Windows 11のファイル履歴を
外付けドライブで活用する

大切なファイルを失う恐怖は、パソコンを使う誰もが抱えている不安です。Windows 11の「ファイル履歴」機能は、この問題を解決する強力な武器になります。しかし、多くの人がその真価を知らないまま使っています。

ファイル履歴の最大の特徴は、単なるバックアップではなく「時間をさかのぼれる」点にあります。昨日のバージョン、先週のバージョン、先月のバージョンと、まるでタイムマシンのように過去のファイルを取り出せます。

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1. セットアップの実際の手順

ファイル履歴の有効化には2つの方法があります。

  • コントロールパネルから「システムとセキュリティ」を選び、「ファイル履歴」に進みます。「ドライブの選択」で外付けドライブを指定し、機能をオンにします。
  • 設定アプリからも同様の操作ができます(ただし、Windows 11のビルドによって表示が異なる)。設定 →[システム]→[ストレージ]→[ストレージの詳細設定]→[バックアップ オプション(File History)]→[ドライブを追加]で外付けドライブを選択 → 自動バックアップをオン。

初回設定後、外付けドライブに「FileHistory」フォルダが自動作成されます。この中にユーザー名とPC名の階層でバックアップデータが整理されます。同時に「Catalog1.edb」などの管理ファイルも生成され、これがバックアップの全体像を記録します。

1.1. バックアップされるデータ

Windows 11のファイル履歴は、初期設定では特定の場所のみを対象とします。ドキュメント、ピクチャ、ビデオ、ミュージックの各ライブラリ、デスクトップ、そしてオフラインのOneDriveファイルが含まれます。

重要なのは、この対象範囲が思っているより狭い点です。たとえば、Cドライブの任意の場所に作った作業フォルダなどは対象外です。

Windows 11では従来の「フォルダーの追加」ボタンが見当たらない場合があります1。この制限を回避する方法があります。保護したいフォルダを右クリックし、「その他のオプションを表示」から「ライブラリに含める」を選択すると、ファイル履歴の対象に加えられます。

1.2. 復元方法の使い分け

ファイルの復元には2つの入り口があります。

  1. エクスプローラーからの復元は、普段の作業の延長で直感的に使えます。対象のファイルやフォルダがある場所で右クリックし、「以前のバージョンの復元」を選ぶだけです。
  2. コントロールパネルからの復元は、より体系的にバックアップを探索できます。「個人用ファイルの復元」から時系列でファイルを確認し、目的のバージョンを見つけて復元します。

1.3. 外付けドライブとNTFSフォーマット

外付けドライブでファイル履歴を使う場合、ファイルシステムの選択が成功の鍵を握ります。

新しい外付けドライブを購入した場合、WindowsのディスクマネジメントツールでNTFSにフォーマットし直すと良いでしょう。NTFSフォーマットが最も安定した結果を得られます。

exFATは一般的なファイル転送では便利ですが、継続的なバックアップ用途では問題が起きる可能性があります。実際、一部のストレージメーカーはexFATをバックアップ用途に推奨していません2。これは、長時間の書き込み処理や頻繁なアクセスに対する耐性がNTFSより劣るためです。

1.4. ファイル履歴ではシステムの復旧はできない

ファイル履歴はファイル単位の世代管理であり、システム全体の復旧には対応していません。OSやアプリケーションの復旧には、別途「システムイメージ」の作成が必要です。

また、メールのPSTファイルのような大きなファイルで頻繁に更新されるものは、履歴が急速に肥大化します。こうしたファイルは除外フォルダーに指定するか、専用のバックアップ方法を検討しましょう。

容量設計では、バックアップ対象データの2~3倍の容量を外付けドライブに確保すると安全です。特に写真や動画が多い環境では、この余裕が重要になります。

2. 【詳細】「増分バックアップ」の仕組み

ファイル履歴の効率性は、増分バックアップという技術にあります。これは「変更された部分だけを保存する」方式です。

システムは NTFS の USN ジャーナル(Update Sequence Number Journal)という機能を活用します3。これはファイルシステムが自動的に記録する「変更履歴の台帳」のようなものです。ファイルの作成、更新、削除がすべて記録されるため、ファイル履歴サービスは効率的に変更を検出できます。

バックグラウンドでは「File History Service(fhsvc)」というサービスが動作します。通常は「手動(トリガー)」起動に設定されており、必要なときだけ動き出します4。もし、このサービスを無効化してしまうと、バックアップが止まってしまいます。

2.1. バージョン管理とメタデータの詳細

同じファイルの異なる時点でのコピーが並行して保存される仕組みは、ESE(Extensible Storage Engine)データベースによって管理されます。これはMicrosoftが開発した軽量データベースエンジンで、Exchange ServerやActive Directoryでも使われている技術です。

Catalog1.edbとCatalog2.edbファイルには、library、file、namespaceなどのテーブルが含まれ、どのファイルがいつバックアップされ、どのバージョンがどこに保存されているかの全情報が記録されます5

3. 保存頻度と保持期間の詳細設定

保存頻度と保持期間の設定が、ファイル履歴の実用性を左右します。

  • 既定の「毎時」保存は、文書作業が中心の環境に適しています。
  • 写真や動画を多く扱う場合は「1日ごと」に変更すると、ストレージ容量を節約できます。これらのファイルは頻繁に変更されることが少ないためです。
  • 保持期間は「空き領域が必要になるまで」が実用的です。この設定では、ドライブの容量が不足してきた時点で自動的に古いバージョンが削除されます。手動での管理が不要になり、常に最新の状態を保てます。

4. 環境別の推奨設定

仕事でドキュメント中心の作業をする場合、保存頻度を1時間、保持期間を3か月に設定すると、作業効率と容量のバランスが取れます。重要な資料の誤削除や破損から、十分な期間保護されます。

趣味で写真や動画を多く扱う場合は、保存頻度を1日、保持期間を「空き領域が必要になるまで」に設定します。これらのファイルは一度作成されると変更頻度が低いため、この設定で十分です。

5. まとめ

Windows 11のファイル履歴は、NTFS USNジャーナルによる変更検出とESEデータベースによるメタデータ管理により、効率的な増分バックアップを実現しています。適切な外付けドライブの選択、ライブラリを活用した対象範囲の拡張、そして用途に応じた詳細設定の調整により、堅牢なファイル保護システムを構築できます。

  1. Windows 11のファイル履歴では、UIの変更により直接的なフォルダー追加機能が削除されており、代わりにライブラリ機能を使用してバックアップ対象を拡張する必要があります。 – Reddit: Windows 11 File History
  2. SeagateのOptional Formatting and Partitioningガイドでは、exFATがバックアップ用途では推奨されないと明記されています。 – Seagate Optional Formatting Documentation
  3. USNジャーナルはNTFSファイルシステムがボリューム上のファイルに対して行われた変更の永続的ログを提供する機能です。ファイル、ディレクトリ、およびその他のNTFSオブジェクトが追加、削除、変更されると、NTFSがUSN変更ジャーナルにレコードを入力します。 – Microsoft Learn: fsutil usn
  4. File History ServiceはWindows 11では「Manual (Trigger Start)」として設定されており、LocalSystemアカウントで動作し、ユーザーファイルの意図しない損失からの保護を提供します。 – File History Service Windows 11 Configuration
  5. ESE(Extensible Storage Engine)データベースはMicrosoftが開発した軽量データベースエンジンで、Active DirectoryやExchange Serverでも使用されている技術です。.edbファイルはMicrosoft製品で広く使用されています。 – ESEDatabaseView – NirSoft