トラブルの発生
「パソコンでメールが送受信できなくなった」という相談を受け、パソコンを確認しました。すると、Microsoft Outlookを起動してもプロファイルを正常に読み取れない状態になっていました。
何が起きているのか理解するため、まずは状況把握に努めました。
原因の調査
プロファイル情報(〜.pst:メールの設定や個人データが保存されているファイル)の場所を調べてみると、OneDriveフォルダの中の「ドキュメント」フォルダ内にある「Outlookファイル」というフォルダに保存されていました。
.pstファイルの更新日時を確認すると4月15日でした。OneDriveのファイル履歴で正常に動作した時点に戻せるかと期待しましたが、この4月15日のバージョンしかありません。どうやら最近、OneDriveのバックアップ機能を有効にしたことで、ドキュメントフォルダの保存場所が変更されてしまったようです。
OneDriveとは、マイクロソフトが提供するクラウドストレージサービスで、ファイルをインターネット上に保存できるサービスです。家の書類を別の場所に移動したら見つからなくなったような状態と似ています。
解決に向けた取り組み
まず考えたのは、プロファイル情報をパソコン本体の元あった場所(ユーザーフォルダのローカルにある「ドキュメント」フォルダ内の「Outlookファイル」フォルダ)にコピーすれば解決するのではないかという方法です。念のため元の場所にあるファイルはそのままにしておきました。
Outlookを起動すると、データファイルを開くためのパスワード入力画面が表示されました。相談者によれば、最近同じような画面があり、パスワードを設定したばかりだったとのこと。このトラブルの最中に決めたパスワードだったようで、すぐに確認できました。
しかし、パスワードを入力しても受信箱には何も表示されませんでした。プロファイル情報のファイルサイズは1.5ギガバイトもあり、メール情報自体は存在しているようでしたが、正常に読み取れない状態でした。
Outlookのバージョン問題
さらに相談者から「Outlookの画面が前と違う気がする」という指摘がありました。確認してみると、Outlookの情報には「Microsoft 365のサブスクリプション製品」と表示されていました。
Outlook自体が別バージョンにアップグレードされていたのです。「Program Files (x86)」フォルダ内の「Microsoft Office」→「root」→「Office16」というフォルダにあるOutlookのアプリケーション情報の更新日時は4月15日の11時でした。
つまり、Outlookの更新とメールが読み取れなくなったタイミングが一致していたのです。
設定から「アプリと機能」を確認すると、「Microsoft Office Personal プレミアム」と「Microsoft 365」がともにインストールされており、最終更新日はどちらも4月15日でした。
代替策としてのウェブメール活用
Outlookのプロファイル読み取りは一旦諦め、メールサーバーに直接「ウェブメール」でアクセスすることにしました。ウェブメールとは、ブラウザ上でメールの送受信ができるサービスで、特別なソフトをインストールする必要がありません。多くのメールサービスでは、ブラウザからメールを閲覧・管理できるログイン画面をオンライン上に用意しています。
だいぶ以前に取得したメールアドレスのためパスワードも紛失していました。幸い、登録していた電話番号が現在も使用できたので、パスワードはスムーズに再設定できました。
ウェブメールにアクセスすると、過去のメールから最新のメールまですべて残っていました。以前のメールアプリでは、サーバーからメールを取得しても削除せずに保存したままにする設定になっていたようで、すべてのメールを閲覧できました。
Outlookとウェブメールの違い
- Outlookメールソフトは、パソコンにインストールするソフトウェアです。いわば「郵便ポスト」がパソコンの中にあるイメージです。メールはパソコンにダウンロードされて保存されます。
- OCNウェブメールは、ブラウザ(インターネットエクスプローラーやGoogle Chromeなど)で見るタイプのメールです。「郵便局に行って手紙を読む」ような感じです。メールはインターネット上のサーバーに保存されています。
シンプルな解決策の採用
さしあたり、ウェブメールにログインしてメール管理することにしました。理由は単純です。Outlookの設定は複雑ですが、ウェブメールはシンプルで使いやすいからです。
今回の問題では、Outlookというソフトと保存されたメールデータの間に「ずれ」が生じたため、パソコンにメールが存在するのに見られなくなりました。ウェブメールに切り替えると、データはサーバー側(郵便局側)にあるので、パソコンの不具合に影響されずにメールを見ることができます。タスクバーにログインページのリンクを追加しておけば、クリック一つですぐにメールを確認できます。新しいパソコンに買い換えた場合でも同じ方法ですぐにメールが確認できますし、スマートフォンやタブレットでも同様の操作で利用できるという利点もあります。
昔はウェブメールの仕組みが十分整備されていなかったため、メールソフトが必要でした。しかし現在はウェブメールでも十分対応できます。メールの送受信による基本的な連絡だけなら、ウェブメールの方がシンプルで便利です。
連絡先やカレンダー情報の活用など追加機能が必要な場合は、メールソフトを利用すると便利ですが、基本的なメール機能だけならウェブメールで十分というのが今回の対応の結論です。
まとめ
このケースでは、OneDriveのバックアップ機能とOutlookのアップデートが重なり、メールの送受信ができなくなるトラブルが発生しました。複雑な原因究明と修復よりも、ウェブメールという代替手段を選ぶことで、シンプルかつ効果的に問題を解決できました。