料化されても、簡単には別サービスに移行できないからです。これを「ベンダーロックイン」といいます。
- 従来のパソコンにインストールするタイプの会計ソフトは、データが自分のパソコンの中に保存されます。インターネットがなくても基本的に使えるわけですね。
- 一方、弥生の白色申告オンラインのようなクラウド型は、データがシステム会社が管理するサーバーに保存されます。つまり、入力も閲覧も常にインターネット経由です。
多くのサービスではデータを「エクスポート」する機能があります。たとえば、弥生の白色申告オンラインは、帳簿データをCSV形式でダウンロードでき、Excelなどでも開くことができます2。また、確定申告書もPDF形式で保存できます。ただし、他の会計ソフトにそのままデータを移行できるわけではありません。会計システムごとにデータの形式が違うので、CSV形式でダウンロードしても、そのまま別のソフトに取り込めるわけじゃないんですね。
また、とくに、クラウド型の会計システムでは、データ保存でサービスに依存しています。たとえば、月末や確定申告の直前期には、会計ソフトサーバーにアクセスが集中して接続が遅くなったり、サーバー障害があったりして、手続きが遅れることも考えられます34。
弥生IDの登録と「やよいの白色申告 オンライン」の申し込み
「やよいの白色申告 オンライン」の利用開始は、ちょっと独特な仕組みです。
YouTubeやAmazonなど一般的なウェブサービスでは、アプリからアカウントを作成するとすぐにサービスを利用できるのが通例です。
一方、「やよいの白色申告 オンライン」では、登録後に利用するサービスを選ぶ、という手続きがあります。
(1)弥生IDの登録しただけでは利用できず、(2)「やよいの白色申告 オンライン」のサービス申し込み、(3)サービス起動、が必要なのです。
このような独特の仕組みになっているのは、弥生株式会社がソフトメーカーであることが関係しているのかもしれません。弥生IDは、はじめからクラウド会計システムのアカウントではなく、パッケージ型の会計ソフトのライセンス認証の仕組みだからです。
「弥生マイポータル」でアカウントを作成する
また、「弥生 申告」アプリの「はじめての方へ」からはヘルプページが表示されるだけで、弥生IDの登録画面には進みませんでした。
登録作業などはブラウザから「弥生マイポータル(myaccount.yayoi-kk.co.jp/login)」にアクセスする必要があります。




名前、メールアドレス、パスワードを設定すると弥生IDの登録が完了します5。



サービス利用申し込み
ただし、これだけでは、「弥生 申告」アプリでログインしても利用できませんでした。
次に、「サービス利用申し込み」と「起動」が必要だからです。


初期設定が完了していません。マイポータルから[製品を起動する]をクリックして初期設定を完了してください。
弥生マイポータルでは、オンライン会員の登録をするだけで、自動的にオンラインシステムが使えるわけではありません。「弥生の白色申告オンライン」だけでなく「弥生の青色申告オンライン」もあるため、どのオンラインシステムを使うのか、はじめに利用申し込みをする必要があるんです。
ブラウザからマイポータルにログインすると、「クラウドサービス起動」の画面が表示されます。
まだ空っぽなので、クラウドサービスの申し込みをしていきます。



ここで、「やよいの白色申告 オンライン」の「サービスの申し込み」をして、料金プランを選びます。




「フリープラン」でも、すべての機能が永年無料で使えます6。
続いて、登録者情報を入力すると、「やよいの白色申告 オンライン」の利用契約が完了します。




「やよいの白色申告 オンライン」の「ずっと無料」にはびっくりしますが、これは将来的に電話やメールのサポートが必要な場合や青色申告に進めたいときに有料プランに選択していくことになります。


「白色申告オンライン」は、「青色申告オンライン」の「お試し版」のような位置づけなんですね。
いったんサービスに慣れたら、その後も引き続き同じ系統の会計システムを使ってくれるので。
サービスの「起動」とアプリでのログイン
利用契約が完了をしても、すぐにはアプリでは利用できません。
マイポータルのクラウドサービス起動で、「やよいの白色申告 オンライン」の「製品を起動する」から「利用開始」を押す必要があります。




これで、ウェブ版の入力画面が出てきて、サービスが動き出しました。
やっと、アプリ版でもログインでき、取引画面が表示できました。


アプリの「設定」を見ると、ログインした弥生IDで利用中のサービスに、「やよいの白色申告オンライン」の項目があるのがわかります。
アプリでの日々の入力作業
スマホアプリを開くと、取引画面に項目を追加していくことができます。

白色申告の帳簿では、基本的に現金の増減を記録します。
「売上」や「消耗品費」などの勘定科目と金額を入力するだけで、簿記の知識がなくても使えるように作られています。
売上の入力は、「収入」で勘定科目は「売上」にします。



経費の記録も、勘定科目を決めるだけです。



入力したデータは、後からも編集できます。

【重要】確定申告書はウェブ版でしか作れない
さて、日々の入力はスマホで快適にできました。
でも、ここで重要なポイントがあります。
集計データの確認や確定申告書の作成は、スマホアプリではできません7。
入力した内容は、自動でクラウド(弥生のサーバー)に保存されているので、パソコンなどからウェブ版にログインして確認します。

つまり、こういう使い分けになります:
- スマホアプリ:日々の帳簿入力
- ウェブ版:レポートの確認や確定申告書の作成・提出
ウェブ版で確定申告書を作成する
確定申告の時期になったら、パソコンのブラウザから「やよいの白色申告 オンライン」にログインします。
確定申告書の作成画面は、画面の指示に沿って順番に入力していくだけです。
白色申告に必要な「収支内訳書」と「確定申告書」が作成できます。
ステップが完了するごとに緑色のチェックマークが表示されるので、今何をすればいいかが分かりやすくなっています。控除額も自動計算されるので、難しい計算は不要です。
電子申告で提出する
また、作成した申告書は、会計ソフトから直接e-Taxに電子申告を送信することで提出できます8。ただし、認証には、マイナンバーカード(電子署名とパスワード)とスマートフォンが必要です。
それ以外に、作成した書類を印刷して税務署に持参または郵送する方法もあります。
【応用】銀行口座やクレジットカードの取引データの取り込み
「やよいの白色申告 オンライン」には、銀行口座やクレジットカードと連携する機能もあります。
これを設定すると、取引データが自動で取り込まれて、仕訳も自動で行われます。
ただし、はじめのうちは手動で登録してもよいと思います。
やってみてわかった良い点と課題
「日々の記帳はスマホで、確定申告はパソコンで」という使い分けができるなら、弥生の白色申告オンラインは良い選択肢です。弥生の白色申告オンラインは「日々の記帳をスマホで楽にする」という点では優れています。無料で使えるというのも大きなメリットです。白色申告をする個人事業主にとって、初期費用がかからないのは助かります。
ただ、「すべてスマホで完結する」わけではありません。確定申告の時期には、結局パソコンが必要です。また、クラウドサービスへの依存というリスクもあります。ただ、データをCSV形式でダウンロードできるので、定期的にバックアップを取っておけば、記録は手元に残せます。
- 弥生は2種類のスマホアプリを提供しており、「弥生 申告」アプリで取引入力、「弥生 レシート取込」アプリでレシート撮影とデータ取込が可能。撮影したデータは「スマート取引取込」機能で自動的に仕訳される。 – 永年無料!弥生の白色申告オンラインを使ってみた!スマホアプリも便利 – やよいの白色申告 オンラインはフリープランでも十分実用できる
- やよいの青色申告オンラインには「弥生データのエクスポート」機能があり、取引データをCSV形式でダウンロードできる。ただし、やよいの白色申告オンラインについては、青色申告版と同様の機能があるかは公式サポート情報で要確認。 – 弥生データのエクスポート – やよいの青色申告オンラインからfreeeへデータを移行する手順とは?
- 2018年10月31日に、freeeで全サービスが緊急メンテナンスのため12時34分から15時00分まで停止しました。原因はシステム運営オペレーションの操作ミスでした – システム障害と復旧のお知らせ | クラウド会計ソフト freee
- 2024年11月29日、月末のタイミングでマネーフォワードの複数サービスでつながりにくい状態が発生しました。原因として月末の利用者数急増によるサーバー過負荷が考えられています – サービスに繋がりにくい事象について(2024年11月29日 13:15追記あり) | マネーフォワード クラウド年末調整サポート
- スマートフォンアプリを利用する際には、マイポータル(Web) のログイン情報(弥生ID・パスワード)が必要です。 – スマートフォンアプリのログイン方法(スマートフォンアプリ)| やよいの白色申告 オンライン サポート情報
- 弥生株式会社は2016年12月26日より、やよいの白色申告オンラインのフリープランを永年無償化した。全ての機能が永年無償で利用でき、サポート機能のみ有料プランで提供される。 – やよいの白色申告 オンラインはフリープランでも十分実用できる – 業界初、個人事業主向けのクラウド会計ソフト「やよいの白色申告 オンライン」を永年無償化
- 弥生の公式サイトとアプリストアの説明によると、「確定申告書、収支内訳書等の作成はWindowsもしくはMacのコンピューターで行います。本アプリでは作成できません。」と明記されている。 – 『弥生 申告』アプリ – Google Play – スマホで使えるクラウド白色申告ソフト – やよいの白色申告 オンライン
- やよいの白色申告オンラインは、e-Taxとの連携により、マイナンバーカードをスマホで読み取って確定申告書類を電子送信できる。対応機種のスマホ(おサイフケータイ機能があるもの)が必要。 – やよいの白色申告 オンラインはフリープランでも十分実用できる – 【無料】クラウド白色申告ソフト「やよいの白色申告 オンライン」