いつものように「SVGでスライドを作ってください」とClaude Sonnet 4.6に頼んだら、Sonnet 4.5のときと見た目も手順もだいぶ違うスライドが出てきました。


Claude Sonnet 4.6にアップデートしてから、モデルが賢くなったせいなのか。
調べてみると、「スキル」という仕組みが関係していることがわかりました。
1. スキルとは「必要なときだけ読む手順書」
Claude Sonnet 4.6にスライド作成を依頼したら、文字が小さく、複雑なスライドを提示してきました。


同じ指示をClaude Sonnet 4.5に実行してみると

作業ログを眺めていると、どうも「スライド作成スキル」を掴んで動いている気配があります。
スキル定義を見に行ったら、そこには“PowerPoint(.pptx)前提のワークフロー”が明確に書かれていました。

pptxスキルを確認してみると、発火条件がかなり広く書かれていました。
要点だけ言うとこうです。
「.pptxが入力・出力で関係するなら使う」だけでなく、ユーザーが「deck」「slides」「presentation」などを言った時点で、pptxを触る前提のワークフローに入る、という設計です。
私はこれまで、生成物をそのままWebで扱いやすいSVGとして作り、必要なら後で編集する、というやり方にしていました。
ところが4.6では、プロンプトの意図よりも「スライド=pptx」という既定路線が強く出た感じです。
スキルの正体は、SKILL.mdというファイルに書かれた作業手順書です。
PowerPointのスキルなら「スライドを作るときはこのライブラリを使い、こういう順番で組み立てなさい」という指示が書かれています。
この手順書は最初からすべて読み込まれるわけではなく、必要になったときだけ取り出されます。
たとえば、「スライド」「プレゼン」「デッキ」といった言葉が会話に出てきたとき、はじめてPowerPointの手順書が読み込まれる設計です。
# Skillの構造
Skill/
SKILL.md # frontmatter(name, description) + 手順
scripts/ # 実行スクリプト(オプション)
references/ # 参照ドキュメント(オプション)
# frontmatterの例
---
name: pptx
description: "スライド・deck・presentationという言葉が出たら使う"
---
# トリガーの仕組み
if user_message contains trigger_keywords(skill.description):
load(skill.SKILL.md)
follow_instructions()
else:
pass # スキルは読み込まれない
# 種別と制御
pre_built_skills = [pptx, docx, xlsx, pdf, frontend-design, product-self-knowledge]
→ システムプロンプトに組み込み済み
→ ユーザーは無効化不可
→ 回避手段: 出力形式を明示("SVGで作って"など)
custom_skills = [ユーザーがアップロードしたもの]
→ Settings > Capabilities で管理
→ toggle ON/OFF 可能
→ 追加: ZIPでアップロード
→ 削除: Settings > Capabilities から削除
partner_skills = [Notion, Figma, Atlassian, Canva ...]
→ Skills Directoryから追加
→ toggle ON/OFF 可能Code language: PHP (php)
1.1. 衝突はなぜ起きるのか
pptxスキルの発火条件はかなり広く設定されています。
「.pptxファイルを扱うとき」だけでなく、「deck」「slides」「presentation」といった言葉が出た時点で、PowerPoint前提のワークフローが動き始めます。
つまり、「SVGで作ってください」と言っても、その文に「スライド」が含まれているだけで、pptxスキルが動き出します。
SVGでは1枚の画像として完結させたかったのですが、pptxスキルは仕上げる前提で動く。
同じ「スライド作成」という言葉の中で、二つのやり方がぶつかっているわけです。
回避するには、トリガーワードごと避けるのが確実です。
「スライド」「プレゼン」「デッキ」を使わず、「1枚のSVG図」「SVGパネル」と言い換えると、pptxスキルが発火しません。
あるいは、出力形式を仕様として最初に固定してしまう方法も使えます。
2. 今どんなスキルがあるのか
現在Claudeには6つのプリセットスキル(pre-built Agent Skills)が組み込まれています。
pptx
docx
xlsx
pdf
frontend-design
product-self-knowledge
PowerPoint・Word・Excel・PDFの4つはファイル生成スキルで、それぞれ対応する言葉がトリガーになります。
フロントエンドデザインスキルはウェブページやUIを作るとき、製品情報スキルはClaudeやAnthropicについて聞かれたときに動きます。
これらのプリセットはオフにできません。
ユーザーが後から追加したカスタムスキル(Custom Skills)は設定画面のCapabilitiesから追加・管理できますが、プリセットの6つは常に有効です。
3. なぜこうなったのか
スキルが生まれた背景には、Claudeの「失敗の歴史」があるのかもしません。
Claudeが登場した当初、「料金はいくら?」「どのプランがある?」と聞くと、自信満々に間違った情報を答えてしまうことがありました。
AIが知らないことをもっともらしく答えてしまう現象で、「ハルシネーション」と呼ばれます。
この対策は、正しい情報をあらかじめClaudeに渡しておくこと。
会話が始まる前にClaudeへ渡す「システムプロンプト」という隠れた指示書に、製品の説明を直接書き込んだのです。
また、Artifactsでウェブサイト生成ができるようになると、基本的なウェブサイト作成の方針としてReactを使うなどといった手順も、同じようにシステムプロンプトへ書き加えられていきました。
3.1. 増えたシステムプロンプトを分離する
問題は、こうした指示が増えるにつれてシステムプロンプトがどんどん膨らんでいったことです。
AIが一度に扱える情報量には限りがあり、指示書が長くなるほど、ユーザーとの会話に使えるスペースが狭くなります。
2025年9月、Anthropicはコードを実行できる環境を導入しました。
これをきっかけに、システムプロンプトに直書きしていた指示をスキルファイルとして外に切り出すことが可能になります。
必要なときだけ読み込む仕組みにすれば、普段は場所を取らずに済む。
同年10月に公式発表されましたが、このとき表に出てきたのは「ユーザーが自分でスキルを作れる」という新機能でした。
フロントエンドデザインや製品情報のスキルはアナウンスなしで組み込まれています。
もともとシステムプロンプトに書かれていたものが、形を変えて整理されただけだからでしょう。
4. プロンプトより「入口」が効くことがある
これまでは「プロンプトを工夫する」ことがClaudeの制御の中心でした。
スキルが導入されたことで、プロンプトのキーワードが「どのスキルが動くか」を決める要素になっています。
「なんか言ったとおりに動かない」と感じたとき、モデルの問題ではなくスキルの発火を疑うと、対処が見えてくることがあります。
入口が変わると、同じ目的でもルートが変わるのです。