0 Microsoft Officeから「0円で購入しました」メールが届いた

  • 新しいPC買ったらMicrosoftから「0円で購入しました」ってメールが来て焦りました。
  • 実は、2023年5月からOfficeのライセンス認証が「デジタルアタッチ版」に変わって、初期設定時にアカウントに紐づけられます。
  • この0円購入のメールは「認証完了」の通知でした。

「注文が処理されました」?

新しいパソコンを購入して初期設定をしたら、Microsoftから「注文が処理されました」という不思議なメールが届きました。

Microsoft の注文 #〜 が処理されました

〜年〜月〜日 にお買い物いただきありがとうございます

事前注文を除き、購入したダウンロードは現在利用可能です。

注文番号:
購入日:

注文の詳細

Office Home & Business 2024
プロダクトキー:〜

身に覚えのない購入通知に驚いて、何か間違った契約をしてしまったのではないかと心配になります。しかし、実はこれ、このメールは、Officeライセンス認証方式の大きな変化によるものです。

最近は、Microsoft 365の有料プランに間違えて加入してしまうケースもあるので、心配になりましたが、今回のメールはそうではなさそうです

「0円購入」メールとプレインストール版Office

Microsoft Officeから「0円で購入しました」メールが届いたのは、プレインストール版Officeの認証方式が2023年5月以降、大きく変わったからです1

Office「0円購入」メールの正体 購入通知メール USD 0.00 Office Home & Business 2024 ✓ 詐欺ではない ✓ 正規の通知 デジタル アタッチ版 2023年5月〜 プロダクトキー カード廃止 ライセンス情報を PC本体に組込 自動認証 Microsoft アカウント紐付 マザーボード + Windows + アカウント

パソコンに最初から入っているOffice(Word、Excelなど)を「プレインストール版」と呼びます。このOfficeを使えるようにするため、初期設定時に「ライセンス認証」という作業が必要です。この自動認証の過程で、システム上は「Microsoft Storeで製品を要求して取得する」という形式を取ります。そのため購入完了メールが送られてきます。

しかし、その金額は0円と表示されます。それは、Officeの代金がすでにパソコン本体の価格に含まれているからです。パソコンの値段にはOffice付きの料金が含まれていますが、実際に使うにはMicrosoftアカウントへの登録作業が必要です。この登録作業が、形式上は「0円のクーポンで購入」のように処理されます。

プロダクトキーカードの変わりにデジタルアタッチ版

新しいパソコンには、従来はプロダクトキーカード(25桁の英数字が書かれた紙)がついていました。しかし、2023年5月からはプロダクトキーカードが廃止され、「デジタルアタッチ版」という新方式に切り替わったのです2

デジタルアタッチ版では、ライセンス情報がWindowsインストールに関連付けられています。

  1. 初回起動時、Officeアプリを開くと自動的にMicrosoft Storeが起動し、「要求する」ボタンをクリックすると認証が完了します。
  2. この時、Microsoftのサーバーは次の情報を確認します。パソコンのハードウェア情報(主にマザーボード)、Windowsのライセンス状態、ログインしているMicrosoftアカウント。これらの情報を組み合わせて、そのパソコン専用のライセンスを生成します。
  3. 生成されたライセンスはMicrosoftアカウントに紐付けられ、「購入済みの製品」として記録されます。

Microsoftアカウントにライセンスを紐づけるの主な理由は、不正コピーの防止です。しかし、ユーザー側にもメリットがあります。それは、パソコンが故障したときなどに、Microsoft Officeを再インストールすることができることです。初期設定で利用した Microsoftアカウント にはライセンス情報が残っているので、再度 ダウンロードできます。

注意すべき点

ここで重要なのは、ライセンスがパソコンのハードウェアと強く結びついている点です3マザーボードを交換すると事実上「別のパソコン」とみなされ、ライセンスが無効になる可能性があります4

また、デジタルアタッチ版には、従来と異なる特徴があります。

  • まず、定期的なインターネット接続が必須です。完全にオフライン環境で使い続けると、ライセンス認証エラーが表示されることがあります。メーカーの説明では、少なくとも1〜2年に1回はMicrosoftアカウントでサインインする必要があります5
  • 次に、パソコンを購入後、一度もOfficeを起動せずにWindowsの初期化を行うと、ライセンス情報が失われる可能性があります。新しいパソコンを手に入れたら、まず必ずOfficeを起動して認証を完了させてから、他の作業を始めるべきです。

また、このライセンスは他のパソコンに移行できません。パソコンを買い替える際は、新しいパソコンで改めてOfficeを購入する必要があります。

なぜこの変更が行われたのか

デジタルアタッチ版への移行には、明確な理由があります。

  • 第一に、偽造プロダクトキーの問題です。紙のカードは複製が容易で、不正なキーが出回っていました。デジタル化により、この問題が大幅に減少します。
  • 第二に、ユーザーの利便性です。25桁のプロダクトキーを手入力する手間がなくなり、カードを紛失する心配もありません。初期設定が簡素化され、パソコン初心者でも迷わず使い始められます。
  • 第三に、ライセンス管理の効率化です。Microsoftはサーバー側で全てのライセンスを一元管理できるようになり、不正使用の検出や、正規ユーザーへのサポートが容易になりました。

約25年をかけて、Officeのライセンス認証は「紙に書かれたキーを手入力」から「パソコンが自動で認証」へと進化しました。この変化は、不正対策とユーザー体験の向上という、一見相反する二つの目標を同時に実現する試みといえます。

Officeライセンス認証の歴史

この変化をより深く理解するため、Officeライセンス認証の歴史を振り返ってみましょう。

Office 2000〜2003時代

CD-ROMケースにオレンジ色のシールでプロダクトキーが記載されていました。オンライン認証は基本的に不要で、キーを入力すればすぐに使えました。不正コピー対策が今ほど厳しくなかった時代です。

Office 2007〜2010時代

ここから状況が変わります。Office 2007では51回目の起動から、Office 2010では30日経過後に機能制限がかかるようになりました6インターネットまたは電話でのライセンス認証が必須になったのです。不正コピーの増加に対応するための措置でした。

Office 2013〜2019時代

プロダクトキーカードが別途添付され、さらにMicrosoftアカウントへの紐付けが導入されました。これにより再インストールが簡単になり、クラウドでのライセンス管理が始まりました。

Office 2021〜2024(デジタルアタッチ版)

そして2023年5月、NECやパナソニック、富士通などの主要メーカーが順次、プロダクトキーカードを廃止しました。ライセンス情報は完全にデジタル化され、パソコン本体に組み込まれるようになったのです。

まとめ

新しいパソコンで届く「USD 0.00」の購入メールは、デジタルアタッチ版Officeのライセンス認証完了通知です。Office代金はパソコン購入時に既に支払い済みで、初回起動時にMicrosoftアカウントへ紐付ける作業が、形式上「0円購入」として処理されます。2023年5月以降、主要メーカーはプロダクトキーカードを廃止し、ライセンス情報をパソコン本体に組み込む方式(デジタルアタッチ版)に移行しました。この方式では、マザーボードとWindowsライセンスに関連付けられたデジタルライセンスを、Microsoftサーバーが自動生成します。


  1. NECは2023年5月発表のG世代から、パナソニックは2023年11月より順次、デジタルライセンス版への移行を開始しました。 – Officeライセンス方式の変更について- 紙ライセンス版からデジタルライセンス版へ – | NEC
  2. デジタルアタッチ版では、プロダクトキーカードは同梱されず、デジタルライセンスによるオンライン認証方式になっています。 – Microsoft® Office デジタルライセンス版について | パナソニック パソコンサポート
  3. デジタルアタッチ版では、パソコンの製造時にメーカーからMicrosoftにシリアルナンバーやProduct Key ID(PKID)などの情報が送信され、Microsoftのサーバー経由でライセンス認証されます。 – FMV Q&A – [Office] デジタルアタッチ版(ライセンス認証方法)についてよくあるお問い合わせ
  4. OEM版ライセンスはマザーボードや主要ハードウェア構成と結びついており、マザーボード交換後は再認証が必要になる場合があります。 – OEM版Office 2021のライセンス問題を徹底解説 | IT trip
  5. パナソニックは2年に1回以上、VAIOは年に1回以上のMicrosoftアカウントへのサインインを推奨しています。 – Microsoft® Office デジタルライセンス版について | パナソニック パソコンサポート[Microsoft Office] Office 2024 の概要・ライセンス認証方法(デジタルアタッチ版・プロダクトキーカードが同梱されていない機種)
  6. Office 2007は51回目の起動から、Office 2010は初回起動後30日間はライセンス認証なしで使用可能で、それを過ぎると機能制限モードに切り替わります。 – FMV Q&A – [Office 2007] Microsoft Office Personal 2007でライセンス認証をする方法を教えてください。FMV Q&A – [Office 2010] ライセンス認証をする方法を教えてください。